2018年8月9日 明日で航海終了

  • 海洋工学センター中野です。昨日で本航海最後の観測を終え、「みらい」は寄港地であるミクロネシア連邦のチュークへ向けて回航中です。航海終了前日は、なかなか複雑な思いが交差します。航海が終わってやっと家に帰ることができるという思いももちろんあるのですが、船の生活に慣れてしまうと通勤、会議、家での家事や買い物など陸上での日常生活が面倒に思えてしまい、この生活がもう少し続けばいいのにと思うこともあります。

  • また、乗船はまさに「同じ釜の飯を食う」仲間との一期一会でもあり、腐れ縁?が集まる機会でもあるのですが、これだけ毎日顔を合わせていても下船後はほとんどの人達と会うことがなくなり、それを思うと何となく寂しい気がします。昨日は航海恒例の集合写真撮影と観測の労をねぎらう打ち上げがありました。打ち上げでは、マック.H監督による航海をまとめた大作映画が公開され、大いに盛り上がりました。

  • 「みらい」は明日の午前中にチュークへ入港して本航海は終了です。

集合写真(撮影:観測士の服部岳人さん)

2018年8月8日 情報収集

  • こんにちは。工学センター賀来です。みらいでの航海も初めてですが、そもそも長期間船に乗るのも初めて...という初づくしの航海で、見たこともない装置や聞いたこともない用語と直面する日々を過ごしています。

  • 船内生活については、乗船前からいろいろ聞いて(脅されて?)いましたが、一番ギャップが大きかったのは、情報収集の難しさでしょうか。海の上なのでどこかに基地局がある訳もなく、当然携帯は圏外のままです。ちょっと調べ事をしたいと思っても調べる手段がなく困ることも多々あります。

  • とはいえ、船の外とのつながりが全くない訳でもありません。メール等の連絡手段はやや制約はあるものの利用できますし、ニュースも1日2回(朝・夕)更新され、その日起こった出来事も把握できます。普段は興味のある事柄ばかり集中して情報を集めてしまうため、意外といつもよりも幅広い情報を得られているかもしれません。

  • 天気(衛星写真や波・風の予報等)については、船内専用WEBサイトで閲覧できるようになっています。今回の航海で携わった多目的観測グライダー(MOG)もそうですが、波や風の状況によっては、作業順序の入替や、場合によっては中止せざるを得ない可能性もあるため、気にされている方は多いようです。(他の研究者の方とお話しする際も、ほぼ毎日のように天気の話題が挙がります。)

  • その他、現在の気温・気圧、波高など、一部の情報については、船内の各所に設置されているテレビモニターでも確認ができます。ちなみに、現在北緯15度付近で気温は30度ほど。ニュースを見ていると日本では40度を超えた場所もあるとのことで、日本よりは涼しいようですが、それでも外で作業する際は陽を遮るものがない分、すぐに汗だくになってしまいます。

2018年8月7日 敵か味方か、子供おじさん現る

  • みなさん、こんにちは。
    みらい航海にドキドキ初参加中の矢吹です。私はJAMSTECの中でもBio-Diveというちょっと大きめの海洋生物(魚や貝、甲殻類など)の分類や多様性、その進化などを研究するグループに属しています。私自身の専門は、細菌などを食べたり逆に甲殻類に食べられたりしている体長数マイクロメートルほどの原生生物とも呼ばれる真核微生物でその研究をしています。今航では微生物グループの一員として、観測点ごとにどのような真核微生物が生息し、水深や昼〜夜〜昼の時間によってどのような違いがあって何をしているのかを調べています。

  • ですが。。今回は研究の話ではなく、海洋研究者の船内での生き様について少しだけ紹介したいと思っています。

  • 陸上ではカッコよく学会発表したり専門用語ばかりの難しそうな議論をしている研究者ですが、何日も船で生活しているとだんだんと子供じみていく場合があります。
    食事にカレーがいつ出るかを予想したり、デザートにアイスが出るだけではしゃいじゃったりします。30代40代50代の研究者が仲良くキャッキャッ・ヒーヒー言いながら一緒に筋トレしたり、横に並んで座って新喜劇を視聴しカラカラ笑いあったりします。テレビ相手に突っ込みを入れたり、誰々の夜食を横取りしようと話し合ったりしちゃいます(もちろん実行はしませんが)。でも観測の時間になれば、ちゃんとみんなキリっとビシッと仕事しています。

  • 今日も1日頑張った。楽しかった。明日もまた頑張ろー。

2018年8月6日 ゾウクラゲ

  • 喜多村さんからの提供です。本日21時のNORPACネットで150メートルの深さからゾウクラゲが採取されました。「ゾウクラゲ」と名付けた人の気持ちがよくわかります。ご覧ください。本当にゾウのような顔(?)をしています。つぶらな瞳に長い鼻(ではなくて口)。名前はクラゲですが、軟体動物で巻貝の仲間です。体長は5、6センチメートルほどです。とても愛らしい表情をしています。

全身。顕微鏡サイズより大きいので接写して撮るしかない。撮影者の腕が悪くてこのかわいさを伝えられないのがもどかしい
鼻(口です)を曲げたところ
顔のアップ
こっちを見てる?

2018年8月6日 微生物の観測

  • こんにちは。今日のブログ当番です。だいぶ南まで下ってきました。海は青く、空には薄い雲がかかっています。ちょうど台風を交わしたところで少しうねりがあります。海洋生命理工学研究開発センター横川です。

  • この航海で私は微生物の観測を行っています。微生物の中でもとくに細菌に注目して研究しています。細菌は海水1mL中に10000〜100000細胞程度の密度で、海のどこにでも存在します。とても小さな生物(0.2から2マイクロメートル程度の大きさの単細胞生物)ですが、この細菌が海洋生態系でもっとも高い生物量を示します。細菌は海洋環境に適応し、うまく生育環境を拡げた生物です。私は海洋細菌の5W1H(どの細菌が、どの物質を、いつ、どこで、どんな目的で、どのように利用するか)を調べています。これがわかると細菌が海洋環境の中でどのように生育しているのか、海洋生態系においてどのような働きをしているのかが分かります。海洋細菌の研究の難しさは、現場で活動している細菌の99%以上が単離培養できないことです。他の大型生物と違って、陸に持ち帰って実験室で培養(飼育)・観察・実験することができません。いかに細菌の生き様を船上で明らかにするかは研究者の腕次第です。海洋の微生物に興味のある方は、「微生物海洋学」、「microbial oceanography」等をキーワードに検索してみて下さい。あなたの知らなかった面白い生物の世界が広がっているかもしれません。

  • 航海も残すところあと数日です。無事に観測を終了し、チュークに寄港することができそうです。本航に携わる全ての人に感謝します。ありがとうございます。

2018年8月5日 あと4日

  • RCGCの重光です。

  • 今日は、0時ごろからCTDで基礎生産測定用の海水を採取し、サンプリングが4時ごろに終了しました。その後、現場濾過等を行い、朝食前には甲板での作業が終了しました。朝食後、採取したサンプルの処理・分析や、これまで採取したサンプルの処理等で1日が終わっていきました。あと実質4日の航海ですが、実りある航海となるよう最後まで気をぬかずみなさんが頑張っています。

2018年8月3日 夕暮れのS3

  • 海上にいると、天気の変化を目で見て感じることができます。雨が降っているところだけ、水平線が太くなり、色が変わります。そして、雨が降ってきたかと思うと、あっという間に雨が止んで、青空が広がることもあります。

