地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

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海洋科学掘削が貢献する新領域への挑戦

下北沖掘削海域の海底下構造と研究の概要

下北沖掘削海域の海底下構造と研究の概要

 今回の研究航海で得られる試料を用いた研究のために、実験室内に海底下の現場と同様の環境をつくり現場再現実験を行うという、海底下実環境ラボが整備されている。その新たな設備を最大限に活用するためにも、新鮮でクォリティの高いコア試料が必要だ。さらに今航海では、ライザー掘削によって船上に回収された泥水に含まれるマッドガスやカッティングスの詳細かつ連続的なモニタリングも行われ、実環境を再現するための貴重なデータとして活用されることになっている。
 今回のプロジェクトでは、二酸化炭素を海底下の地層中に隔離貯留するCCS(Carbon Capture and Storage)の可能性を探ることも、大きなテーマのひとつに掲げられている。「日本の地理的な条件を考えると、海底下の褐炭層は、二酸化炭素の貯留場として、非常に有効な空間になる可能性があります。さらに、微生物の代謝活動によって二酸化炭素をメタン(天然ガス)や有機物などのエネルギー基質に再生できる可能性もあると考えています。この『バイオCCS』仮説が実証されれば、褐炭層を『海底下の森』として活用していくこともできるはずです」と稲垣博士は話す。海底下の生命活動を活用したエネルギー再生・循環技術の開発といった、これまでの海洋科学掘削にはない新たな地球生命工学的な取り組みは、今後の産業界との連携も含めて大きな関心が寄せられている。