深尾良夫 特任上席研究員が、2026年度日本地震学会賞を受賞しました。
日本地震学会賞は、地震学の発展において世界的に大きな影響を与えた研究業績をあげた者のうち、原則として日本地震学会が主催・共催する近年の学術集会等での発表によって、その業績を明らかにしている個人に贈られます。
授賞式は2026年度秋季大会の場において行われる予定です。
受賞者:深尾良夫 特任上席研究員(元・地球内部ダイナミクス領域長)
授賞対象業績名:
地球内部ダイナミクスに関する地震学的研究
授賞理由:(日本地震学会ホームページより)
深尾良夫氏は地震学的手法を用いた地球内部に関する研究を牽引し、特に全マントルトモグラフィーに基づくマントルダイナミクスの解明、地球の常時自由振動現象の発見と解明など、地球科学の幅広い分野での先駆的な研究を行った。それらの成果は国内外から広く認められている。
以下に、その功績を具体的に述べる。深尾氏は、独自に開発したトモグラフィー手法を用いて全世界の地震波初動到逹時刻データを地球内部に逆投影することで、全マントルの3次元P波速度構造を推定し、海溝に沈み込んだ海洋プレートが上部・下部マントル境界付近に滞留するスタグナントスラブの概念を初めて提唱した。さらに深尾氏は、この概念を進展させるため、地球物理観測・超高圧地球科学・計算機科学からなる新たな研究領域を組織した。これらの成果によって、プレートの温度・圧力による鉱物の安定性や、スラブの滞留・崩落に関する力学的メカニズムの理解が飛躍的に進展するとともに、地球内部への水輸送過程など固体地球ダイナミクスに関する重要な多くの知見がもたらされた。
また深尾氏は、木星や太陽表面の振動・波動現象の励起機構が地球大気や固体地球でも同様に存在し得ることを理論的に示唆することで、広帯域地震計の20年以上に及ぶ記録の解析から、地球全体が微弱ながらも長周期帯域で連続的に振動している「常時自由振動」の発見につなげた。その振動は大気と共鳴し易い周波数で顕著に増幅するとともに季節変動を示し、海洋波浪が励起する海洋重力波とも相互作用していることが、海底を含むグローバルな地震観測網から明らかとなった。これらの成果は、地圏・水圏・大気圏をひとつの振動システムとして理解する新たな学問分野を開拓し、地球観測データに新しい付加価値を創出するものとなった。
さらに深尾氏は早くから海域での観測基盤の整備を重要視し、1980年代から太平洋島嶼国における広帯域地震観測網を展開した。1990年代には地震・地磁気・微気圧・地殻変動を統合した「海半球観測研究計画」を立ち上げ、観測データのオンライン公開を実現し、世界の研究者が広く利用する、現在の「太平洋アレイ観測計画」として発展させた。
学術コミュニティへの深尾氏の貢献も顕著であり、1991~1995年に日本地震学会会長、1993~1997年に東京大学地震研究所所長を歴任し、地震学に基づいた地震防災科学の発展に大きく貢献した。また、(国研)海洋研究開発機構において地球内部ダイナミクス領域を創設し、2012年まで領域長として学際的研究を牽引した。深尾氏が携わった組織では、幅広い分野の研究が融合した自由闊達な学風が築かれ、多くの後進研究者を育成・輩出することでも国内外における地震学の発展に貢献した。
深尾氏は、これらの国際的に卓越した研究業績により、1995年の恩賜賞・日本学士院賞をはじめ、1997年に米国地球物理学連合フェロー、2014年には日本地球惑星科学連合フェローおよび日本地震学会名誉会員に選出されている。さらに2018年には、米国地球物理学会連合よりInge Lehmann Medalが授与されるなど、国内外から極めて高く評価されている。
以上述べたように、深尾良夫氏は国際的な地震学の発展ならびに日本地震学会の運営に多大な貢献をされており、2026年度日本地震学会賞を授賞する。
深尾良夫 特任上席研究員