船首の右側は雨が降っています
雲底が低く平らになっています。スウィフトは、こういう雲を見て空中都市を想像したのでしょうか
  • 12時半にS3に到着しました。CTD観測(Deep)を行い、夕食後、夕暮れの海でVMPSとNORPACネットでのプランクトン採取を行いました。21時、本船はS3を離脱しました。小観測点もあと残り半分です。それでは。

VMPSの待ち時間。日が沈み始めました。海で見る夕暮れは何度見ても飽きません
夕暮れ時のTwin-NORPACネット。
雲を染める夕日

2018年8月3日 大気組成観測、絶賛実施中

  • RCGCの竹谷です。
    研究航海でのみらい乗船は2年ぶりです。前回(2016)前々回(2014)は両方とも北極航海に乗船し、洋上の大気組成(ガスやエアロゾル)の観測をしてきました。
    今回初めて、北極航海以外の研究航海に参加しています。寒くないだろうと思ってあまり防寒対策をしなかったせいでK2(47N,160E)では気温10度前後、、、持ってきた服を何枚も着込んで対応しました。準備は周到にすべきでした。。。北極航海では、特に、ブラックカーボン(BC)と呼ばれる黒色をした大気中に浮遊する粒子の北極海上の濃度把握を中心に観測を実施してきました。今回もブラックカーボンを測定していますが、主目的は貧栄養海域における大気物質の役割を把握することです。

  • 本ブログで、木村さんに自分の観測についてすでに紹介されてしまっていますが、簡単に。大気中のPM2.5や雨の中に含まれる植物プランクトンにとって栄養となる物質がどれほどあるかを外洋域で実測したいと思っています。特に、日本の南方沖では貧栄養海域なので、数値計算によって、大気からの栄養塩の供給が重要であるということが示されました。が、実測値による裏付けがあまりなく、その情報が必要です。
    加えて、洋上のオゾンや一酸化炭素、BCなどの大気微量物質のオンライン計測から現場の大気の状況を確認します。

  • というわけで、毎日、船の最上階にある汎用観測室で観測しています。強風の日も雨の日も晴れの日もフィルターによるPM2.5の採取を出港後から下船前まで絶賛実施中です。揺れが大きい日はフィルター交換作業(ピンセットを使用)はつらいです。
    装置の音がうるさいので、BGM(主にミスチル)を爆音で流し、作業しています。また、雨乞いを行ったあと、ドップラーレーダー(雨雲の接近がわかる)とにらめっこしながら、雨も採取しています。サンプリングには、木村さん、RCGCの本多さん、日海事の大山さん・村上さんのサポートにより実施させていただいています(いつも最上階に呼び出してすみません。。。)。本日8/3、迫りくる雨雲からこれでもかという量(30-60mm/h !!)の雨と遭遇しました。採取した試料はMWJの横川さん・林さんにより栄養塩分析にかけられ、濃度の把握を行っています。面白い結果が得られることを願っています。

汎用観測室内で壁の外からチューブで引き込んだ大気を装置に導入し、オゾン、一酸化炭素、ブラックカーボンのオンライン計測をしています。今のところ、問題なく動いて、ホッとしています。
撮影:竹谷
みらいに迫りくる雨雲(あと10分!)
撮影:木村
MWJの横川さん・林さん、分析よろしくお願いします!
撮影:竹谷

2018年8月2日 今日のことば2

  • 船上では、「おもて」は船首、「とも(艫)」は船尾を意味します。船首を左に向ける舵の取り方は「取り舵」、船首を右に向ける舵の取り方は「面舵」といいます。
    船首に向かって左を左舷、船首に向かって右を右舷というのは皆様もご存知のことと思います。船の左舷は英語で”port”というのに対し、右舷は”starboard”といいます。昔は、港に停泊する際に船の左舷を桟橋につけたのでしょうか。右舷から星を見たのでしょうか。想像がふくらみます。ですが、辞書によると、”starboad”という語は、舵をとるためのオールを意味する”star-“(「舵をとる」は英語で”steer”)と船の横腹を意味する”-bord”とで構成された語とのことで、昔の帆船は右舷に突き出たオールで舵をとったことに由来するようです。

  • 同室の皆さんのご協力のおかげで、「今日のことば」2をお送りすることができました。ありがとうございます。

Aフレームクレーン。「振り込み」、「振り出し」、「停止」、「格納」の4種類の合 図で動かします

2018年8月2日 深夜から早朝のS2

  • 日付が変わって8月2日の深夜2時30分。次なる小観測点S2に到着しました。S2では、CTD(middle)、FRRF、VMPS、CTD(光)を行います。最初は暗号のようだった観測メニューにも慣れて、甲板のどの場所で何の観測を行うのか、どれくらい時間がかかるのかがわかるようになってきました。

深夜のCTD。海面から上がってきたところ。その1
その2
その3
  • 蛍光光度計(FRRF)では、植物プランクトンの光合成活性を調べています。センサーを海中0メートルから150メートルの深さまで下げて、植物プランクトンに目では見えない光を当てることで光合成による蛍光の強弱を測定し数値化するそうです。日の出ている時間帯に行う測定では植物プランクトンの光合成速度を、日が沈んでからの時間帯に行う測定では植物プランクトンの光合成の潜在能力を知るために、観測点によって異なる時間に海中に装置を入れています。

藤木さんとFRRF
  • 日が沈んでからの観測作業を行うときは、「みらい」からライトが海面に照射されます。そうすると、魚やイカが船の近くまで寄ってくることがあります。この夜のひととき、喜多村さんのお話を聞きながら、ライトで照らされた海を眺める時間が好きです。乗船してからの喜多村さんはひげを伸ばしているのですが、船の上では眼鏡とそのひげが本当によく似合っていて、甲板での立ち姿がとても頼もしく見えます。

  • ここS2では、ちょっとの間、海を眺めているだけでもトビウオの飛行を見ることができます。トビウオを見たのはKEO以来です。トビウオは、水面から羽のようなひれを開いて飛び出してきたかと思うと、放物線ではなく、水面に対して平行な直線の軌道を飛行します。なかには、「みらい」に向かって飛んできて、船にぶつかってしまうトビウオも。気絶してしまったのか、船にぶつかったトビウオは波間をゆらゆらと漂って流されていきました。

  • 9時。レーダーを見ながら竹谷さんが「もうすぐ雨が降ってきます」と。海の上をこちらに迫ってくる雨の境界を見ることができました。数十秒後には、船上にもぽつぽつと雨が降ってきました。降っている時間は短いものの、毎日のように雨が降っているように思います。ここでの観測を終え、本船はS2を離脱します。

  • ここまで私の拙い文章でお送りしてきた本航海日誌。私だけでは「みらい」に乗船している研究者の皆さんの研究内容や研究にまつわるエピソード、乗船中の過ごし方などをなかなかお伝えできないので、明日からは「みらい」に乗船しているJAMSTECの研究者の方に日替わりで記事の執筆を依頼しています。乞うご期待。それでは。

2018年8月1日 向かい風

  • 今日から8月です。今日は、朝からぐわんぐわんと非常によく揺れています。もし、これが航海の序盤だったら、船酔いで起き上がれなかったかもしれません。今では、歩きながら揺れを楽しめるくらいに体が慣れてきました。いすに座っていてもふわっと体が浮いたかと思うと、次の瞬間には右に傾いたり、左に傾いたり。かと思うと、いすにぎゅっと沈み込むように感じたりします。揺れに合わせて廊下を蛇行し、不規則なリズムで階段を上り下り。ラム酒を片手に歩くジャック・スパロウのように。

