2015年3月26日 ただいま、東京

  • 24日の朝、最後の調査をしようと試みたのですが、海が荒れてしまいました。調査中は波や風の状況を踏まえて常に船を操作する必要があるのですが、それができない海況になってしまい,調査は中止ました。あっけない幕切れ。研究員は、「これくらいの海況なら調査は可能ではないか!?」と思ってしまいがちですが、事故が起こってからでは遅いのです。安全を最優先する船員さんの英断には従うより他はありません。

  • さ、帰ろう。東京へ。桜の咲き始めたところへ。

  • 帰りの航路では、雪が降る中、集合写真を撮ったり、風速が毎秒30 mに近づくほどの暴風に見舞われたりしました。船内では、調査のためにセットした機材を船から降ろすための梱包作業に追われます。激烈に揺れる中、無事調査を終えたあとの飲み会もありましたね。

  • そうこうしているうちに(帰路は片付けに追われ過ぎて記事が書けませんでした)、26日の朝を迎え、富士山まで望める澄んだ快晴の中、東京の大井ふ頭に入港しました。

  • さぁて、積荷降ろしが始まるぞ。家に帰るまでが遠足とはよく言ったもので、積荷降ろしの時に油断してけがをする人が多いと聞いたことがあります。油断は禁物。船から降ろした荷物は、研究所に帰って受け取らないといけません。何度経験しても大変な作業です。

  • 片付けから受け取りまでの肉体労働。研究者と聞くと、室内にこもっているイメージを持たれる方が多いかもしれませんが、現場で調査をする人たちの間では、強靭な肉体が重宝されます。体力自慢で勉強好きな方は、是非とも海洋学の研究者の門戸をたたいてみてください。楽しいかもしれませんよ♪

  • 航海はこれで終わりです。最後まで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。
    しかし、現場での調査が終わったら、すぐさま怒涛の分析と解析が待っています。
    それが終わったら学会発表と論文の執筆。
    延々と続く自転車操業。海洋学者のカルマですね。

  • それではまたの機会にお会いしましょう。

(杉江)


2015年3月22日 今でしょ

  • 読者の中には、なんでまたこんなに寒い時期に北の海に繰り出すんだろうか、という疑問を持った方もいらっしゃるのではないでしょうか。そんな方のために少し解説させていただきます。

  • 冬から春にかけて、日射が長くなってくることで植物プランクトンにとって、光の環境がよくなります。また、海の表面が温まったり、塩分の低い水が塩分の高い水の上に乗っかったりすると、冬には水深100~200 mまでよく混ざっていた表層が、どんどん浅くなってきます。そうなってきますと、いよいよ、増殖した植物プランクトンが海の表面にたまってゆき、「大増殖」という感じになってまいります。この増えてくる様子のことを、専門用語ではブルーム(bloom)と言います。陸上では花が咲くことをbloomと言います。植物プランクトンは花を咲かす生き物ではありませんが、大増殖して真っ盛りになった状態を表現するには言いえて妙な単語ですね。

  • このブルームで増えてきた植物プランクトンは動物プランクトンにとっては年に1度のご馳走です。特に、北海道などの北の海でブルームを引き起こす植物プランくトンは比較的大型で、それを食べる動物プランクトンも必然的に大型になります。写真はNeocalanus属のカイアシ類で、カイアシ類としてはとても大きな部類に入ります。と言っても、大きいもので1 cm程度ですが。。。

  • しかし、プランクトンの業界では、1 cmというのは大きいもので、サンマのような比較的小型の魚では直接餌になります。植物プランクトン→動物プランクトン→魚。単純で短い食物連鎖です。春以外の季節では、このような単純な経路は主要ではなくなり、複雑怪奇になります。少なく見積もっても、植物プランクトンから魚まで3~5段階のステップが必要でしょう。

  • 我々人間も同じですが、動物はものを食べたら呼吸をして運動をしてうんちとおしっこを出します。そうこうしているうちに、動物プランクトンは、食べた栄養分の70%以上を消費してしまいます。多くても30%しか身にならないわけです。そして同様に魚の身になるのは、食べた動物プランクトンの30%。すなわち、植物プランクトン→動物プランクトン→魚と、短い経路でも、多くて9%しか魚に届かないわけです。食物連鎖のステップが1つ増えるたびに70%ロスするのです!単純で短い食物連鎖だった3段階の経路からさらに2段階ステップが増えると、魚の身になる分は1%を切ってしまい、短い経路の時の10分の1にまで減ってしまいます。

