見えないDNAを自分の手で — 高校生5人のPCR体験記(前半)
講義と実験を行き来しながら、DNA増幅の原理を“自分の手”で確かめた一日。
開講式と導入講義
PCRといえば、新型コロナの検査で一躍有名になった言葉。だが「どうやってDNAを増やしているのか」「研究の現場ではどんなふうに使うのか」を知る人は少ない。今回は、その仕組みを講義で学び、さらに自ら実験で体験できるという貴重な一日だ。
午前9時半、5人の高校生が高知みらい科学館の実験室に集められた。星野辰彦主任研究員やスタッフたちが笑顔で迎える。
まずはPCRについての講義。発明者キャリー・マリス博士の逸話や、PCRが親子鑑定や環境調査に応用されている例が紹介される。参加者の表情は一気に引き締まる。机の上にはサーマルサイクラー、ピペット、チューブが並んでおり、普段の理科室では見かけない“本物の研究器具”を前に、早くもそわそわとした空気が漂った。
マイクロピペットの洗礼
最初の実習はPCR反応液の調製。生徒たちは0.5〜10µLを扱うを握る。見た目はペンに似ているが、その扱いは想像以上に繊細だ。
「先端の位置を確認しながら、ゆっくり吸ってゆっくり吐き出してね」。
参加者はアドバイスに従い、慎重に親指を動かす。プラスチックチューブに20µlのPCR溶液の調整を終えると、ほっと安堵の笑みが浮かび、緊張感の中にも和やかな雰囲気が漂った。
サーマルサイクラーに託す
全員がチューブをセットし終えると、それらはサーマルサイクラーに収められる。DNAの二本鎖をほどく“熱変性”、プライマーがくっつく“アニーリング”、新しい鎖を伸ばす“伸長”。そのサイクルが20回繰り返される。機械が静かに作動する間、参加者は座学で電気泳動の仕組みを学んだ。実験と講義が交互に進む構成は、集中力を切らさず学べる工夫だ。
DNAが“見えた”瞬間
昼休憩を挟み、いよいよ電気泳動へ。
アガロースゲルにPCR産物を流し込み、電圧をかける。参加者は装置の前に集まり、結果を待つ。
青色光を当てると、ゲル上に光るバンドが浮かび上がる。
「出た!」 「これ、私のだ!」
歓声が自然と漏れ、笑顔が弾けた。ニュースや教科書の中でしか知らなかったDNAが、目の前で“見える化”された。自分の手で増やした痕跡が光っている――その実感は、言葉にできないほどの驚きと喜びだった。
本プログラムは、日本学術振興会「ひらめき☆ときめきサイエンス」事業として開催されました。 大学や研究機関の最先端研究をわかりやすく紹介し、科学の楽しさと社会とのつながりを体感していただく取り組みです。