群馬大学大学院食健康科学研究科・大学院理工学府・食健康科学教育研究センター(GUCFW)と海洋研究開発機構(JAMSTEC)の研究グループは、水産加工で生じるカニ殻副産物を活用することで、海洋生分解性プラスチックであるポリ(3-ヒドロキシブタン酸ーcoー3-ヒドロキシ吉草酸)(PHBV)の海水中での分解速度を調節できることを明らかにしました。
海洋プラスチックごみ問題は世界的な課題であり、その対策の一つとして、海洋環境中で微生物により分解される海洋生分解性プラスチックが注目されています。一方で、材料によっては、海中で十分に分解しないものもあれば、逆に分解が速すぎるため、使用中に必要な耐久性を維持できない場合もあります。したがって、海洋生分解性プラスチックには、「単に分解すること」だけでなく、「必要な期間は性能を保ち、その後に適切に分解すること」が求められます。
今回、研究グループは、海洋で生分解しやすいポリヒドロキシアルカン酸系材料の一種であるPHBVに着目しました。そして、水産加工副産物として大量に生じるカニ殻が、海洋中でPHBV表面に形成される微生物群集(プラスティスフィア)に影響を与え、結果として分解速度を調節できるのではないかと考え、検証を行いました。カニ殻はキチン、タンパク質、無機物から構成される身近なバイオマス資源で、高い海洋生分解性を示すことが知られています。本研究では、PHBVフィルムを海水タンク内に設置し、カニ殻と直接接触させた条件と、同じタンク内に置きながら直接は触れさせない条件とで比較しました。その結果、いずれの条件においても、カニ殻がない場合と比較すると、PHBVの分解は明らかに抑制されることが分かりました。
本成果は、水産副産物を再利用しながら、海洋生分解性プラスチックの「分解しやすさ」を高めるのではなく、用途に応じて寿命を調節する新しいコンセプトを提示するものです。
本研究の成果は、2026年3月24日に国際学術誌Polymer Degradation and Stability (エルゼビア社) にオンライン掲載されました。
詳細は群馬大学のサイトをご覧ください。