地球発見 まだまだ知らない「ちきゅう」がある。

CDEX

若い研究者にとっての「あこがれ」であるために

 「ちきゅう」は2005年の建造完成から7年経過しました。その間、南海掘削で、流速6ノット(時速約11km)という速い海流(黒潮)にとどまって掘削を行い、計測装置を設置しました。このような研究航海にあたり、黒潮の流れに対応するため、私たちは約1年をかけて徹底的な調査を行い、機械や設置方法を改良した上で航海を成功させました。
また東北沖の日本海溝では、深海におけるリエントリー(再投入)を行い、海面からの世界最深の記録を立てました。8月に行われた下北半島八戸沖の掘削では、海洋科学掘削の世界最深度記録を更新しました。「ちきゅう」は、掘削を行う場所で、いくつかの「世界一」とされるその性能を発揮できるようになりました。
この状態を人間に例えると、高校生のような状態かと考えています。記録を達成しながら自分の限界を知りたくなる。そして、自分の限界を確かめながら、将来自分はどうしたらよいのだろうかと考える。そんな時期を迎えています。それは、機器や装備の改良などのハードウェアの観点と、「ちきゅう」を動かす人々であるソフトウェアの観点の両面でいえると思います。
 今後のステップとして、単純に「穴を掘れた!」で喜ぶのではなく、それを科学はどう生かしていくのか、「ちきゅう」という海の上の研究所としての能力を最大限発揮させるにはどうしたらよいのかを模索しなければいけない、そういったところまで成長してきたように思っています。
 2013年度には「ちきゅう」の国際ワークショップを開催します。このワークショップでは、これから「ちきゅう」がどのような科学に貢献していくのかが話し合われます。
 まだよく分かっていませんが、海底下の世界には大きな潜在的価値、ポテンシャルがあります。「ちきゅう」を使って、そのポテンシャルに挑むことで、いろいろなことがみえてくるでしょう。ぜひ、若い研究者に「ちきゅう」に乗り込んでもらい、さらなる科学成果があがればと期待しています。
 世界中の若い研究者に「乗りたい!」とあこがれてもらえる「ちきゅう」でありつづけるために、私たちは今後も活動を進めていきます。