  • この、春の短い食物連鎖の経路の出発点である植物プランクトンが、どのような環境でどのように増えてゆくのか。亜寒帯北太平洋の豊かな漁業を支える起点を明らかにするには今、この時期に船に乗って現場を調査するよりほかに方法が無いのです。すでに風化しつつある流行語ですが、いつやるの、と問われたら、「今でしょ」、というわけです。

  • さぁ、調査も残すところあと数日。自分たちの調査が如何に貴重な機会で重要であるかを知れば知るほど、やる気が出てくるというものです。さぁ、がんばろう。

(杉江)


2015年3月22日 探し物はなんですかぁ~

  • さて、航海は残すところ5日。24日の午前中には釧路沖を離脱して東京に向かう予定ですので、調査自体は残すところあと2日もありません。

  • じつは、調査開始から今日に至るまで、植物プランクトンが大増殖した様子をとらえることができておりません。例年であれば、3月下旬の釧路沖は植物プランクトンまみれと言って良いほどの状況なのですが。どうも環境条件が整いきっていなかったようです。さて、どうしたものか。

  • 昨日までの間、釧路沖のエリアは面的に調査をしたし、さらに広い範囲は線で結ぶような観測をしてきました。大増殖をとらえるために残された方法は、植物プランクトンが増えていそうな場所をピンポイントで探すしかなさそうです。さて、どうしたものか。

  • そこで再び衛星とモデルによるシミュレーションの出番です。どうやら、調査のために設定された観測線と観測線の間に植物プランクトンが多そうな帯がありそうなことが衛星画像から見えておりました。この帯が衛星から見られたのは1~2日前のこと。今はどこに流されているのだろうか。海の表面の流れはモデル計算によってはじき出されています。よし、あの帯は西に移動しているはず!

  • 走りながら、船底のポンプで汲み上げられた海水を様々なセンサーを通してモニタリング。走る白鳳丸。モニターを眺める研究員。あの植物プランクトンが多そうな帯は何処へ。

  • そんな時、研究室にいる調査員から船橋に連絡が入る。
    「今の所、ポイントしてください。」

  • 研究室に響く歓声。
    「きたーーー。」
    「おぉ!高いっ!(モニターしていた植物の量が多い!)」
    「やっとだねぇ、よし!」

  • 見つかるもんですね。陸上から情報を提供し続けてくれた支援と乗船研究員の忍耐が実を結んだ瞬間です。周辺と比べて4~5倍は植物プランクトンが多そうです。探し物が見つけにくいものだったのは過去の話かもしれません。英知を集結すればかなり見つけづらそうなものも見つけられる世の中になったようです。

  • 航海終盤にきて、皆さんに疲労がたまってきたはずですが、俄然みなさんの士気が高まった瞬間でした。

(杉江)


2015年3月20日 時化たとき

  • 思い返せば,3月10日の朝は大荒れ。そんな中,船は噴火湾に避難するために全速力で航走したものですから,うねりを上げる波に突進して激突し続ける本船は,その度に猛烈に揺れました。右に左に,前に後に,短い周期で不規則に揺れる船内。防風吹きすさぶ中,ハトだって船の中に避難してくるほど。くるっくー。脚にタグのようなものがついているので,レース用のハトか何かでしょうか。人には慣れているようで,近寄ってきてくれました。「エサくれ,くるっくー。」

  • 時化が来そうなことは事前の天気や波浪の予報から分かっているので,揺れで移動してしまいそうな物は,床にボルトで固定されている机などに縛り付けます。重いものが飛んでくれば凶器になるかもしれないからです。

  • しかしながら,激烈に揺れている最中も,厨房の方々は料理を作ってくださり,船酔いがひどくない人はご飯を頂戴できます。しかし,踏ん張っていても椅子ごと身体が右に左に滑っていってしまいます。もちろん人の座っていない椅子はそこら中を自由に移動して散乱してしまうので,床に固定された机や床のボルトと固定されます。これでひとまずは安心。あとは低気圧が過ぎ去るのをじっと待つのみ。

  • しかし,何でこんなに過酷な状況の調査をしないといけないんだろうか。答えは比較的簡単で,調査が大変過ぎてこれまでほとんど調べられていないから。常に新しいことが求められる研究者。頭を使う仕事である一方では,心身の堅牢さが求められる職業でもあります。比較的過酷な環境でも仕事ができちゃう身体に産み育ててくれた乗船者全ての親御さんに感謝感謝。お陰さまで世界でも類を見ない環境での調査をちゃくちゃくと進めてこれております。

