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リュウグウ粒子は地球帰還後わずか数週間で顕著な変質が生じる ―宇宙から持ち帰った試料が地球環境で急速に変化することを解明―

2026.06.12
広島大学
京都大学
海洋研究開発機構
自然科学研究機構
大阪公立大学
国立極地研究所

広島大学、京都大学、海洋研究開発機構高知コア研究所、分子科学研究所、大阪公立大学、国立極地研究所の共同研究グループは、探査機「はやぶさ2」が小惑星リュウグウ※1 から持ち帰った粒子について、大気曝露実験を行ないました。さらに実験後の試料に対して、超薄膜加工・電子顕微鏡観察・放射光X線分光分析※2 を行い、地球帰還後、数週間のうちに変質が始まり、数か月のうちに周囲の鉱物や有機物へ影響が広がることを明らかにしました。

本研究では、リュウグウ粒子中の磁硫鉄鉱※3 が最初に酸化し、鉄・酸素に富むアモルファス※4 変質層を形成するとともに、その反応が周囲のフィロケイ酸塩※5 や有機物の変質を引き起こすことを示しました。さらに、磁硫鉄鉱の初期変質速度を約0.1 nm/日と見積もり、室温付近・低湿度条件でも変質が進み得ることを示す定量的な指標を提示しました。

本成果は、リュウグウやベンヌ※6 などの小惑星試料だけでなく、将来の火星の衛星フォボス※7 や火星からの帰還試料の保存戦略にも重要な示唆を与えるものです。今後は、より多くのリュウグウ粒子を対象に同様の解析を進め、鉱物の種類や粒子の細かなつくりの違いによって、変質の進み方がどのように変わるのかを明らかにしていきます。さらに、本研究で得られた知見を生かし、今後予定されているベンヌ、フォボス、火星などからの帰還試料について、より適切な保管・輸送・分析方法の確立に役立てたいと考えています。

用語解説
※1

リュウグウ
JAXAの探査機「はやぶさ2」が探査し、2020年に試料を地球へ持ち帰った炭素質小惑星。直径約900mの「がれきの山(ラブルパイル)」型天体と考えられている。

※2

放射光X線吸収分光法
元素の酸化状態や化学結合状態を調べることができる手法。

※3

磁硫鉄鉱(pyrrhotite)
鉄と硫黄からなる硫化鉱物。水との反応性が高く、地球大気中で酸化しやすい。

※4

アモルファス物質
原子の配列に規則性がない物質。

※5

フィロケイ酸塩
層状の結晶構造をもつケイ酸塩鉱物。小惑星や隕石での水の働きを調べる手がかりになる。

※6

ベンヌ(ベヌー)
NASAの探査機 OSIRIS-REx が試料を持ち帰った炭素質小惑星。水を含む鉱物や有機物を含み、初期太陽系の物質進化を調べるうえで重要な天体。

※7

フォボス
火星のまわりを回っている小さな衛星のひとつ。火星には「フォボス」と「ダイモス」という2つの衛星が存在する。

図1

図1. 大気曝露前後の磁硫鉄鉱の電子顕微鏡写真
赤い矢印は、磁硫鉄鉱の酸化によってできた鉄と酸素に富む変質物を示す。

図2

図2. 集束イオンビーム加工装置(FIB)
数百ナノメートルから数ナノメートルに絞ったガリウムイオンビームを試料表面に照射してはじき飛ばすことで、試料の極微細加工ができる装置。高知コア研究所が所有しており、透過電子顕微鏡観察および放射光X線分光分析用の超薄膜(厚さ約0.1マイクロメートル)の加工に用いた。

この研究成果は、「Nature Communications」に2026年5月29日に掲載されました。

詳細は広島大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
企画部門 事業推進部 報道室