  • この揺れは、ちょうど今、船が向かい風のなかを走っていることによるものだそうです。東に高気圧、西に低気圧があり、「みらい」はその谷間にいます。ブリッジの上に上がると、風の強さを肌身で体感することができます。今朝ブリッジの上に上がった時の相対風速(?)(Relative Wind)は、毎秒20メートル前後。油断すると体が風に流されそうになりました。

    波が船に当たると、「ドンッ」と音が響きます。慣れないうちは、音がするたびに何か物が落ちたのかと驚いていましたが、今ではもう気にならなくなりました。ですが、ひどい時化のときの揺れはこんなものじゃないそうです。ほんの一瞬だけでよいので、激しい揺れも味わってみたいです(後悔するかもしれませんが…)。

  • 昼食を食べたあと、小一時間ほどベッドで寝てしまいました。起きたとき、「あれ?ここはどこ?なんで船に乗っているんだっけ…」と、夢から現実に帰ってくるのに時間がかかりました。疲れているのかな。次なる観測点S2に到着するのは、深夜2時頃の予定です。それでは。

2018年7月31日 海洋の科学的調査

  • 食後や回航中で作業がないときなどは、同室の重光雅仁さん、矢吹彬憲さん、横川太一さんと私の4人で共用スペースのソファーに座って、テレビを見ながらああだこうだと談笑しています。テレビでは、船内情報(船の現在地、船速、気温、降雨量、波高、右舷クレーンの作業進行状況など)や甲板のカメラ映像などのほか、乗組員の方がセレクトした映画やテレビ番組(録画)を見ることができます。私は経験がないのですが、もしかするとシェアハウスでの生活に近いのでしょうか。「職場」まで同じ分、シェアハウスより親密度は高いかもしれません。

  • 先日も4人でテレビを見ていたら、「みらい」での観測航海を取材した番組が流れていました。映っているのが知っている船内、というよりも歩いてすぐそこの場所なものですから、テレビ番組なのに現実感があり過ぎです。内容は、矢吹さんと同じグループの藤原義弘さんが首席研究員を務める観測航海にテレビ番組のカメラとディレクターが同乗し、藤原さんにインタヴューしながら、「アリューシャン・マジック」の謎を追うというものでした。アリューシャン・マジックというのは、アリューシャン列島沿岸の海域で見られる、海鳥群れとクジラが同時に同じ海域に現れる現象のことを指すようです(この番組では「ミズナギドリとクジラの狂奏」と表現していました)。同じ番組を見ていても、4人それぞれ見るポイントが違います。矢吹さんが解説をしてくださり、重光さんと横川さんがそれぞれの専門分野の観点からの疑問を投げかけるという、とても貴重な時間でした。私はというと、見ること聞くことが新鮮なことばかりで、楽しく皆さんのお話を聞かせていただきました。

  • ここで、私の専門分野である「国際法学」の観点からも、本航海とアリューシャン列島沿岸海域での航海について簡単に整理してみたいと思います。

  • 国際法のなかでも海に関する一群の法原則および法規制のことを海洋法といいます。海洋法を構成する条約には、二国間のものもあれば、多数国間のものもあります。国連海洋法条約(UNCLOS)という条約について聞いたことがあるでしょうか?UNCLOSというのは、1973年から国連で開催された海洋法会議の結果、1982年に採択され、1994年に発効した多数国間条約(現在の当事国数は167+EU)です。海洋法を法典化するとともに、伝統的な制度に加えて新たな制度を構築しました。海洋法において非常に重要な条約で、「海の基本法」といわれることもあります。このUNCLOS第13部(第238条から第265条)は、「海洋の科学的調査」について規定しています。

  • 本航海 Leg.1の観測点は、日本の排他的経済水域内であるS4を除き、すべて公海上です。公海上では、公海自由の原則に基づき、どの国でも科学的調査を行うことができます(第87条1項f)。S4は日本の排他的経済水域内ですので、日本は科学的調査を行う権利を有しています(第56条1項bのii)。

    それに対して、藤原さんのアリューシャン列島沿岸海域での航海の法的根拠は、どこで観測作業を行ったかで、場合を分けて検討する必要があります。

    (1)調査海域がアメリカの排他的経済水域内であった場合。沿岸国であるアメリカは、自国の「排他的経済水域及び大陸棚における海洋の科学的調査を規制し、許可し及び実施する権利を有」しています(第246条1項)(ただし、アメリカはUNCLOSの当事国ではありませんので、UNCLOS上の権利を有しているとはいえません。ここではこの点については検討せず、UNCLOSの規定に沿って整理します)。アメリカは、他の国が行う科学的調査であっても、「専ら平和的目的で、かつ、すべての人類の利益のために海洋環境に関する科学的知識を増進させる目的で実施する海洋の科学的調査の計画については、通常の状況においては、同意を与え」なければなりません(同3項)。ここでいう「通常の状況」とは、科学的調査の研究内容についてではなく、科学的調査を行う国と沿岸国との関係や沿岸国の政治情勢を意味しています。

    (2)アメリカの大陸棚を掘削する場合。番組では、マルチプルコアラ―という採泥システムで海底の堆積物を採取していました。アメリカは、科学的調査の「計画が大陸棚の掘削」を伴う場合には、「自国の裁量により同意を与えないことができ」ます(同5項b)。これは、純粋な科学的調査と資源探査のための調査を分けるという考え方に基づく制度設計ですが、果たして両者を明確に区分できるのかは疑問です。なお、領土(基線)から200海里内では排他的経済水域と大陸棚の制度は併存していますが、大陸棚は、200海里を超えて、「領土の自然の延長をたどって大陸縁辺部の外縁に至るまで」認められます(沿岸国は、大陸棚の延伸を国連の大陸棚限界委員会に申請して、承認を得る必要があります)。

    (3)調査海域がアメリカの領海内であった場合。アメリカの領海内で科学的調査を行うためには、沿岸国であるアメリカの「明示の同意」が必要です。排他的経済水域の場合とは異なり、アメリカは、「通常の状況」であっても同意を与える義務はありません(第245条)。

    「排他的経済水域」ということばの語感のせいか、他国の排他的経済水域内で科学的調査を行うことは困難であるような印象を受ける方もいらっしゃるかもしれませんが、国際法上は、公海上での科学的調査と法的な根拠が違うだけで、基本的に他国の排他的経済水域内であっても科学的調査を行うことは可能です(沿岸国に対する情報提供、計画の通報などの手続についてもUNCLOS第13部に規定されています)。実際は、沿岸国が、国際法上の権利および義務に基づいて定める国内法の手続に従って、科学的調査を実施することになります。

  • もし何かのご参考になれば幸いです。

2018年7月31日 S1到着

  • 今日は7月最後の日です。
    「みらい」は青い海に帰ってきました。朝の9時。今日も竹谷さんと一緒にブリッジの上に上がります。目の前の空と海が、昨日と今日とでは一変しました。昨日までの霧はどこへやら、青い空と青い海が広がっています。気分もハレバレ。これから「みらい」は、ミクロネシアまで一直線に南下していきます。本航海では、一週間半の間に、亜寒帯の海から亜熱帯の海までを経験することができます。そう考えるとなんと贅沢な船旅でしょうか。