(杉江)



2015年3月19日 協力が強力

  • 海水が空気と比べておおよそ1000倍粘り気があることは以前も触れましたが,粘り気があるということは混ざりにくいという特徴にもなります。いろんな性質の水が混ざりきらずにあちらこちらに存在するのです。日本の周辺では親潮,黒潮などの大きく強い海流以外にも,北海道周辺では津軽暖流や宗谷暖流などの地域的な流れもあります。その他にも,黒潮から離脱し,渦を巻いている水の塊(暖水塊といいます)が釧路沖などの冷たい海域に存在することもあります。釧路沖では沿岸(河川や流氷の溶けた水によって塩分が低い)とその沖合(陸の影響が少ない)とで流れる海水の性質が異なっているのです。

  • さて,何だかぐちゃぐちゃに思える海水。調査海域をどこに設定しようか。船の上に居るだけではなかなか全貌を把握できません。くまなく航走して調査する時間もありませんし,水は動くのでその状況は刻一刻と変化しております。

  • そんな中,今回の調査は船の上で働く我々以外にも,陸上の研究者からの強力な支援を頂戴しております。
    1つは,調査海域周辺について,衛星からみたクロロフィルの濃度(植物プランクトンの量の指標)と水温の情報を北大の研究者から毎日配信して頂いております。もう1つは,数値モデル計算に基づく,水温,塩分,流速の詳細な予報値です。これらは電力中央研究所とJAMSTECの研究者の協力により毎日配信されております。

  • これらは,観測点が周辺の海とどのような関係にあるのかを知る上でも貴重な情報です。また,次に目指すべき観測点を決定する際には,これらの情報を元に論議が進みます。お陰様で我々は限られた航海の時間の中で,効果的な観測を行うことができております。

  • あぁ,文明の利器。すばらしや。しかし,本日3月19日,調査は一旦中断です。 船内の水が足りなくなってきたようなので,一晩だけ釧路に入港して水の補給を行います。

(杉江)


2015年3月18日 かもめはかもめ

  • 船の近くに寄ってくるかもめ。漁のおこぼれにあやかりたいのかな。
    しかしごめんよ,君たちの餌(魚)を採っている船じゃないんだ。
    魚の餌の餌,もしくは餌の餌の餌,はたまた,餌の餌の餌の栄養分を測るために海水を汲んだりしてるんだ。期待しないでおくれ。

  • そんなかもめを見ながら,
    「なんか大福に見える。」
    「みえないよー。」
    「それは著しい想像力の欠如ですね!」
    「鏡餅的な?」
    「上のモチに柿ピー(くちばし)刺さってるね。」
    「亀●製菓はアレをもいで出荷してるらしいよ。」
    「しかし,この冷たい海水にお腹をつけて浮かんでて,よくお腹がピーピーにならないもんだね。」
    「まぁでも浸かってるのは胸肉あたりか。」

  • ここ数日,海も船上も穏やかです。

(杉江)


2015年3月14日 晴れたらいいね

爆弾低気圧の後は抜群の晴天。3月14日,晴れ。
  • いよいよ海況は穏やかになり,本格的な観測開始。釧路沖に密に巡らされた観測点をどんどんこなしてゆきます。ちなみに,筆者S江は甲板の上に設置した培養実験があるので,その処置に追われる日々。その1日を振り返ってみます。

  • 7時20分 起床,朝食
    8時 採水器,観測機器を海に投入(A01という観測点)
    8時半 採水
    10時 採水終了
    10時過ぎ 晴れているので写真を撮りに上部甲板に出る
    (1枚目は沖から厚岸を臨む。もう一つの写真は大気観測のための試料採取装置)。
    その後少し仮眠。
    11時55分 昼食(豚の味噌漬け,うまー!)
    12時半 培養試料の採取,試料の処理開始
    15時頃 プランクトンネットのお手伝い(ヤムシが驚くほど沢山採れた!),培養試料の処理一旦中断
    17時20分 夕食(ニシン,豚肉となすの味噌炒め,とポトフ。組み合わせ,変ですよね。)
    18時頃 培養試料の処理再開
    21時半 培養試料の処理終了,洗い物&翌日の準備開始
    22時 採水器,観測機器を海に投入(A03という観測点)
    22時半 カップヌードルに激辛のデスソースを投入し身体に活気を取り戻させる。うまし!
    23時半頃 採水
    1時 採水終了,採水した試料の後処理
    2時 本日分の仕事終了。翌朝の試料のための準備
    2時 -80度のフリーザーのアラームが鳴り,急遽対応!
    2時半 全ての作業が終了!
    3時 この記事を書き終える。少し前からビールを飲み始める。

