知ろう!記者に発表した最新研究

2012年4月5日発表
新たな無人探査機(むじんたんさき)が仲間入り!
「ゆめいるか」、「じんべい」、「おとひめ」の誕生!

真っ暗で高い水圧の深海を自在(じざい)に動く無人探査機。みなさんは無人探査機というと、どんなものをイメージしますか?

ジャムステックでは、コンピュータに設定(せってい)したルートに従(したが)って水中を移動(いどう)し、障害物(しょうがいぶつ)をよけながら自力で広い範囲(はんい)を探査する「自律型無人探査機(じりつがたむじんたんさき)(AUV)」を開発しています。

このたび、そのAUVに新たな仲間が誕生しました(写真1)! 研究チームが開発したのは、「ゆめいるか」、「じんべい」、「おとひめ」です。3機のAUV同時製作は、世界初。どんなAUVか、その正体に迫ります!


横須賀本部の整備場にならぶ新しいAUV

写真1:横須賀本部の整備場にならぶ新しいAUV


「ゆめいるか」はどんなAUVなの? 効率よく広い範囲を移動し、資源を探し出すのが得意です!

日本周辺の海底には、メタンハイドレートや海底熱水鉱床(かいていねっすいこうしょう)などの資源(しげん)が眠(ねむ)っています。資源を利用するには、どこにどんな資源がどれだけあるのか、海底はどんな地形か、などを知ることが必要です。

そこで開発したのが、「ゆめいるか」(図1)。 機体の後ろにスラスタを4基(き)持ち、平均2〜3ノット(=時速4〜6キロ)で移動します。大容量リチウムイオン電池で、最大16時間探査できます。

「ゆめいるか」

図1:「ゆめいるか」


海底地形は、合成開口ソナーという装置(そうち)(図2)(参考:2011年2月4日発表)で広い範囲を鮮明(せんめい)にとらえます。その精度は、1km先にある野球ボールだって数えられるほど! 研究者は「海底地形は、インターネットと地図ソフトを使って誰(だれ)でもすぐ見られるようにする予定です」と語ります。

合成開口ソナー

図2:合成開口ソナー


機体の前後には翼(つばさ)を4枚ずつ持ち、これらを協力させて動かすことで、姿勢を常(つね)に水平に保(たも)ちながら移動します(図3)。機体の底にある合成開口ソナーなどの向きがふらつかず、より精密(せいみつ)に探査できるのです。

機体を水平に保ったまま移動する「ゆめいるか」

図3:機体を水平に保ったまま移動する「ゆめいるか」

「ゆめいるか」は、広く過酷(かこく)な深海を、効率良く探査します。

「じんべい」はどんなAUV? 化学センサを使った観測が得意です!

地球温暖化(ちきゅうおんだんか)の主な原因は、人間活動により放出される(自動車の排気(はいき)ガスや工場のけむりなど)二酸化炭素(にさんかたんそ)(CO2)の増加と考えられます。そのCO2の約3割(わり)は、海に吸収されます。海のCO2が増(ふ)えれば、海のpHは酸性(さんせい)に近づき生き物に影響(えいきょう)を与える恐(おそ)れがあります。このため、海のいまの状態(じょうたい)を知ることはとても大切です。

そこで開発したのが、化学センサを使った計測が得意な「じんべい」(図4)です!

「じんべい」

図4:「じんべい」


搭載するのは、新開発のpH-CO2ハイブリッドセンサ(図5)。深度3,000mまでCO2濃度(のうど)とpHを同時に計測できる、世界初のセンサです。

pH-CO2ハイブリッドセンサ

図5:pH-CO2ハイブリッドセンサ


CO2濃度が高くなるとpHは低くなる関係があるので、この2つの同時計測はとても重要です。研究者によると、「最大の強みは、「じんべい」とセンサが協力すること」とのこと。協力ってどういうこと? CO2濃度は計測に2〜3分かかってしまいますが、pHは数秒で計測できます。そこで、pHセンサで海水の変化を見つけると、「じんべい」が「その海水を貯めて!」とセンサに命令を出して、その貯めた海水のCO2濃度をCO2センサが時間をかけて計測するのです。「じんべい」とセンサの協力により、今までは取り逃がしていたような貴重(きちょう)なデータを取れるし、広い範囲を連続的にくわしく計測できるようになります!