7月30日9:03
7月31日9:07
  • 午前10時にS1に到着しました。K2を離脱してからは、小観測点S1からS6まで6つの定点で観測作業を行います。S1では、CTD(Deep)、VMPSでのプランクトン採取とNORPACネットでのプランクトン採取を行いました。NORPACネットでプランクトン採取を行うのは創価大学チーム。プランクトンのなかでも、海のなかが暗くなると鉛直方向に上がってくるものを採取しようとしています。現在19時。日は傾いていますが、まだあたりはかなり明るいですよ?いえいえ、海の上は明るくても、海のなかに入る光の量は、日が傾き始めるとともに減っています。ですので、夕日が美しいこの時間、もう海のなかはずいぶん暗くなっていることでしょう。

「みらい」の青いAフレームクレーンが青い空に映えます
後部甲板にVMPSがスタンバイ。今日もよろしくお願いします
KEOとK2に続き、ここでも大活躍。ネットが割けてしまうというトラブルもありました…
創価大学チームの戸田先生と名取則明さんの師弟コンビ。プランクトンはしっかり採れたでしょうか?
ウインチと乗組員さん。作業はいつも正確かつ安全です。本当にありがとうございます
日が沈むのを見るのはKEO以来。太陽が水平線に沈む瞬間に見えるというグリーン・フラッシュを見てみたい

2018年7月30日 小休止

  • 昨晩K2を離脱した本船は、南南西に向けて航行中です。現在、北緯44度50分東経159度30分あたり。K2に比べると、外気温が一気に4度も上昇しました。先程、今朝の大気観測のためにデッキの上に上がったところ、生暖かい風が吹いていました。

  • 本航海も折り返し。出港してから一週間と半分がたちました。「みらい」乗船中の研究者の皆さんは、K2での作業を無事にすべて完了し、一様に少しお疲れのようです。次の小観測点であるS1に着くのは、明日の午後。今日は、束の間の休息といったところでしょうか。私は、今日一日、本でも読みながらゆっくり過ごす予定です。それでは。

2018年7月29日 K2の5日目 -係留系の再設置-

  • 7月29日午前8時。KEOのときと同じく、「ゼロ災でいこう!よし!」の掛け声とともにここK2での係留系の再設置作業が始まりました。

  • 「みらい」はK2からかなり離れた地点にいます。ここから設置場所の座標に向かって船を進めながら、係留系の頭から順に海に投入します。気温は10度ほど。動いていないとどんどん体が冷えてきます。乗組員、マリンワークの技術員、研究者の皆さんが手際よく作業をこなしていくため、なかなかどこでお手伝いすればよいのかがわからず、私は、作業の様子の写真を撮っていました。お昼前にはリリーサーの投下まで進みました。ここから、設置ポイントまで船尾からずっとロープで繋がっている係留系を曳航しながら移動です。昼食後、2.4トンのおもりを投下しました。おもりの着底を確認したのは15時過ぎでした。実に7時間以上に及ぶ係留系の再設置作業は無事 に完了しました。

  • 日の入り後、VMPSとNORPACネットでのプランクトン採取を行い、22時半には、5日間過ごしたK2を離脱しました。霧の立ち込めるK2に着いたときには、観測作業ができないこともあるのだろうかと心配していたのですが、終わってみれば、すべての観測作業を実施することができました。K2での観測作業についての記事が全体的に淡泊なものになってしまい申し訳ありません。そんなに厚着するほどの気温ではなく、十分我慢できる寒さだったのですが、じわじわと体力を奪う寒さだったように思います。

係留系再設置作業開始。自動昇降観測ブイを投下。ミズナギドリさん、狙ってつついたりしないでくださいね
次は水中ウインチを
次は自動採水器(RAS)を
係留系設置作業全景(後部操舵室より)
次は多層流向流速計(ADCP)を
セジメントトラップを海に
投下!
ガラス玉ガラス玉ガラス玉…
リリーサーを海に
調査指揮室にて見守ります

2018年7月28日 K2の4日目 -MOGの回収-

  • こんばんは。今日は、無事にMOGを2台とも回収できました。MOGからの位置情報データをたよりに船橋から研究者や乗組員の皆さんが、双眼鏡や目視でMOG探し。私も目視でMOG探しに参加。なかなか発見できません。「見えました!」という声とともに動き出す船内。霧で視界が悪く、波も高いなか、作業艇がMOGに向けて発進します。見事に引き上げることができました。

  • これまでのところ、K2での観測は順調に進んでいます。明日のミッションは係留系の再設置です。係留系が再設置できれば、K2にお別れを告げ、「みらい」は一直線に南下します。日本には台風が上陸しそうとのこと。心配です。

霧のなか作業艇がMOGの回収に向かいます
MOGを捕まえた瞬間
おかえりなさい。しっかりデータは取れているでしょうか?

2018年7月28日 クリオネ

  • 木元さんからの提供です。昨日のプランクトンネットでクリオネが採れました。
    2cmくらいの大きさのものが2匹と小さなものがたくさん。北極にはもっと大きなクリオネもいるとか。クリオネは、冷蔵庫の温度で1年間ほど飼育できるそうです。クリオネの餌は、ミジンウキマイマイです(ミジンウキマイマイ以外のものを食べているところは、まだ確認されていないとのこと。偏食?)。何も食べなくても一年間くらいなら生きているそうですよ。お水は替えてあげてくださいね。

流氷の天使?クリオネ
はばたいている様子が伝わるでしょうか?
小さいクリオネもたくさん(写りが悪くて申し訳ありません…)

2018年7月27日 K2の3日目 -プランクトン大漁-

  • 今日は朝から海がうねっていて、歩いているとゆーらゆら。船は8の字走行をしているそうです。念のため酔い止めを飲みました。
    午前中は、後部甲板で現場ろ過です。一つ一つがかなり重い現場ろ過装置が8台。
    ですが、「みらい」の甲板の昇降機で上げ下げが可能なので、運ぶ距離は短めです。
    甲板が開いて昇降機が出てくるところはメカニック好きの心をくすぐるのではないでしょうか。皆さん、「サンダーバード」の何号が好きかの話題で盛り上がっていました。

甲板が開き…
現場ろ過装置を格納庫に降ろします
  • 午後は、プランクトン採取です。今回の航海では3種類のネットを使用しています。VMPSとNRPACネットは以前の記事で紹介いたしました。本日は、ORIネットを使用します。
    ORIネット:東京大学の海洋研究所(現大気海洋研究所)で開発されたプランクトンネット。とても大きく、直径1.6メートルもあります。船速2 ノットほどで走行しながら巻上げを行います。

ORIネット
  • このORIネットはかなり大きくてインパクトがあります。私がこのネットの枠を初めて見たのは、7月13日に横須賀で本航海の荷物を積み込むお手伝いをしたときでした。今日は、私も雨合羽を上下着用して喜多村さんに教えていただきながら作業に参加しました。上がってきたサンプル瓶を見てびっくり。オキアミやプランクトンがぎっしり詰まっていて、スムージーのような見た目になっていました。ORIネットを2回行ったあとは、NORPACネットでのプランクトン採取も行いました。昼と夜のサンプルを採るために、22時からまたORIネットを2回行いました。作業風景の写真がなくて申し訳ありません…。

