私たちの体の中では、DNAが持つ情報は一度mRNAという物質に写し取られ(転写)、それをもとにタンパク質が合成されています。役目を終えたmRNAは分解され、必要以上のタンパク質が作られないよう精巧に量が調節されています。こうした仕組みを人工的に再現・制御する研究では、これまで合成する働き(アクセル)の制御に焦点が当てられていました。しかし、不要になったmRNAを積極的に分解する仕組み(ブレーキ)が組み込まれておらず、タンパク質が作られ続けてしまうという課題がありました。
東北大学 大学院工学研究科の岩田 大地大学院生、野村 M. 慎一郎准教授、名古屋大学、海洋研究開発機構 生命地球科学研究部門 小宮 健副主任研究員らの共同研究により、光照射によって構造が変化する分子、アゾベンゼンを修飾したDNAとRNA切断酵素RNase Hを組み合わせ、mRNAを作る働きと切断する働きの両方を光で同時に制御する機構を開発しました。本システムは、2種類の光を使い分けることで、これまで困難だったmRNAの合成(アクセル)と切断(ブレーキ)の両方を制御することが可能です。この機構は細胞の脂質二重膜を再現した人工細胞の中でも機能することが確認されました。本成果は、9月17日付で学術専門誌「ChemSystemsChem」に掲載されました。
DOI:10.1002/syst.70057
本成果は、「必要な時に、必要な場所で、必要な量だけ」薬効成分などを合成する分子ロボットの創出につながり、副作用を抑えたピンポイント治療など、未来の基礎医学への応用が期待されます。
図1. 光に応答してmRNA濃度を制御する人工細胞
(a)作製した光応答性DNA。青色光照射後はアゾベンゼンがtrans体に変化し、DNAの塩基間に挿入されることで安定したヘアピン構造を形成する。紫外線照射後はアゾベンゼンが折れ曲がった構造のcis体に変化し、ヘアピン構造が不安定化し一本鎖の状態が増える。
(b)人工細胞内部でのmRNA濃度の制御手法。青色光照射後は転写反応が進みmRNA量が増加する。一方、紫外線照射後の一本鎖状態の光応答性DNAはT7 RNA polymeraseによる転写反応を阻害すると同時に、mRNAと結合し、RNase HによるRNAの切断を誘導するためRNA量が減少する。
(c)青色光と紫外線を交互に照射した場合のmRNA濃度の可逆的な変化。mRNA量は青色光照射後に増加、その後の紫外線照射後に減少し、再度の青色光照射で再び増加した。
詳細は東北大学のサイトをご覧ください。
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