知ろう!記者に発表した最新研究

2011年2月23日発表
気温上昇じょうしょう「2℃以内」達成には、CO2の量をゼロ以下に! さらなる温暖化対策おんだんかたいさくが必要!

地球の温度が上がる「地球温暖化」という現象げんしょう。その原因げんいんは、人間活動が大気中に出す二酸化炭素にさんかたんそ(CO2)の量がえたことが強く関係すると考えられています(図1)。

二酸化炭素

図1:二酸化炭素

温暖化が進むと、海と大気の温度が上がって気候きこうが変わり、環境や生き物は様々な影響えいきょうを受けます。その影響をできるかぎり減らすために、1つの将来シナリオとして「産業革命さんぎょうかくめい解説) 以後の世界の平均気温上昇を2℃以内におさえる」ことが 提案ていあんされました。

そこで、その将来シナリオを実現させるためにはCO2の量をどれだけ減らす必要があるのかを、 時岡ときおか達志たつし博士の研究チームが計算しました。

その結果、化石燃料(石油や石炭など)から大気へのCO2の量を、今世紀半ばにはゼロにしたうえで、すでに出した大気中のCO2を集めて、地下や水中にふうじ込める必要があることが判明したのです。

「2度以内」の達成は、現実的にきびしいと言わざるをえない状態です。時岡博士は、「新たに得られた将来予測研究の成果にもとづいて、新しい目標を設定する必要がある」と話します。



CO2ってなに?
温暖化を進める温室(おんしつ)効果(こうか)ガスの1つです

CO2は、人間が呼吸したり化石燃料を燃やすことなどによって出ます。そのCO2は、地球をおおい地面からの熱を大気中に閉じこめて、地球全体をあたためます(図2)。

温暖化

図2:温暖化


ですから、温暖化の進行をふせぐためには、CO2の量を減らすことが重要です(図3)。


エコ活動

図3:エコ活動

では、産業革命以後の温度上昇を2℃以内におさえるためには、CO2の量をどれだけ減らす必要があるのでしょうか。研究者が実験を行いました。

どんな結果が出たの? CO2の量を「ゼロ以下」にする必要がありました!

研究者は、新しく開発したモデルを使った2300年までのシミュレーション実験をスーパーコンピュータ「地球シミュレータ」で行いました(図4)。その新モデルは、炭素たんそ循環じゅんかん解説 )や植物の種類の変化、地上約80kmまでの大気の循環、オゾンホールなどを再現さいげんするモデルで、地球の環境変動をくわしく予測するすぐれものです。

地球シミュレータ

図4:地球シミュレータ

シミュレーションの結果、今世紀半ばに化石燃料から大気へのCO2をゼロにしたうえで、すでに出してしまった大気中のCO2を集めて、地下や水中にふうじこめないと、大気の温度上昇2℃以内の達成はむずかしいことがわかったのです(図5)。

CO2の量を減らそう!

図5:CO2の量を減らそう!

一方で気象については、台風やハリケーンなどの発生数は減りますが威力いりょくは増すこと、また台風の通り道は東よりになることをつきとめました(図6)。

台風の変化

図6:台風の変化

これからはどうするの? よりくわしい予測につなげていきます

温暖化の進行を防ぐためには、さらなる対策が必要だと示されました。研究者は、「これからもっと実験をして、よりくわしく予測をしていきたい」と話します。

一方、「気候変動に関する政府間せいふかんパネル(IPCC)」という国際機関こくさいきかんは、世界各国の温暖化に関する研究をもとに報告書ほうこくしょをまとめます。今回の成果は、その報告書に大きく貢献こうけんすると期待されます。

<< 一覧に戻る
解説が入る

産業革命:

機械や蒸気機関車じょうききかんしゃを使ってたくさんのものを作るようになり、社会や経済けいざいが大きく変わりました。それにともなって人々の生活も豊かに便利になりましたが、一方でCO2の量が急激きゅうげきに増えたのです。

炭素:

炭素は、人間のからだを作ったり、エネルギーとなったりするなど、生命にとって重要な役わりを果たします。一方で、刻々こくこくとかたちを変えて、時には二酸化炭素となり地球温暖化の原因になることもあります。炭素は様々なかたちで、地球上の大気、水、陸上、生物の間でつねに交換こうかんされてめぐるので、炭素がどこで、どのようなかたちで、どれくらい循環しているかを知ることは重要です。