これまで、熱帯域における大気海洋結合変動現象※1 が中緯度域を含めた両半球の世界各地に遠隔影響をもたらすことはよく知られていた一方で、中緯度域から低緯度域へ向けた「逆向き」の遠隔影響については十分に理解されていませんでした。
北海道大学と海洋研究開発機構の研究グループは、日本近海の中緯度に位置する黒潮続流※2 域の高い海面水温が、北太平洋亜熱帯域における貿易風に対して低緯度向きの遠隔影響を与えることを明らかにしました。
本研究では、大気大循環モデル※3 による数値実験及び長期間の大気再解析データ※4 を用いた気候診断により、黒潮続流域における海面水温の上昇が低緯度域の貿易風を弱め、それにより亜熱帯域の海面水温が上昇することを示しました。このような「逆向き」の遠隔影響は、さらに、亜熱帯域から熱帯域にかけての大気と海洋の相互作用を促す可能性を示します。
本成果は、エルニーニョ現象やラニーニャ現象※5 に伴う気候変動のように、従来注目されてきた低緯度域からの中緯度域への遠隔影響に加え、中緯度域から低緯度域へ向けた遠隔影響もまた、全球規模の気候形成と変動に重要な役割を担うことを示唆するものです。日本が位置する中緯度域の気候と低緯度域の気候との関係性に新たな視点を与える本研究は、今後の気候変動の影響評価や予測理解の向上に資することが期待されます。
本研究成果は、2026年2月13日(金)公開の Geophysical Research Letters 誌に掲載されました。
図: 黒潮続流域の海面水温変動から貿易風への影響は、亜熱帯域から熱帯域にかけての大気と海洋の相互作用を促す
大気海洋結合変動現象
海面水温の変化とそれに伴う大気循環の変化が相互に影響し合いながら時間的・空間的に発達する気候変動現象のこと。数ヶ月から10年規模の時間スケールで生じる熱帯の海洋変動が、大気の応答を通じて、熱帯に限らず全球規模の天候や気候に影響を及ぼすことが知られている。代表例として、熱帯太平洋で発生するエルニーニョ現象やラニーニャ現象が挙げられる。
黒潮続流
日本の南岸を北上する黒潮が離岸し、東向きに流れる強い海流。
大気大循環モデル
地球全体の大気の流れや気温、気圧などの変化を、物理法則に基づいて計算する数値プログラム。地球を格子状に分割し、それぞれの領域での大気の運動や熱のやり取りを計算する。大気大循環モデルでは海洋の変化は計算せず、海⾯⽔温や海氷の状態を特定の条件として与えることで大気の応答を調べている。
大気再解析データ
気温や気圧、風などの観測データを、物理法則に基づく数値モデルと組み合わせて解析することで作成された過去66年間にわたる大気状態の変動を表すデータ。
エルニーニョ現象やラニーニャ現象
エルニーニョ現象(ラニーニャ現象)は、太平洋⾚道域の中部から南⽶沿岸にかけて、海⾯⽔温が平年よりも⾼い(低い)状態が数か⽉以上続く現象。これらは熱帯域だけでなく、中緯度を含む世界各地の気候に遠隔影響を及ぼすことが知られている。
詳細は 北海道大学のサイトをご覧ください。