NORPACネットを投下中の海を見つめる木元さん
  • 夜、明りの落ちた甲板に出てみると、「みらい」の後部操舵室の上あたりから緑色のレーザー光線が直上に向かって伸びていました。大気中の粒子に光を照射してその反射を観測しているそうです。

緑色のレーザー光線

2018年7月26日 K2の2日目 -係留系の回収-

  • 航海中は、首席研究員の藤木さんから観測日の前日に次の日の観測作業の予定がメールにて送られてきます。今朝は本日の予定変更の連絡メールが届きました。

    「今朝6時の時点で、濃霧のため、係留系の切離が出来ない状況です。このため、本日の予定を変更します。しかし、霧が晴れ海況が良くなった場合は、予定を再度変更し、係留系の回収作業を行ないますので、回収の準備はお願いいたします。
       7月26日(K2_2日目)(時間固定なし)
       8:00 CTD(middle,POM)
       VMPS
       CTD(センサー校正, 250m)ゆっくり昇降2回
       (13:00より3時間おきにバケツ採水)」

  • 「みらい」後部の海には、ミズナギドリとコアホウドリが1羽、2羽、3羽…。10羽ほどの海鳥が海面を遊泳しています。船を波除けに使っているのでしょうか。
    10時。K2で最初のVMPSでのプランクトン採取を行いました。今回のVMPSでのプランクトン採取は、筑波大学チームの担当ですが、プランクトン採取を行う研究者の皆さんが協力して作業に当たります。JAMSTECが担当のときも、筑波大学チームと創価大学チームが強力にサポートしてくれています。船上での観測はどれも、乗組員、技術員、研究者の協同作業です。プランクトンネットが上がってくるまでの「待ち時 間」。例のごとく、JAMSTECで同じユニットの喜多村稔さんや木元克典さんを捕まえては質問攻めにしています。毎回私のような門外漢に丁寧に説明していただき、本当にありがとうございます。そうこうしているうちにプランクトンネットが上がってきました。サンプル瓶のなかには、KEOのときに比べると、明らかに多くの、そして、大きなプランクトンが入っています。

コアホウドリ。ゆうゆうと浮かんでいるように見えて、よく見ると水中で絶え間なく足を動かして泳いでいます
VMPSでプランクトン採取
木元さんと筑波大学チーム
大量のカイアシ類。1センチメートルほどの大きさ
  • 15時。霧が少し薄くなって視界が開けたところを見計らって、係留系の回収作業が始まりました。今回は、昨年7月21日に、「みらい」での航海KH17-05で設置した係留系を回収します。ここK2には、海底のおもりからまっすぐ海面に向かって、KEOより はるかに長い、5,000メートルもの長さの係留系が立っています。5,000メートルの間には、各種の観測機器やたくさんのガラス玉がワイヤーロープで数珠つなぎになっています。セジメントトラップは、1,000メートルと4,800メートルの深度に設置されています。5,000メートルもの係留系です。そのロープの長さたるや…。上がってきたロープは見事に絡まっていました。

  • 「はい。そっちからくぐって」「そこまたいで」「こっちからとおして」 研究者、マリンワークの技術員の皆さんが協力して、手だけではなく全身を使ってロープをほどいていきます。傍目には遊んでいるように見えなくもない光景ですが、もちろん皆さん真剣です。あんなに絡まっていたロープがすっきりと束ねられていきます。係留系の回収作業が完了したときには、もう21時を過ぎていました。実に6時間に及ぶ作業でした。本日の作業を無事に終え、「みらい」の甲板の電気が落とされました。おやすみなさい。

作業艇が水中ウインチを確保
水中ウインチから順に係留系を引き上げていきます。作業を見守る(?)ミズナギドリたち(右)
無事に回収しましたよ!
1つ目のセジメントトラップを回収
2つ目のセジメントトラップは逆さになって上がってきました。たまにあることだそうです。もうすでにあたりは真っ暗

2018年7月25日 K2到着 -MOGの投入-

  • 7月25日12時。ステーション(観測点をそう呼ぶことがあるようです)K2に到着しました。以前は、K1、K2、K3の3つの観測点で観測を行っていたそうです。今でも継続的に定点観測を行っているのは、K2のみ。研究者の皆さんからK2ではいつも霧に包 まれると聞いていたのですが、本当にあたり一面に霧が立ちこめています。霧の向こうから海賊船でも出てきそう…という感想は、あまりに幼稚すぎるので口には出しませんでした(ここに書いてしまっては意味がない?)。


  • K2での観測作業は、CTD観測(Deep)から始まりました。同じCTDでもKEOとK2とでは海の色がまったく違うため、灰色の空の下、海のなかから上がってくるCTDは心なしか寒そうに見えます。KEOでは一面鮮やかな青色だった海が、ここK2ではくすんだ緑色をしています。ずっと見ていると陰鬱な気分になりそうな色ですが、青く透明度の高い海ほど生き物が少なく貧栄養の海なのです。海が濃く見えるということは、それだけ植物プランクトンが多く存在している証。豊富な餌を求めてか、KEOよりもたくさんの鳥が飛んでいます。

ミズナギドリ
  • CTDには筒状の12Lニスキン採水器が36本取り付けられており、任意の深度(最大36層)で採水を行うことができます。船に揚収された後は、研究者とマリンワークの技術員の皆さんがCTD室に集まり、採水器の海水をいくつもの種類のボトルやサンプル 瓶に小分けする作業が始まります。海水の成分によって採取の方法が違うそうです。
    採水項目ごとの各種ボトルやサンプル瓶が入ったかごがずらりと並び、それぞれに海水試料が詰められていきます。

海のなかから上がってくるCTD
採水作業
  • 後部甲板では、次の観測作業の準備が始まっていました。基本的に甲板上では、右舷のウインチを動かしながら後部のAフレームクレーンも動かすなど、大きな作業が複数同時に行われることはありません。作業は一つずつ行われます。
    ここK2では、JAMSTECの海洋工学センターが開発した多目的観測グライダーで、通称「MOG(モグ)(Multipurpose Observational Glider)」を海中に投入します。この装置は、自動で海のなかを航行し、水温、塩分、溶存酸素、植物プランクトンの活性などのデータを集めてきてくれるという優れものです。オレンジ色に塗装されているのは、海上での発見率向上のためだそうです。海洋観測で使用するブイや機器は、黄色やオレンジ色などの鮮やかな色をしていることが多いように思います。
    今回は2台のMOGを投入しました。4日目の7月28日に回収するまで、しばしの別れです。

K2の灰色の背景にMOGのオレンジ色が一際鮮やかに映える
ARGOフロートも投入しました
  • 観測作業は人間の生活リズムとは関係なく続きます。そこで、研究者や技術員の皆さんは作業の合間を縫って、各々食事をとったり、仮眠をとったりします。食事タイムに作業が重なっている場合には、予め申請して、食事の取り置きをお願いすることもできます。
    19時。NORPACネットでのプランクトン採取を行いました。プランクトン採取では、ネットを引き上げる際に水に濡れることがあるので雨合羽を着用します。KEOではサウナスーツのようだった雨合羽もここK2では防寒着になります。本日の気温は9度ほど。会う人会う人に「寒いですね」と言ってしまいます。

Twin-NORPACネット
遠目でもプランクトンが採れているのがわかります。サンプル瓶が赤い!

