北極海は近年の温暖化によって海氷後退が進行しています。海氷の減少は太平洋側から北極海への海水の流入を強めるため、それに伴って北極海の外から多くの生物が流入していることが明らかになっています。これまで、こうした外から流入した生物が北極海の生物多様性に影響を及ぼし始めていることは示されてきましたが、物質循環への影響は明らかになっていませんでした。
東京大学大気海洋研究所の塩崎拓平准教授、海洋研究開発機構 地球環境研究部門 藤原周副主任研究員・渡邉英嗣主任研究員、生命地球科学研究部門 眞壁明子准研究副主任らによる研究グループは、海洋地球研究船「みらい」による北極海観測を通じて、海氷融解に伴い、ベーリング海から北極海海盆域(図1の黒線以北)まで窒素固定生物UCYN-A2が流入していることを明らかにしました。さらに、このUCYN-A2が北極海海盆域で活発に窒素固定を行うことにより、窒素循環だけでなくリン循環にも影響を及ぼしていることを明らかにしました。
近年、北極海では海氷融解の進行が加速するとともに、その時期も早まっています。加えて、海盆域では表層の貧栄養化も進行しています。このため、北極海の外から流入する窒素固定生物が、今後、北極海の物質循環に及ぼす影響はさらに大きくなると予想されます。
図1 窒素固定生物の流入と海氷融解による物質循環への影響
(窒素固定生物がベーリング海から運ばれ、海氷融解が早い年は北極海海盆域(黒線以北)に到達し、その窒素固定によって物質循環に影響を及ぼす)
本研究成果は、国際学術誌「Global Change Biology」誌に、令和8年5月15日に掲載されました。
詳細は東京大学のサイトをご覧ください。