海洋機能利用部門の大河内 直彦 部門長が第17回海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)を受賞しました。
本表彰は、科学技術、水産、海事、環境など海洋に関する幅広い分野における普及啓発、学術・研究、産業振興等において顕著な功績を挙げた個人・団体を表彰し、その功績をたたえ広く紹介することにより、国民の海洋に関する理解・関心を醸成することを目的としています。
受賞者:大河内直彦 部門長(海洋機能利用部門)
功績の概要:有機分子同位体を用いた海洋の新規研究法の確立
功績事項:
海洋に分布する多様な有機分子の同位体組成を正確に測定する独自の分析法を開発し、それを応用することにより、海洋のマクロなプロセスを正確に読み解く新しい方法論を編み出し、数々の先駆的成果を挙げた。
1.これまで難しかった海洋に分布する多様な有機分子の炭素・窒素同位体比測定を可能とする新規技術を確立。海洋生態系の解読に関しては、アミノ酸窒素同位体比による生物の栄養段階の決定を応用した食物連鎖の構造解析手法により、水産学や養殖技術開発、産地判別法に及ぶ幅広い分野に貢献している。
2.この手法を応用して、ウナギの稚魚の餌をマリンスノーと特定し、またサケがベーリング海東部の大陸棚で成長・性成熟してから日本に戻るという回遊経路をもつことなどを明らかにした。最近では、眼球を用いることにより、本研究で開発した解析手法と同位体比地図が、あらゆる海洋生物の回遊・移動経路推定に広く応用できることを明らかにした。
3.同氏が開発した分析・解析手法は現在、海洋関係の分野のみならず、地質学、生態学、人類学など幅広い分野で用いられ、学際的な成果が数多く生み出されている。
これまでの研究成果はScience 誌やNature 姉妹誌を含め、専門誌に280 本を超える論文として発表され、2022 年には日本学士院エジンバラ公賞を受賞。その研究業績は国内外で高く評価されている。
4.所属する海洋研究開発機構においては、プログラム・ディレクター、分野長、部門長などの要職を務め、20 年以上にわたり我が国の海洋科学研究の発展と研究者の育成に尽力。
また、気候変動および人類のエネルギー利用に関する一般向けの書籍を執筆するなど、科学研究分野の国民理解、社会との対話についても精力的に取り組んでいる。
5.このように同氏は、海洋生態系の解明や地球環境の変動といった社会的な課題解決の鍵となる画期的な方法論を確立したパイオニアの一人であり、その独自の研究・解析手法は、多様な学術分野に横串を通し新たな展開を引き起こしている。
第17回海洋立国推進功労者内閣総理大臣賞表彰について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2024/1420210_00007.htm