2018年7月24日 居室

  • 私は、今、自分の居室にいます。居室についてお伝えするのを忘れていました。私の居室は、「第2甲板」にあります。「みらい」の船首側は7層(?)になっており、上から、操舵室や調査指揮室のあるフロア、船長室などのあるフロア、研究員・船員 の居室があるフロア、大会議室および小会議室などのあるフロア、研究員・船員の居室のほかに食堂などがある第2甲板、研究員・船員の居室がある第3甲板、娯楽室や運動室がある第4甲板で構成されています。

  • 研究員の居室にはいくつかのバリエーションがあり、私の居室は、4名で一部屋を利用するタイプ。共有スペースが真ん中にあり、共有スペースの左右に個室が2部屋ずつあります。私の個室の番号は「13」です。共有スペースには、ソファー、テレビ、冷蔵庫があります。

  • ゆーらゆーらと揺れるなか、パソコンの画面上で論文を読むのは難しいです。紙に印刷したものならなんとか読めますが、船酔いのせいか、最近勉強不足だからか、論文の内容が頭に入ってきません。あきらめて少し体を動かすことにします。それでは。

乗船日の机の上。今はもっと散らかっていて、とてもお見せできません…

2018年7月23日 今日のことば1

  • 2があるかどうかはわからない、「今日のことば」をお送りいたします。

  • 乗組員には、船長以下、一等航海士、次席一等航海士、二等航海士、三等航海士、機関長、一等機関士、観測士、通信士、甲板長、司厨長…といった職名があります。
    一等航海士を「チョッサー」、甲板長を「ボースン」と呼びます。「チョッサー」は、”chief officer”、 「ボースン」は、”boat swain”が短くなったものだそうです。
    恥ずかしながら、私は知りませんでした。皆様はご存知でしたでしょうか?

2018年7月23日 K2目指して回航中

  • 7月23日14時。本日は、「みらい」船内ツアーの日です。ブリッジに集合して、操舵室や無線室、各実験室、また、普段は入ることのできないエンジン・ルームなどを見学しました。

  • 16時からは、洋上セミナーが開催されました。観測作業で大変お世話になっている乗組員の皆様、マリンワークの皆様に、研究者が何を研究しているのかをご紹介するのが本セミナーの趣旨です。今回は、3件の発表です。数日前のこと、本航海 首席研究員の藤木さんが、「発表したい人はいねーがー」といいながら(嘘です。すみません)、船内でセミナーの発表者をリクルートしていました。3名の研究者が捕獲(?)されたようです。

  • 矢﨑裕規さん(筑波大学生命環境系 ポスドク研究員)
    「珍種を求めて辺境へ:真核生物の進化・多様性の解明に向けて」

    白鳥峻志さん(JAMSTEC JSPS外来研究員)
    「新規微生物の探索から真核生物の進化を明らかにする」

    戸田龍樹先生(創価大学工学研究科長・教授)
    「植物プランクトンの大量培養技術-循環型社会のキーテクノロジーとして-」

  • 洋上セミナーの後は、後部甲板にて恒例の(?)BBQ。航海の終わりに打ち上げとして行われることが多いそうですが、今回は、航海の序盤に実施。あの暑いKEOを離脱したのは昨日だというのに、船上はもう肌寒いです。

  • 本日も+1時間の時刻改正です(昨日に続き時刻改正の瞬間を動画におさめるのを忘れました…)。これで、日本とは2時間の時差。それでは。

船内ツアー。操舵室にて。
金毘羅様。航海の安全を祈願
洋上セミナーの様子(発表者は矢崎さん)
BBQの様子

2018年7月22日 大気観測

  • 今回の航海では、様々な分野の研究者が「みらい」の各所で観測や分析を行っています。海について知るためには、海のなかのことだけではなく、大気を調べることも重要です。ここ汎用観測室では、JAMSTECの竹谷文一さんが、大気の観測をしていま す(なんと一人で!)。この部屋には、パソコンやモニターが何台もあり、常時、様々なデータの計測値が画面に表示されています。

  • 船の進んでいる方向、風向や風速、雨雲の動きなどを気にしながら、時間ごとの雨水のサンプリングを行っています。大気を観測することで、海のどのようなことがわかるのでしょうか?海の栄養は、ただ海のなかで循環しているだけではなく、陸由来 の栄養が、大気中の粒子に付着して、海まで運ばれているかもしれないそうです。最近よく耳にするようになったPM2.5というのは粒子の大きさを表していて、粒径2.5μm(マイクロメートル:1ミリメートルの1,000分の1)以下の粒子物質のことです。
    大気中のPM2.5は、人間にとって(特に呼吸器系や循環器系疾患のある方には)、注意が必要な物質ですが、それに含まれる窒素化合物が、植物プランクトンなどの海の生き物にとって栄養となることもあります。

  • 毎日、フィルターやサンプラーを交換するために、ブリッジの上、つまり、船の屋上に上がらなければなりません。一人で上がって、万が一そこで何かトラブルが発生した場合、船内の人が事態に気づくのが遅れてしまいます。なので、ブリッジの上に上がるときは、二人で行動します。ブリッジは船内でも高い場所にあるため、ほかの部屋に比べてかなり揺れます。ここで一人黙々と作業をするのは、本当に大変なことだと思います。竹谷さん、私でよければ、ほかの作業がない限り、交換のお手伝いにうかがいます。

汎用観測室。ここで大気観測を行っています
毎日定時にフィルターを交換します
ほとんど無風(船上では、船の速度と追い風の強さが同じになると無風状態になるとのこと)
「みらい」が誇るドップラーレーダー。雨や風を計測しています

2018年7月21日 KEO後半

  • 7月21日午前8時。後部甲板にて、「ゼロ災でいこう!よし!」の掛け声とともに係留系の再設置作業が始まりました。

  • 船をゆっくり前進させながら、係留系の頭から順に海に投下していきます。まずは、トップ・ブイとガラス玉を後部甲板に並べます。Aフレームクレーンでトップ・ブイを持ち上げ、海へゆっくりと投下。次に数珠繋ぎになったガラス玉をAフレームクレーンで持ち上げ、これも投下。「みらい」の後部から、ガラス玉の線が伸びています。甲板では、研究者とマリンワークの皆さんがトラップの準備。既に投入したガラス玉からのロープをトラップに繋ぎ、いよいよトラップを投下します。トラップを無事に投下。
    すぐに沈んで見えなくなりました。ここで、またもや長い長いガラス玉の列を甲板に準備。さんさんと降り注ぐ日光の下、乗組員の皆さん、マリンワークの皆さん、研究者が息を合わせて、次々と海に係留系を投下していきます。もう最初に投下したトップ・ブイは、海のはるか向こう。さらにガラス玉の列を追加したあとは、係留系を回収するためのリリーサーを投下します。リリーサーまで無事に投下完了。最後に 投下するおもりは、線路のレールの束です。その瞬間が迫ります。皆が見つめるなか、Aフレームクレーンがおもりを持ち上げ、ゆっくりと海の上へ運びます。しっかり水面付近まで下げてからおもりを離します。その重さの割にはあっけなく、おもりは海に飲まれていきました。何事もなかったかのように、海は穏やかです。

  • おもりの投入後は、後部甲板から場所を移し、操船甲板の調査指揮室にて係留系の着底まで見守ります。皆さん、少しほっとした表情です。準備中や作業の合間には、本多さんをはじめ、ベテラン研究者の皆さんから、これまでに経験した航海観測のこ とや、観測機器の変遷など、とても貴重なお話を教えていただいています。係留系、CTD、プランクトン採取といったこれまでの観測を通じて、どの作業にも「待ち時間」があることがわかりました。皆で待っているこの時間も航海観測の醍醐味の一つなのだと思います。