また、こまかく計測を行うには、「じんべい」は時にゆっくり走らなければなりません。そこで、機体の中央にスラスタを付けて、低速(約0.7ノット=時速1.3キロ)でも安定して走れるようにしました。機体中央のスラスタは、ジャムステック初! これまでのAUVの多くは翼で機体を動かすため低速が苦手でしたが、「じんべい」は低速から高速まで状況に適(てき)した速度で移動します。

「おとひめ」はどんなAUVなの? 細かい計測やマニピュレータでの作業が得意!

もし「じんべい」などが特徴的(とくちょうてき)な海域を発見したら、そこをくわしく調べる必要がありますね。そこで登場するのが、「おとひめ」です(図6)! 他の会社と一緒に開発した「ゆめいるか」や「じんべい」とちがい、「おとひめ」はジャムステックだけで開発した手造(てづく)り探査機です。

「おとひめ」

図6:「おとひめ」


研究者は、「国産にこだわり、日本初、そして世界初を目指しました」と話します。例えば、機体のお腹につけた「ステレオ視(し)カメラ」。2台の高性能デジタルカメラで異(こと)なる位置から撮影(さつえい)することで、海底地形の大きさなど立体情報(りったいじょうほう)(3次元)を集めます(図7)。

ステレオ視カメラの原理イメージ

図7:ステレオ視カメラの原理イメージ


深海で大きさなどを測るのは難(むずか)しいのですが、開発したステレオ視カメラを使えば、センチメートル単位以下の細かさでとらえられます!

機体の先頭につけたマニピュレータも、水中用では初の国産品! 研究者がゼロから開発しました。器用な手先で、サンプルを丁寧(ていねい)に集めます。


そして「おとひめ」は、自力で探査するだけではなく、研究者が船からコントロールする「遠隔操縦(えんかくそうじゅう)」も可能です。遠隔操縦は2種類。1つ目は、直径1mmの細い光ファイバで船とつなぐ「光遠隔操縦」です(図8)。研究者は、光ファイバで送られてくるハイビジョンカメラの映像(えいぞう)を船上で確認しながら、マニピュレータでサンプルを集めることができます。

光遠隔操縦

図8:光遠隔操縦


もう1つは、音波を使う「高速音響通信」です。その速さは、光遠隔操縦に劣(おと) りはするものの、他の2機の約4倍! ただ、音波だと、大容量の映像は遠くまでは送れません。「おとひめ」は気になるところを海底に近づいて詳しく調べる機体なので、研究者は船上からリアルタイムで映像を見れると大変便利。そこでまず、映像を 通信中継装置(つうしんちゅうけいそうち)に送り、そこから光ファイバで船に送るようにしました(図9)。研究者は、状況にあわせて探査内容やルートを変更できます。光ファイバがからまる心配もなく「おとひめ」も身軽!

高速音響通信での遠隔操縦

図9:高速音響通信での遠隔操縦

これからはどうするの? 本格的に動き始めることを目指して試験を続けます

新たなAUV3機は、これまでのAUVより海底に近づき海底を精密に調査できます。また、小型なのでどの研究船にものせて運べ、メンテナンスも楽。異なる得意技(とくいわざ)を持つ3機を組み合わせることで、海洋調査の幅(はば)がさらに広がります。

本格的(ほんかくてき)に動き始める時期は、「ゆめいるか」と「じんべい」は平成25年度、「おとひめ」は平成26年度を目指します。それまで、多くの研究者や技術者が一丸となって毎日がんばります!

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