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南極のレーダー観測が南半球の中緯度地域の気象予報に貢献 〜南半球に大雨や大雪をもたらす「大気の川」の再現・予報精度の向上に新たな可能性〜

2026.10.26
大学共同利用機関法人情報・システム研究機構 国立極地研究所
国立研究開発法人 海洋研究開発機構

国立極地研究所 佐藤 和敏助教、海洋研究開発機構 アプリケーションラボ 山崎 哲研究員らの研究グループは、南極地域観測事業(注1)において南極昭和基地に設置されている大型大気レーダー(PANSYレーダー:注2)で観測した風の観測データが、南半球の大気循環や「大気の川」の再現性と予報精度に与える影響を調査しました。その結果、PANSYレーダーによる1時間ごとの風の観測データを、地球シミュレータに構築された大気データ同化・数値予報システムに取り込むことで、南極大陸や南大洋の大気状態の再現性に違いが生じ、その観測の影響が予報期間中に増幅しながら南半球の中緯度地域にまで広がることが明らかになりました。さらに、南半球の中緯度に大雨や大雪をもたらすことがある「大気の川」に伴う水蒸気輸送の再現や予報にも影響し、一部の事例では予報精度が改善することが確認されました。

これまでの研究では、PANSYレーダーの観測データを取り込むことで、南半球の中緯度に位置するオーストラリア西部に接近する夏季の低気圧の予報精度が改善することが示されていました。今回の研究では、通常より高頻度の高層気象観測が実施された条件下でも、南半球の冬季に発生した複数の大気の川に対して、PANSYレーダーの高頻度観測が有効であることを示しました。本研究は、南極における継続的な気象観測が、南極周辺だけでなく、南半球の広い地域の天気予報の精度向上にも貢献する可能性を示しています。

今後は、PANSYレーダーの観測データを実際の天気予報システムに取り込むための手法を検討するとともに、より多くの気象現象や季節を対象として、その効果を検証することが重要です。また、南極域の観測データを再解析システムに取り込むことで、南極氷床の表面質量収支や南極周辺の大気循環の再現性が改善され、南極の気候変動をより正確に理解することにもつながると期待されます。

この成果は、2026年7月11日付の国際科学誌 「Scientific Reports 」のオンライン版に掲載されました。
DOI:10.1038/s41598-026-61250-x

用語解説
注1:

南極地域観測事業
南極地域観測統合推進本部(本部⻑:文部科学大臣)の下、実施中核機関である国立極地研究所を中心に、関係省庁の連携・協力により国家事業として実施(昭和30年閣議決定)。南極地域観測計画に基づき、地球温暖化などの地球環境変動の解明に向け、各分野における地球の諸現象に関する研究・観測を推進。

注2:

南極昭和基地大型大気レーダー(PANSYレーダー)
南極昭和基地に設置されている、1045本のアンテナからなる南極最大の大気レーダーです。上空に電波を送信し、大気中で散乱されて戻ってくる微弱な電波を解析することで、上空の風や電離圏の電子密度などを観測します。高度方向に150 m、時間方向に1分という高い分解能で観測できることが特徴で、上空の大気の変化を詳細に捉えることができます。一方、PANSYレーダーで取得された風の観測データは、現在の現業天気予報には利用されていません。

図1

図1:本研究の概要図

詳細は国立極地研究所のサイトをご覧ください。

お問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
事業推進部 報道室