  • 無事に係留系からの信号を確認することができました。こちらから信号を送り、回収に来るときまで眠らせます。1年後にまた起こしにくるので、それまでは、おやすみなさい。サンプルの採取をよろしくお願いします。

  • 係留系の再設置後、CTDとプランクトン採取を行い、これでKEOでの観測作業は、一つのキャンセルもなく、すべて完了しました。本日、「みらい」は、観測点KEOを離脱し、次なる観測点K2を目指します。それでは。

トップ・ブイを海に
ガラス玉を次々と海に
セジメントトラップを海に
投下!
リリーサーを海に
あとはおもりを沈めるだけ
調査指揮室にて見守ります

2018年7月20日 KEO夜の部

  • 係留系を回収した後、息を吐く間もなく、別の作業が始まります。観測点にいられる限られた時間のなか、研究者の行いたい観測作業の予定がぎっしり詰まっています。観測作業や分析作業は、船上・船内の各所で同時に行われているため、心苦しいのですが、すべての作業の様子をここでご紹介することはできません。まだまだ先の長い航海ですので、これからおいおいご紹介できればと思います。

  • まずは、CTDのDeep。文字通り深いところに沈めます。CTDでどのようなデータが得られるのか、研究者やマリンワークの皆さんが忙しく作業しているときは、なかなか話しかけづらいのですが、航海中には機会を見つけて尋ねてみたいと思います。

  • 海洋観測では、CTDで得られる物理化学的なものに加えて、海のなかにどのような生物が存在しているのかを知ることも重要です。目に見えるものから、目に見えないほど小さいプランクトンまで、編目の非常に細かいプランクトンネットを沈めて採取 します。海の生き物の研究というと、ついつい魚類や海洋哺乳類に目が行きがちですが(私だけではないはず…)、プランクトンについて知ることは、海の生き物の生態を知るために、とても重要なのです。プランクトンは、食物連鎖の底辺で多くの生き物の食料となっています。プランクトンのデータは、海の生き物の生態や分布を教えてくれるとともに、海の酸性化などの変化も教えてくれます。

  • 今回の航海で使用するネットは3種類。
    ここKEOでは、NORPACネットとVMPSでプランクトンの採取を行います。海洋研究者の皆さんには当たり前の名称も、私にとっては初耳のものばかり。毎回、皆さんに一つ一つ教えてもらっています(メモをとり忘れて、何度も尋ねてしまうことも。申し訳ありません…)。
    NORPACネット:NORPACというのは、日本、アメリカとカナダが共同で北太平洋の観測を行ったプロジェクトで標準仕様として定められた規格のネット。今では、日本以外の国ではあまり使われていないそうです。
    VMPS:”Vertical Multiple Plankton Sampler”の略(間違えているかも?)。プランクトンネットが4つ装着されていて、信号を送ることでネットをそれぞれ違うタイミングで開き、そうすることで、深度の違う層ごとにプランクトンを採取できる優れもの。
    もう一種類のORIネットについては、K2にて。

  • なぜ昼だけでなく夜もプランクトンの採取を行うかというと、プランクトンのなかには、夜になって暗くなると海のなかを鉛直方向に上がってくるものがいるからです。
    プランクトン採取は、夜を徹して行われました。海洋観測には、体力も必要です。

夜間のCTD。船から海面にライトを照射しています
VMPSの準備中
いってらっしゃい!
帰ってきました
早朝のバケツ採水。表層の海水をバケツで採取しています。手動!
プランクトンネット。朝日が眩しい

2018年7月20日 KEO前半

  • KEOは、”Kuroshio Extension observatory”の略で、黒潮の延伸にある観測点で す。もともとは、アメリカのNOAAが観測を行っていた観測点とのこと。

  • KEOでの重大ミッションは、係留系の回収と再設置です。今回は、昨年11月16日に、「白鳳丸」での航海KH17-05で設置した係留系を回収します。係留系というのは、各種のセンサーやトラップが一本に繋がったもので、海中の定点観測を行うための仕組みです。海底に沈められたおもりから鉛直方向に機器が数珠繋ぎになっています。今回回収する係留系は、水深5,000mにセジメントトラップが搭載されています。

  • 数珠繋ぎの機器の間には「ガラス玉」がついています。ガラスというと重いように感じるのですが、回収時には、なんとこれが浮力となって係留系が海上に上がってきます。まだまだ航海は序盤ですが、これまで私がお手伝いした作業のなかでは、この「ガラス玉」が一番印象に残っています。まず、その重さ。30kgくらいあるのでしょうか。これが浮くのですから、不思議です。持ち手が付いているわけではないので、怪我をしないように気をつけながら、抱えるように持ちます。ずっしりと重みを感じます。3連に繋がっていたりすると、3人で同時に持ち上げなければいけません。そして、その数。係留系の準備や回収の際に、ボックスパレットという鉄かごから出したりしまったりするのですが、運んでも運んでもなくなりません。出港前の清水港、ここKEOと、暑い中でガラス玉を運んでいると、あっという間に汗だくになります。

  • 係留系の回収は、次のような手順で行います。前回係留系を沈めた点から、少し距離をとり、船から無線で信号を送ります。係留系のリリーサーがその信号を受信すれば、海底のおもりから解放された係留系が浮上してきます。船橋から、海面まで浮上 してきたトップ・ブイを目視で探します。トップ・ブイを見つけたら、作業艇(モーター付きの小型ボート)を出し、トップ・ブイのところまで向かいます。作業艇の乗組員がトップ・ブイにロープを取り付け、あとは、ロープを巻き上げながら係留系を回収します。

  • 日が傾き始めるなか、「みらい」の乗組員、マリンワーク・ジャパンの技術員、そして、研究者が協力して、手際よく係留系を回収していきます。初めて見る作業は、何もかもが新鮮で、あっという間に係留系のおしりのリリーサーまで回収が終わりました。回収が終わる頃には、日も沈み、海の上は真っ暗です。

  • いくつかのガラス玉は破裂していました。どうやら上がってくるときの水圧の変化で弾けてしまうことがあるそうです。通常のガラスが割れて破片が飛び散るのとは異なり、破裂したガラス玉の中身は、白い粉の塊のようになっています。ガラス玉も上がってくるときに、その任務を終えて、気が抜けたのでしょうか。私もこの航海が終わったときに破裂してしまわないよう、適度に息抜きをしないと…。

  • JAMSTECの研究者の本多牧生さん曰く、係留系を回収するときの心境は、子育てに似ていると。初めは、ただ無事に上がってきてくれればそれでいいと念じているのだけれども、無事に回収できたら、今度は、論文になるような良いサンプルが入っていて欲しいと願うようになる、ということだそうです。今回のサンプルはどうでしょうか?