  • まぁやること満載ですこと。こんな日が15,16日と続きそうです。天候は19日まで良さそうなので,さらに17,18日も働き倒すのかもしれません。

  • ちなみに,15時頃の予定で出てきたヤムシというのは,どう猛な動物性のプランクトンです。学名はサジッタといって,これは「矢」を意味しており,身体は細長く,頭が鏃(やじり)のように三角形であることからつけられた名前だと推測されます。弓の名手,サジタリウスも同じ由来ですね。学名を知ればその生物のなりや,往々にして神話,寓話の登場人物の名前の由来なんかが分かるようになります。そんな,生きてゆく上でほとんど役に立たない情報が垣間見れたとき,知的好奇心が少し満たされ,なかなか面白く感じてしまうのが分類系統学だと思っております。え?何が面白いんだかさっぱり。と思われた読者の方々,あなた方がマジョリティーで,私のような者がマイノリティーだという認識もありますのでご安心を。

  • あ,そろそろ寝ないと。

(杉江)



2015年3月13日 噴火湾から脱出

  • ただいま3月13日未明。
    噴火湾にて荒天待機中の3月11日には,2011年の震災で被害に遭った方々に哀悼の意を表して黙祷が行われました。2015年の3月11日の気温は-1~-2度ほど,風は毎秒15 mを越えるような極寒でした。当時は筆舌に尽くしがたい不幸や苦労があったことが忍ばれます。

  • さて,道東を襲った3月10日からの爆弾低気圧は,東の海上の千島列島沖に抜けました。水と空気では粘性が1000倍ほど違うので,風がやんでも波はなかなか収まらないのですが,噴火湾に待避していた本船もようやく調査対象の海域に戻れそう。ということで,12日の20時ごろから釧路沖に向かって航走を始めました。ただいま,函館沖から襟裳岬に向かって東に走っております。しかし,洋上の風速は常に毎秒10 mを越えており,海況はまだ平穏を取り戻しておりません。本航海をできる限り有意義な物にするため,可能な限り調査を行うという選択肢。さすが,元ボクシング部の主席研究員。ヒットアンドアウェーの戦い方が得意だったと耳にしております。きっと,最も効果的な逃げ方と再出発のタイミングなのでしょう!(もちろん,船長が最終的に判断しております)

  • 調査再開の予定は13日の昼頃。その先5日間ほど低気圧が来ることはなさそうなので,いつ寝たら良いのか分からないような調査三昧でタフな日々の継続が予想されます。身体が資本とは良く言ったもんで,よく食べ,不規則なスケジュールの中を縫いながら少しの時間でも寝て体力が回復できる人でないといけません。一杯引っかけてさっさと寝ないと(ただいま午前2時)。

  • そんな今宵のお供は,「醸し人九平次」純米大吟醸のrue Gauche。心地よい酸味の後に続く華やかな香り,程良くふくよかな味わい,次の1口が楽しみになるような後味のキレ。申し分のない素晴らしい日本酒です。気をつけないと飲み過ぎてしまうので,肝臓に黄・赤信号が点っている方にはお勧めいたしませんので悪しからず。。。

(杉江)


「醸し人九平次」純米大吟醸のrue Gauche

2015年3月11日 噴火湾内に退避

現在位置:42 26.523N,140 27.979E
  • 発達した低気圧の影響のため、3月9日16時頃に釧路沖から離脱 襟裳岬を経由し、現在、噴火湾内に退避中です。
    3月10日朝方に襟裳岬から苫小牧を過ぎたあたりは、船体が激しく揺れ(30度くらい傾いたとか?!)
    居室内のベッドに寝ていても、体が右に左にゴロゴロ転がりユックリと寝てもいられないほど。

  • 荒天のため3月10日、11日は噴火湾内で待機となりました。 ある者は次回の観測に向け準備を
    ある者は体の癒しタイム、またある者は夜の部で伝説(?)を作り、、、、など、
    思い思いの時間を過ごしています。

(野口)


