地球環境部門 海洋観測研究センターの安田 一郎 特任上席研究員が、第18回海洋立国推進功労者表彰(内閣総理大臣賞)を受賞しました。
本表彰は、科学技術、水産、海事、環境など海洋に関する幅広い分野における普及啓発、学術・研究、産業振興等において顕著な功績を挙げた個人・団体を表彰し、その功績をたたえ広く紹介することにより、国民の海洋に関する理解・関心を醸成することを目的としています。
受賞者:
安田 一郎 特任上席研究員(地球環境部門)
功績の概要:
海洋乱流鉛直混合と海洋・生態系変動の実態解明に貢献
功績事項:
黒潮大蛇行・海洋中規模渦合体現象の理解、津軽暖流短期変動現象とマサバ漁場形成・予測技術の開発、サンマ漁場形成経年変動・予測、マイワシ漁獲量・資源長期変動と海洋気候変動の関係解明、北太平洋中層水の形成・変質・循環に関する観測・理論的解明、海洋・気候における長期変動と潮汐18.6 年周期変動の関係、海洋乱流の簡便な観測による定量化手法の開発と広域観測による乱流物質鉛直輸送と生態系への栄養物質供給過程の理解への貢献等、海洋生態系や気候に関わる未解明だった海洋諸現象の実態と変動の解明を、物理・化学・生物・水産を横断した海洋学際研究によって推進した。
1. マイワシ資源の長期変動やサンマの漁場形成長期変動と海洋・気候変動に関係があること、および、北太平洋中層水がオホーツク海起源であり亜熱帯循環に流入するなどの知見から、「潮汐18.6 年周期変動に伴う海洋鉛直混合が海洋中層循環を通じて物質循環・気候・海洋生態系の維持と変動に影響する」という独自の仮説を元に、千島列島海峡部・オホーツク海・ベーリング海においてロシア等との共同観測航海を実施し、海峡部での乱流鉛直混合が外洋に比較して数桁大きく、鉄や栄養塩等物質の鉛直輸送を通じて北西太平洋で活発な海洋生態系の維持に貢献していることを明らかにした。月の公転軌道変化に伴う潮汐混合の18.6 年周期変動とその3 倍および1.5 倍周期が符号変化を同期させて、マイワシ変動にも関係する太平洋10 年規模変動に影響する可能性を示した。
2. 領域代表として率いた科研費新学術領域「海洋混合学の創設:物質循環・気候・生態系の維持と長周期変動の解明」において、海洋観測の標準プラットフォームであるCTD フレームに高速水温計を取り付けて簡便に乱流鉛直混合を定量化する手法を開発した。この手法を用いて、北太平洋全域にわたる海面から深海・海底に至る乱流鉛直混合分布を明らかにし、乱流鉛直混合の観測を通じた海洋循環・物質循環の実態解明に道を拓いた。候補者は、海洋混合を通じて物理・化学・生物・気候・水産分野を融合し、気候・海洋・水産資源の長期変動の理解と予測に道を拓くなど、分野横断型海洋学を実践した。
第18回海洋立国推進功労者内閣総理大臣賞表彰について
https://www.mext.go.jp/b_menu/houdou/2025/1420210_00001.htm