北海道大学大学院理学研究院の川﨑教行准教授、同大学総合イノベーション創発機構の坂本直哉准教授、京都大学白眉センターの松本徹特定助教、海洋研究開発機構の荒川創太研究員らの研究グループは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の小惑星探査機「OSIRIS-REx」が小惑星ベヌーから採取した試料中から、太陽系最初期に形成された岩石状物質である難揮発性包有物※1を複数発見しました。
小惑星ベヌーは、宇宙航空研究開発機構の小惑星探査機「はやぶさ2」が試料を持ち帰った小惑星リュウグウと同じく、水を含む鉱物や有機物に富む炭素質の小惑星です。これらの小惑星は、水や有機物の起源、さらには惑星が形成された過程を理解するうえで重要な研究対象です。しかし、ベヌーを形成した最初期の固体物質(ベヌーのもとになった材料)がどのようなものであったのか、またそれがリュウグウの材料とどの程度似ているのかは不明でした。
本研究では、ベヌー試料から、初期太陽系の高温領域で形成された難揮発性包有物を複数発見し、その特徴を詳しく調べました。さらに、そのうち一つについて、北海道大学の同位体顕微鏡(二次イオン質量分析計)を用いた Al–Mg 放射年代測定法※2により年代測定を行い、太陽系誕生直後の約45億6,730万年前に形成された物質であることを明らかにしました(図1)。
今回発見されたベヌーの難揮発性包有物はいずれも小さく、小惑星リュウグウから見つかっているものとよく似ていました。一方で、多くの炭素質隕石に見られるような大型の難揮発性包有物は、ベヌーからはこれまで見つかっていません。このような大きさの違いは、初期太陽系における固体物質の輸送や選別過程を反映していると考えられます(図2)。
本研究の成果は、ベヌーとリュウグウが、太陽系遠方で似た材料からできた可能性を示すものです。別々の探査機によって持ち帰られた二つの小惑星試料に共通する特徴が見つかったことで、太陽系初期の物質輸送や天体形成過程の理解がさらに進むことが期待されます。
難揮発性包有物
初期太陽系の高温領域で形成された岩石状物質。カルシウムやアルミニウムに富む鉱物からなる CAI(カルシウム・アルミニウムに富む包有物)や、高温で形成されたかんらん石などからなる AOA(アメーバ状かんらん石集合体)などがある。
Al–Mg放射年代測定法
放射性同位体 Al-26 が半減期約70万年で Mg-26 に壊変することを利用した年代測定法。太陽系最初期に形成された物質の年代を精密に調べることができる。
図1 小惑星ベヌーから見つかった難揮発性包有物の例
見つかった難揮発性包有物のうち一つ(左)は、太陽系誕生直後の約45億6,730万年前に形成されたことが判明。データはMg(赤)―Ca(緑)―Al(青)の合成X線元素マップ。スケールバーは0.01ミリメートル。
図2 ベヌーとリュウグウの母天体の集積領域を示す模式図
大型の難揮発性包有物は、ガス円盤内を移動中に原始木星付近の圧力バンプ※3にせき止められた可能性がある。一方で、小型の難揮発性包有物は円盤内に広く分布し、その一部がベヌーやリュウグウの母天体に取り込まれたと考えられる。この特徴は、二つの小惑星が太陽系遠方で似た材料からできたことを示唆する。CC は炭素質コンドライト(炭素質隕石)、OC は普通コンドライト、イヴナ型はイヴナ型炭素質隕石※4を示す。
圧力バンプ
初期太陽系のガス円盤内で、ガスの圧力が局所的に高くなる領域のこと。固体物質の移動を妨げ、特定の場所に集まりやすくする働きがある。巨大惑星の形成によって生じる場合がある。
イヴナ型炭素質隕石
炭素質隕石の一種で、CIコンドライトとも呼ばれる。水を含む鉱物や有機物に富み、化学組成が太陽の組成に近いことから、太陽系を作った平均的な材料をよく反映する隕石と考えられている。
この研究成果は、2026年7月18日公開の「Nature Communications」誌にオンライン掲載されました。
詳細は北海道大学のサイトをご覧ください。