  • さて、これからKEOの長い夜が始まります。

船橋からリリースされた係留系が浮き上がってきたのを確認したら、その場所まで作業艇が走ります
「みらい」の作業艇
回収したガラス玉
無事にトラップを回収
破裂したガラス玉
夜になっても作業は続きます

2018年7月20日 KEO到着

  • おはようございます。揺れているからでしょうか、地震の夢を見ました。船酔いの症状なのか、午前中は眠気に襲われてうつらうつら。頭が船を漕いでいます。

    7月20日15時30分。最初の観測点であるKEOに到着しました。空も海も青いです。

    さて、ここで(もう第3回ですが…)、本航海の概要を確認しておきたいと思います。

  • 本航海は、「持続可能な海洋資源の利活用に資する統合的海洋観測網の構築」プロジェクトのうち、「重点海域(スーパーサイト)整備・展開」を具現化するためのものです。西太平洋に、多種のパラメータを同時・高精度に取得できる係留系「スーパーサイト」を計5点展開し、スーパーサイト「観測網」を構築すること、また、「みらい」定点観測等の強化観測を実施し、現在及び将来のスーパーサイト網観測の更なる最適化の為の解析・研究を実施することを目的としています。要するに、場所を移動しては定点観測を行う航海です。

  • KEOに到着後、早速、CTD(Conductivity / Temperature / Depth)観測が始まりました。
    海の定点での観測といっても、私のような素人には、さっぱり想像がつきません。海洋の研究者は、海の何を調べているのでしょうか?

    海洋観測の基本、CTD観測では、海水の塩分や水温、海水に溶けている二酸化炭素や酸素の濃度、海水中の栄養塩の濃度などのデータを計測することができるそうです。「みらい」の右舷にあるウインチを使って、CTDを海中に投入します。このウインチがよくできていて、たまに少し上下運動しながら深度を調整しつつ、海中深く深く、時には5000メートルまで沈めていきます。

CTD。充実の36本の採水器
右舷のウインチ
いってらっしゃい!

2018年7月19日 出港

  • 「船に乗りたいです。」

    JAMSTECにきたのが2017年4月。そう言い続けていたら、ありがたいことに、念願かない、このたび「みらい」に乗船させていただけることになったわけですが、いざ出港が近づいてくると、ジェットコースターの列に並んでいるような気分です(ジェットコースターには乗りたいのだけど、気分が悪くなったりしないだろうかと心配になる心境)。

    予定が早まり、13時に出港しました。

  • 現在、清水港の第二埠頭にはJAMSTECの「みらい」と「ちきゅう」が並んで停泊しています。「みらい」と「ちきゅう」が並んで停泊しているのは珍しいそうです。「みらい」もかなり大きな船舶なのですが、「ちきゅう」はさらに大きいです。

    「ちきゅう」の横を通り、いよいよ「みらい」は清水港にさよなら。最初の観測点であるKEOを目指して、海を進みます。

  • さて、「外変」手続を経て日本を出国した私は、今、どこの国にいることになるのでしょうか?
    現在「みらい」は日本の「領海」を通航中です。このあと、日本の「排他的経済水域(EEZ)」を通り、KEOはちょうど日本のEEZを出てすぐのところに位置しています。EEZの先は、どこの国の海でもない、「公海」です。船舶は、一定の例外を除いて、公海上では、その船舶が掲げる国旗の国(旗国)の管轄権(立法管轄権、行政管轄権、司法管轄権)に服することになります。旗国以外の国は、公海上の船舶の活動に干渉することはできません。これを「旗国主義」といいます。つまり、「みらい」に乗船して公海を航行している間、「公海」は日本の外ではあるものの、法的には、日本に所在しているのと同じ状態です。もし万が一事件が起こった場合には、日本の法令に従って処理されることになります。このような状態を、昔は「浮かぶ領土」と表現することもありましたが、今日では、旗国が船舶を管理するのがもっとも合理的であるという理由で説明しています。

  • もちろん海の上に国際法上の「線」は見えません。今回の航海で、きっと研究室で本に囲まれているだけでは得ることのできない、海洋の姿に触れることができるはず。

  • 今のところ、船酔いの症状はありません。それでは。

「ちきゅう」の方々が手を振って見送ってくださいました
「みらい」二日目の晩ご飯(一日目の晩ご飯の写真は撮り忘れました…)
みらい甲板から日の入りを見る

2018年7月19日 乗船

  • はじめまして。北極環境変動総合研究センターの木村元と申します。現在、研究員として、JAMSTECの海洋地球研究船「みらい」に乗船しています。今日7月19日からMR18-04 Leg.1の航海ブログをスタートいたします。毎年お届けしているRCGCの航海ブログ。私は、RCGCの所属ではないですが、今回、本航海の様子をお届けできるよう頑張ります。

  • さて、私の研究分野は、JAMSTECでは珍種?の「国際法学」です。国と国の間の約束事(条約、議定書、協定などいろいろな名称があります)や国際的な制度の形成について、日々、研究しています。あれ?そんな「国際法学」の研究者がなぜJAMSTECに?その経緯はさておき、「海の線引き」あるいは「海のルール」について、聞いたことがあるでしょうか?「排他的経済水域」、「大陸棚」、「深海底」などなど、現在、「海」は、国際法に従って管理されているのです。

  • 「国際法の創始者」の一人に数えられるH.グロティウス(1583-1645)。彼の主たる関心は「戦争」のルールにありましたが(『戦争と平和の法』)、彼が青年期に著した本が『自由海論』です。この本のなかで彼は、国は海洋を領有することはできないこと、海洋を自由に航行する権利を有していること、海洋を通じて自由に通商を行うことができることを主張しました(当時は、彼の母国オランダが、世界の海洋に進出していました)。現在に至るまで、「海洋法」は「国際法学」の重要な分野の一つです。ですが、海洋法を学ぶために船に乗ることはありません。今回、○歳にして初めて研究船に乗ります。航海ベテラン?の皆様、どうぞよろしくお願いいたします。

  • 前置きが長くなりました。今回、私が乗船する「みらい」は、海のさまざまなデータを採取することができる観測機器を搭載しており、採取した海水や試料をその場で分析できるラボを備えています。まさに海の上の研究所です。

  • 船上での観測活動、そして、船上での生活はどのようなものなのか、期待と不安を抱きながら「みらい」に乗船したのが昨日。航海士による「船内教育」を受け、顔合わせの後は、船内をぶらり(迷子になりました)。これから、このブログのなかで船内での生活についてもお伝えしたいと思います。

  • 居室で一晩を過ごし、「みらい」の2日目は、早速、「外変」や「操練」など、聞きなれないことばのオンパレードで始まりました。船舶を外航船に資格変更することを「外変」と呼ぶようです(おそらく「内変」もあるのでしょう)。外変しても船内での生活が変わるわけではありません。パスポートが回収されただけです。ただ、この時点から私は日本を出国した身となるので、船から見える清水港の岸壁に下りることはできません。

  • 連絡事項:9時からソウレン。「ソウレン」って何でしょうか?漢字に変換できませんでした。総合練習の略でしょうか?今回の航海の首席研究員の藤木徹一さんに聞いてみました。なんだか答えがあやふや。ほかにも何人かの研究員の方に尋ねてみても、どこか自信なさげ。ようやく解決しました(ネットで調べました…)。正しくは「操練」です。長い名称の略語というわけではなさそうです。各自の居室にある救命胴衣を着用し、イマーションスーツを携行して集合です。緊急時の船からの避難訓練を行いました。
    12時からは「みらい」での最初の食事となる昼ご飯。午後、研究員は、各自の研究室や甲板で明日からの観測のための準備を始めます。

  • 本日15時に清水港を出港します。それでは。

操練の様子1-甲板にて-
操練の様子2-救命艇-
プランクトンネットの準備中