4 平成15年度の研究計画


現在地球フロンティア研究システムの各研究領域で行われている個別モデル(大気組成、陸域生態系炭素循環など)の開発をひき続き進めながらそれらひとつひとつを物理的気候システムモデル(大気・海洋・陸面の"物理的"過程を中心としたモデル、CCSR/NIESにより開発された既存のものを利用)と結びつけ、「部分統合モデル」を作る作業を継続する。


(1) 炭素循環モデル、炭素循環・気候変化結合モデル・サブグループ

大気海洋結合気候モデルMIROCに、海洋炭素循環モデルと陸域炭素循環モデルとを結合させる作業に今年度中に着手する。海洋コンポーネントについては、4成分の簡略な生態系モデルと海洋大循環モデルとの結合がほぼ完了している。陸域コンポーネントについては、地球フロンティア研究システムで開発中のSim-CYCLEの気候モデルへの組み込みに15年度早々に着手する。陸面プロセスモデルMATSIROとSim-CYCLEの統合も行う。また亜寒帯林については温暖化により植生分布が大幅に変化することが懸念されるため、Sim-CYCLE拡張へ向け亜寒帯林に特化した植生動態モデルの開発を始める。MIROCへ組み込む前に各コンポーネントモデル単体での性能の吟味は充分に行う必要がある。


(2) 温暖化・大気組成変化相互作用モデル・サブグループ

@ 温暖化・大気組成変化相互作用モデル

東大気候センターで開発された対流圏化学モデルCHASERを拡張して成層圏化学反応を組み込み、高解像度time slice simulationを行う。ただしCHASERは非常に多くの変数を含み大量の計算機資源を要求するため、具体的にどの程度の解像度で実験を行うかはこれから実際に地球シミュレータ上でモデルを稼動させながら検討していく必要がある。解像度の決定には化学過程に重要な循環場の再現という見地も必要とされるので、物理気候コアモデル改良サブグループと一体となり最もバランスのとれた解像度を模索していく。またこれらの活動と並行して移流スキームの改善にも取り組む。

A 温暖化―雲・エアロゾル・放射フィードバック精密評価

GCMにおけるエアロゾルの取り扱い改善へ向け、物質が異なると雲粒の形成し易さが大きく変わってくる効果の考慮を検討する。GCMよりも高い解像度のモデル結果も利用していく。共生プロジェクトの他の課題(諸物理過程のパラメタリゼーションの高度化(大気・海洋分野))やモデル統合化領域とも連携していきたい。


(3) 寒冷圏モデル・サブグループ

観測データや古気候再現実験を通した検証を行い、気候センターで開発された氷床モデルや、MIROCに導入されている海氷モデルの高精度化に努める。また共生プロジェクトの他の課題(諸物理過程のパラメタリゼーションの高度化(大気・海洋分野))の観測研究とも連絡をとりあい、海氷モデルの将来的な改善について検討を行っていく。


(4) 物理気候コアモデル改良サブグループ

成層圏における大気化学過程を現実的に再現するためには、現行モデルに見られる下部成層圏における低温・水蒸気過多という欠点の除去と低緯度成層圏におけるQBOの再現が必要条件と言える。こうした条件を満たしつつ計算コストの面からも現実の使用に耐えるような、バランスの取れたモデルの解像度を模索していく。成層圏大気循環の形成には内部重力波が重要な役割を果たしており、モデルで陽に表現される成分とパラメタライズされる成分との両方について解析を行っていきたい。モデルの鉛直座標系を、従来のσ座標系からσ―Pハイブリッド座標系に更新する作業も並行して行うことになっており、対流圏界面付近の循環の再現性が向上することが期待される。


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