海洋冒険家の白石康次郎さんが世界一周ヨットレースで海洋観測 - マイクロプラスチック分析にJAMSTECが協力 海洋冒険家の白石康次郎さんが世界一周ヨットレースで海洋観測 - マイクロプラスチック分析にJAMSTECが協力

プロセーラーで海洋冒険家の白石康次郎さんが参戦する単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」。約80日間の過酷なヨットレースの期間中に白石さんはマイクロプラスチックの採集活動を実施しながらゴールを目指します。
JAMSTECは採集された試料の分析等を協力。一般商船や海洋調査船の航行も少ない南氷洋の海域でのマイクロプラスチックの状況を調べます。
>> 白石康次郎さん公式サイト

単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」

世界一過酷なヨットレースとして、1989年から4年に一度開催されており、開催地のフランスでは「テニス全仏オープン」、「ツール・ド・フランス」と同じく注目を集めるスポーツ競技。白石康次郎さんは、2016年大会にアジア人として初出場、完走を目指したものの、マストトラブルにより残念ながらリタイア。2020年11月8日からスタートする第9回大会では約80日間のレースの完走を目指します。

TOPICS

2021年4月2日

白石康次郎さんの「ヴァンデ・グローブ」完走報告会見が開催されました

閉じる ▲

2021年3月31日。白石康次郎さんの「ヴァンデ・グローブ」完走報告会見が開催されました。
会見ではレース中に採集された海洋マイクロプラスチックのサンプルが藤倉海洋生物環境影響研究センター長に手渡されました。
今後サンプルの分析を進めます。

2021年2月17日

白石康次郎さんが「ヴァンデ・グローブ」完走!

閉じる ▲

白石康次郎さんが、2020年11月8日よりスタートした単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」にて、現地時間の2021年2月11日(木)にゴールされました。
世界一過酷と言われる本レースでの完走は、アジア人初の快挙となります。

 

誠におめでとうございます!!

2020年12月21日

白石康次郎さんコメント

詳しく見る ▼

「ヴァンデ・グローブ」のレース中に行うマイクロプラスチックの採集について、白石さんからコメントを頂きました。
採集用フィルターの提供や分析で協力するJAMSTECの藤倉克則(地球環境部門海洋生物環境影響研究センター センター長)のコメントとともに紹介します。

>> いつまでもきれいな海でセーリングをしたいから
白石康次郎
DMG MORI SAILING TEAMスキッパー/プロセーラー

>> The Missing Plasticsに迫る貴重なデータに
藤倉克則
JAMSTEC 地球環境部門海洋生物環境影響研究センター センター長

いつまでもきれいな海でセーリングをしたいから

白石康次郎
DMG MORI SAILING TEAMスキッパー/プロセーラー

──なぜヨットレース中に海洋マイクロプラスチックを採集しようと考えたのですか。
10年以上前に、太平洋ごみベルトと呼ばれる海域があるというニュースを聞いてから、プラスチックごみの問題を非常に懸念していました。それから時代が進み、今、海洋マイクロプラスチックが問題になっています。これは強敵です。
ヨットで外洋を走っていると、プラスチックごみが引っ掛かることが、たまにあります。目に見えれば、海をきれいにしようという意思が働きます。一方、海洋マイクロプラスチックは、海中をのぞいても見えず、臭いもしません。存在を認識できないということは深刻な問題で、対応が手遅れになりかねません。
姿が見えない相手の場合、まず調査し分析し、実態を知ることが大切です。だから「ヴァンデ・グローブ」のレース中にマイクロプラスチックを採集しようと考え、JAMSTECに相談に行きました。
──これまでもJAMSTECとのつながりがあったのですか。
JAMSTECの施設は自宅の近くなので、家族で何度も見学に行っています。知り合いもたくさん働いていて、僕にとってはとても縁が深い研究機関です。
知人に藤倉さんを紹介していただき、オンラインで打ち合わせをしました。意気投合し、今回の活動が決まりました。
──レース中にマイクロプラスチックを採集するのは、大変ではありませんか。
マイクロプラスチックは、ヨットに搭載された浄水装置内に設置したフィルターで採集します。レース中、そのフィルターを定期的に交換し、保管します。
フィルターの設置場所には少し苦労し、水漏れがあったりしましたが、工夫しながら対応していきます。フィルターの交換作業は、それほど大きな負担ではありません。
(注:レース途中に浄水装置での採集にトラブルが発生したことから手動で採集する方法に変更した)
 >> 採集している様子(動画)
持ち帰ったフィルターをJAMSTECで分析して、どのような結果が出るか、とても興味深いです。
──この活動に取り組む原動力は何ですか。
いつまでもきれいな海でセーリングをしたいからです。
海洋マイクロプラスチックの実態は、まだはっきりしていません。「ヴァンデ・グローブ」の経験をもとに、世界の海を調査していきたいと思っています。

