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2011年東北地方太平洋沖地震後のプレート間固着の回復過程を解明 ~プレート境界におけるエネルギー蓄積の再開を示唆~

2026.11.06
国立大学法人東北大学
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国立大学法人東京大学地震研究所

2011年東北地方太平洋沖地震(M9.0)のような超巨大地震の後、プレート境界断層がどのように、またどのくらいの期間を経て再び固着し、次の地震に向けたひずみを蓄積し始めるのかは、極めて重要な課題です。

東北大学災害科学国際研究所、同大学院理学研究科、海洋研究開発機構(JAMSTEC)、東京大学地震研究所、ヴィクトリア大学、カナダ地質調査所、東北大学・海洋研究開発機構変動海洋エコシステム高等研究所(WPI-AIMEC)の国際共同研究チームは、14年間にわたる長期・高密度な海底地殻変動観測で得られたデータ、および陸上の地殻変動観測、繰り返し地震活動の観測結果を数値モデルで分析することにより、2011年東北地方太平洋沖地震後の日本海溝沿いのプレート境界の挙動を詳細に解明しました。

研究チームは、地震発生後に続いていたプレート境界でのゆっくりすべり(余効すべり※1)は、地震後約10年でほぼ終息し、プレート境界の固着※2 が地震前の状態まで回復したことを明らかにしました。これらの結果は、プレート境界周囲のマントル内部では応力緩和(粘弾性緩和※3)が依然として続く一方で、プレート境界断層ではすでに、次の地震に向けたエネルギー蓄積が再開していることを意味しています。

粘弾性体である地球の性質上、次の地震に必要な歪みエネルギーの大部分は地震後の早期を含む地震発生サイクルの前半に効率よく蓄積されることが、先行研究の数値シミュレーションから示唆されていました。本研究が示した「急速な再固着」は、プレート境界が超巨大地震後早期にエネルギー蓄積能力を取り戻すことを実証しています。日本海溝における超巨大地震の平均再来間隔は約500〜900年とされていますが、他地域の沈み込み帯(例:カムチャツカ)で見られるように、通常のサイクルより短い間隔で大地震が再来する可能性も否定できません。今後も高精度な海底地殻変動観測を継続し、プレート境界の固着状態の推移を監視し続けることが、将来の地震・津波防災ハザード評価の精度向上において不可欠です。

用語解説
※1

余効すべり
大地震の発生後、本震で破壊された領域の周辺が、ゆっくりとすべり続ける現象のこと。本震のような破壊的な地震波(強い揺れ)や津波を出さずに進行するが、地表や海底の観測機器ではゆっくりとした地殻変動として捉えられる。この余効すべりが発生している領域は、固着とは逆に、大地震発生前に蓄積された歪みを解放している状態にある。

※2

固着
海側のプレートが陸側のプレートの下へ沈み込む際、境界部分が強い摩擦力によってぴったりと密着し、陸側のプレートを引きずり込みながらひずみを蓄積する状態を指す。固着が強い領域では長期間にわたって大きなひずみが蓄積され、将来的に再び巨大地震を引き起こすと考えられている。大地震の直後は摩擦熱や破壊によって固着が一時的に失われるが、時間の経過とともに再び固着力が高まっていく(再固着)。

※3

粘弾性緩和
地震によって地下深くのマントルなどの粘弾性媒質に急激な力がかかったあと、その力を逃がすように岩石が非常に長い時間をかけてゆっくりと変形する現象のこと。粘弾性緩和によって、大地震発生後の長期にわたって広域の地殻変動がもたらされる。

図1

図1. 本研究には、研究チームが実施してきた海底地殻変動観測(GNSS-A観測)による観測データが活用されている。(a)GNSS-A観測による観測方式の概念図、(b) GNSS-A観測に用いたJAMSTECのウェーブグライダーの写真、(c)東北沖のGNSS-A観測点に設置した音響測距装置(海底局)の写真をそれぞれ示す。

図2

図2. 2011年東北地方太平洋沖地震後の陸上・海底地殻変動観測点における水平方向の地表面変位速度を4つの期間に分けてベクトルで示した。緑色のベクトルは観測値、青色のベクトルは本研究のモデルによって再現された変動を示す。背景色は2011年東北地方太平洋沖地震時すべり分布、黄色星は2011年東北地方太平洋沖地震の震央を示す。福島県から茨城県にかけての沖合の観測点では、地震直後から2021年までは変位速度が東南東~南東向きだったのが2021年以降からは西北西~北西方向に変わっており、余効すべりが止まって固着が回復したことが表れている。

本研究成果は2026年11月5日、国際学術誌 Science に掲載されました。

詳細は東北大学のサイトをご覧ください。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
企画部門 事業推進部 報道室