3月11日朝の噴火湾内
外気温-0.5℃
後部甲板に雪が積もっています。

2015年3月8日 ほっかほか

  • 3月8日には釧路沖に到着しました。北緯42度38分,東経144度56分。水温がマイナスに突入しました(写真)。海水は塩分(釧路沖だと約3.3%)が含まれるので,凝固点降下の効果を受けて凍り始めるの はマイナス1.8度くらいからだそうです。

  • そんな釧路沖の親潮,沿岸親潮域のことについて,航海前の会合の際,世界中を調査している津●さん(今回は乗船しない), 「私の経験では,3月の釧路沖ってゆうのは,世界中で最も寒くて辛い海域の1つなんだよねぇ。良い成果が出ると思いますので,みんながんばってね~。」 と,ありがたいお言葉を頂戴していました。

  • とにもかくにも,その辛く寒い,という情報の強迫観念に近い思いから,冬場のサーフィン後の体の暖めには腰と足の裏のホッカイロが抜群に良い!と聞いては購入し,アウトドアショップの登山家からの情報を得ては,目出し帽やアウトドア用の履けばすぐ暖かくなる手袋等を準備していたわけです。

  • いざ,調査開始。

  • 風が弱いこともあり,足裏のホッカイロ,目出し帽,手袋を装備しなくても,冬用のカッパだけ体感温度的には意外と平気。でも足の先から冷えてくるので,次の観測点では足裏のホッカイロを装着することにしました。

  • あ,ちょっと,あぁぁ,これ…すんごい……あったかいんだからぁ~♪

  • 50-Lの海水が入ったタンクを,タンクを横に倒したり,持ち上げたりしていたらあっという間に汗だくになりました。足の裏のホッカイロの威力,すさまじや!ホッカイロ情報をいただいた竹●さんには感謝感謝でございます!

  • もちろん,私のみならず,洋上の全員が思い思いの防寒具で,“冷えて堪るかっ!いい試料を採るんだっ!”という確固たる意志とともに本調査に参加しております。

  • 嵐の前の静けさなのか,8日,9日と,至極順調に調査が進んでおります。しかし,9日午後18時,風速が10 m毎秒を越えてきました。おやおや。おやおやおや?

(杉江)


2015年3月8日時点の観測地点の海況

2015年3月7日 KH-15-01航海,よーい,どん

  • 3月6日から26日までの3週間に渡る,東京大学大気海洋研究所の学術研究船白鳳丸KH-15-01次航海が始まりました。
    船内での出来事について時折綴って参ります。

  • 6日の14時に東京の晴海埠頭を出港し,7日は研究対象海域の釧路沖に向けて北上を続けております。北緯38度55分を通過したところであります。今回は,北はベーリング海を抜けてオホーツク海を越え,北海道沖に流れてくる親潮域の調査です。特に,北海道南東部の岸に近いところを流れてくる沿岸親潮という潮の流れに関して,外洋側を流れている親潮と併せて,物理,化学,生物の研究者が乗船しております。水深5000 mの深いところから,衛星で海を観測する研修者まで,幅広い学問分野の方が集まった学際的な航海です。きっとすばらしい航海になるのではないかと,調査が始まる前からすばらしい成果を期待しないではいられませんね。

  • さて,陸の上では変わりやすい春の天気。高気圧と低気圧が交互にやってくるので晴れと雨の天候になってしまうのですが,これは海の上とて全く同じで,穏やかな海と大時化(しけ)が交互にやってくることになります。3月とはいえ,釧路沖はきっと極寒で,風が吹けば体感温度はマイナス何度まで下がるんでしょう。考えるだけで気持ちが暗くなります。

  • 通常,時化が来たら水を採るための採水器を船から出すことが難しくなり,調査は海況が良くなるまで中断になってしまいます。しかし今回はどうもそうでは無いようです。さまざまな最新鋭の機械が搭載されたお陰で,船の底(水深約5 m)からくみ上げる海水を連続で採り,ものによっては分析まで行うことができるのです!なんてすばらしい!採水器が使えなくても船が航走できる限り揺れても揺れても調査が続けられる!

  • もうね,揺れて欲しくない人にとっては地獄ですよね。船酔いしながら作業しなきゃいけない。船内は地獄絵図さながらな光景になってしまうかもしれません。技術の発達は時に我々の生活を便利に,豊かにしてくれますが,時にそうでは無いようです。アインシュタインによって核反応の理論が確立されたのを機に,アインシュタインの意図とは別に核爆弾が作られてしまったことを想起せずには居られないのは私だけでしょうか。機械に働かされるような時代が来ないことを切に願いつつ,最初の投稿とさせて頂きます。

(杉江)