The Missing Plasticsに迫る貴重なデータに

藤倉克則
JAMSTEC地球環境部門海洋生物環境影響研究センター センター長

■プラスチックの99%が行方不明
──JAMSTECでは海洋マイクロプラスチックに関して、どのような研究開発をしているのでしょうか。
外洋の表層には4500万トンのプラスチックが浮いていると推定されています。そのうち99%の行方が説明できていません。The Missing Plastics(行方不明のプラスチック)と呼ばれる問題です。
私たちは、その多くが深海や海流の渦に集まっていると考えています。そこで、深海や日本の沖にある大きな渦をターゲットにしてプラスチックの分布の実態を解明し、The Missing Plasticsを説明しようとしています。
プラスチックは、熱や紫外線によって劣化して細かくなります。そのようなマイクロプラスチックを計測するには手間と時間がかかることも問題です。私たちは、マイクロプラスチックの計測を効率的に行うための手法開発に取り組んでいます。もちろん、プラスチックによって海洋生物へどのような影響があるのかも明らかにしようと思っています。
■プロセーラーと海の研究者、想いは同じ
──白石さんからは、どのような相談があったのでしょうか。そのとき、どのように思われましたか。
白石さんからは、「海洋プラスチック問題解決のためにヨットレース中にマイクロプラスチックを採集したいので、一緒に取り組んでいただけませんか」という相談がありました。
リモートでの打ち合わせだったのですが、私だけでなく、参加した全員が、白石さんの超熱い想いを感じたと思います。海を大切にしたい、この環境問題を何とかしたい、という想いを同じくする私たちは、すぐに意気投合しました。私たち海の研究者からすると、志を同じくする方からのこのような申し出は、とてもうれしいことなのです。
──2019年12月〜翌1月に行われた「日本─パラオ親善ヨットレース」におけるマイクロプラスチックの採集・調査にもJAMSTECは協力しています。ヨットレース中にマイクロプラスチックの採集を行う例は、増えているのでしょうか。
2017〜18年に行われた地球一周ヨットレース「ボルボ・オーシャンレース」が最初だったと思います。今回の「ヴァンデ・グローブ」の参加艇には、白石さん以外にもマイクロプラスチックの採集を行っている艇があると聞いています。
ヨット関係者は海の環境問題に対して高い意識を持っていますから、今後もこのような動きは加速されると思います。「日本─パラオ親善ヨットレース」関係者も、ぜひ継続してマイクロプラスチックの採集を行いたいとおっしゃっています。
■JAMSTECはフィルター提供と分析で協力
──「ヴァンデ・グローブ」は、フランス西部のレ・サーブル・ドロンヌをスタート・ゴール地点として、大西洋を南下、東回りで南極海を一周します。この航走ルートの海域でマイクロプラスチックの採集を行うことは、どのような意義があるのでしょうか。
この航走ルートの海域では、プラスチックの分布データがほとんどありません。The Missing Plastics問題を含め、グローバルスケールのプラスチックの分布実態の解明に向けて、データの空白域を埋める第一歩になると思います。
──JAMSTECは、どのような協力を行うのでしょうか。
マイクロプラスチックを採集するフィルターを提供します。これをヨットに搭載されている海水から真水をつくる装置に取り付けます。つくった真水は飲料水にもするので、フィルターが原因となるトラブルは絶対に避けなくてはなりません。また、過酷なレース中に採集するので、できるだけ簡単にフィルター交換ができるようにする必要があります。
今回、既製品のフィルターに網目の大きさが300μmのプランクトンネットを入れたものを30個ほどつくりました。フィルターごと簡単に交換できるようになっています。
レース中は、こちらでは何もできないので、白石さんにお任せです。レース後には、採集したマイクロプラスチックの量や材質を分析し、ヨットの航走ルートに対応させながら分布量を見積もります。
──ヨットレースなど、研究機関の調査船以外によるマイクロプラスチックの採集・調査の重要性は今後、高まっていくのでしょうか。
そう期待しています。そのためには、小型で簡単にマイクロプラスチックの採集や関連データを取得できる装置が必要だと思います。
海は広いので、調査船だけで世界中の海を調査することはできません。しかし、世の中に船はたくさんあります。マリントラフィックをご覧いただくと、とてつもない数の船が世界中の海を航走していることが分かります。
これら全ての船で、プラスチックだけでなくさまざまな海洋観測データを自動的に取得できるようになれば、海の理解が格段に進むことは間違いないでしょう。
■きれいな海を取り戻す。その第一歩に
──白石さんの印象は?
第一印象は「声、デカッ!」でした。エネルギッシュで、周りの人を巻き込む強力なオーラに、私も巻き込まれました。
きれいな海を取り戻したい、そのために社会活動を変えなくては、という想いは一緒です。研究者は、科学的情報を発信し、社会活動の変化につなげたいと思っています。
白石さんほどの方なら、さまざまなメディアを通じて海洋プラスチック問題を訴えるだけでも、相当大きな効果があるはずです。しかし、それだけでは満足せず、自らが科学的情報の創出に協力し、体現し、より説得力のある行動に出られました。
そのパートナーに私たちを選んでくださったので、その信頼に応えつつ、誠実にデータを蓄積していきたいと思います。
──最も過酷なヨットレースといわれる「ヴァンデ・グローブ」に出場されている白石さんにエールをお願いします。
「祝 完走!!!」と言えることを楽しみに待っています。そして、レース後に、超熱いお話を聞かせてください。

2020年10月30日

白石康次郎さんインタビュー動画

詳しく見る ▼

2020年9月9日にフランスのロリアンにて、単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ・グローブ」におけるJAMSTECとの協働について語っていただきました。

実施内容

単独無寄港無補給世界一周ヨットレース「ヴァンデ グローブ」に参加する白石さんのレース艇「DMG MORI Global one 号」に、マイクロプラスチック採集装置を設置し、レース中に海水からマイクロプラスチックを採集します。

◆レース艇「DMG MORI Global one 号」
長さ:18.28m(60ft)
幅:最大5.85m
高さ:最大29m