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大河内直彦部門長が日本学士院エジンバラ公賞を受賞

2022年 3月 15日

大河内直彦部門長(海洋機能利用部門)が2022年3月14日開催の日本学士院第1157回総会において、日本学士院エジンバラ公賞を受賞いたしました。

この賞は日本学士院名誉会員エジンバラ公フィリップ殿下からの申し出により創設され、広く自然保護及び種の保全の基礎となるすぐれた学術的成果を挙げた者に対して授与されるものです。


大河内直彦 海洋機能利用部門部門長

【研究題目】
分子レベルの高度同位体比分析法を駆使した生物界変動解析法の構築と応用

大河内部門長は、多様な化合物の集合体である天然物からテトラピロール※1やアミノ酸など特定の化合物を単離し、それらの分子レベルの炭素・窒素同位体自然存在比※2を精密に測定する分析技術を大きく発展させました。そして、この高度同位体比分析法を地球科学・環境科学・生態学・水産学・人類学など様々な分野の研究者と共同して展開・応用し、環境解析において顕著な成果を挙げました。具体的には、海洋中を漂う細粒粒子※3の動態が気候変動に大きく影響を受けること、石油根源岩※4がシアノバクテリア※5の遺骸を主な起源としていること、琵琶湖における20世紀の富栄養化が湖に生息する魚類の栄養段階にほとんど影響を及ぼさなかったこと、ウナギの稚魚がマリンスノー※6を食べていたことなどを明らかにしました。大河内部門長が発展させた解析法は、環境中の生物界の変動の解析において非常に重要な手段となっています。

※1テトラピロール:
五員環構造をもつピロール環が4分子集合した化合物群のこと。クロロフィルの中心環やヘムなどがこれに含まれる。
※2炭素・窒素同位体自然存在比:
自然界には、質量数13の炭素(13C)および質量数15の窒素(15N)が通常の原子(それぞれ質量数12のものと14のもの)に混じってごくわずか含まれており、それらの存在比、つまり13C/12C比と15N/14N比のこと。
※3細粒粒子:
主として64マイクロメートル以下のサイズをもつ粒子のこと。
※4石油根源岩:
石油の元となった堆積岩のこと。そのほとんどは、有機物を多く含み、黒色を呈する頁岩(けつがん。薄く層状に剥がれやすい性質をもつ)である。
※5シアノバクテリア:
酸素発生をともなう光合成を行う細菌(原核生物)の一群のこと。かつて「藍藻」とも呼ばれた。
※6マリンスノー:
海水中を沈んでいく生き物の遺骸など、主として有機物からなる粒子のこと。

多様な化合物の集合体である天然物から特定の化合物を取り出してその同位体比を正確に測定し、同位体比を変動させる要因を理解するとともに各分野に応用して自然界で起きた事象を読み解く。