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2017年 7月 14日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
日本地球掘削科学コンソーシアム
国立大学法人新潟大学
国立大学法人静岡大学
国立大学法人金沢大学

「ちきゅう」船上におけるオマーン陸上掘削コア記載の開始
~将来の海底での「マントル掘削」へ向けた重要なマイルストーン~

中央海嶺で生まれ、移動する海洋プレートは、沈み込み帯における火山・地震活動の源泉であり、大陸形成および全地球的な進化過程において非常に重要な役割を果たしています。しかし、海洋プレートの形成・進化のプロセスの解明は十分になされてはいません。一方、オマーン北西部のアラビア半島には、約1億年前の古海洋であるテチス海が閉じて消滅する際に、アラビア半島に衝突・付加した海洋プレートの断片が、約500km、幅80kmにわたって露出しています。この岩片は、オフィオライトと呼ばれる、海洋地殻とマントルから構成される地質岩体であり、海洋プレートの形成と進化さらには大陸プレート形成の初期過程の解明に重要な知見を与えるものと考えられており、このオマーンオフィオライトを複数地点で掘削するオマーン掘削プロジェクト(Oman Drilling Project)が国際陸上科学掘削計画(ICDP:International Continental Scientific Drilling Program)(※1)のもとで2016年12月1日から実施されています。(2016年11月30日既報

これまで、海洋地殻の中部~下部に相当する岩層を3箇所で各400mおよびオフィオライト基底部に相当するマントル部分を300m掘削し、岩石コア試料全長1,500mを採取することに成功しました。これらの岩石コア試料は順次日本へ運ばれ、静岡県静岡市清水港に停泊している地球深部探査船「ちきゅう」の最新の船上ラボ設備において、2017年7月15日から詳細なコア記載・解析が開始されます。

本プロジェクトでは、ICDPと国際深海科学掘削計画(IODP:International Ocean Discovery Program)(※2)の連携の一環として、米国、欧州、オマーン等から計80名以上の研究者が参加(日本からは海洋研究開発機構、新潟大学、静岡大学、金沢大学等から、学生・ポスドクを含む計27名が参加)し、「ちきゅう」の船上設備を活かして、2か月間24時間体制で集中的にオマーンの岩石コア試料を詳細に記載・解析します。得られた物性データは、現在の海洋プレートと比較できる参照データとして極めて重要であるだけでなく、今後日本が主体となり、地殻-マントル境界に相当すると考えられているモホロビチッチ不連続面を掘削・孔内検層(※3)する本プロジェクトの次のフェーズ、ひいては将来の実施を目指している海底での「マントル掘削」へ向けた重要なマイルストーンと位置付けられます。

なお、本プロジェクトは、日本学術振興会の科学研究費助成事業、基盤研究(A)「オマーンオフィオライト陸上掘削による地殻-マントル境界の物性とモホ面の実態解明(※4)」、および基盤研究(S)「最上部マントルの構造とモホ面の形成過程の研究~海と陸からのアプローチ~(※5)」の一環としても行われます。

※1 国際陸上科学掘削計画(ICDP: International Continental Scientific Drilling Program)

ドイツ、米国、中国が主導国となり、1996年2月から始動した多国間科学研究協力プロジェクト。日本は1998年から加盟。「気候と生態系」「持続可能な地下資源」「自然災害」の3つの科学テーマを掲げ、地球変動の歴史を知り地下の活動的プロセスをとらえるために、各種陸上科学掘削計画を推進している。日本では、海洋研究開発機構が代表機関を、日本地球掘削科学コンソーシアム(※6)の陸上掘削部会が代表窓口を担当している。

※2 国際深海科学掘削計画(IODP: International Ocean Discovery Program)

2013年10月から開始された多国間科学研究協力プロジェクト。日本(地球深部探査船「ちきゅう」)、アメリカ(ジョイデス・レゾリューション号)、ヨーロッパ(特定任務掘削船)がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、海底下生命圏等の解明を目的とした研究を推進している。

※3 孔内検層

掘削孔内に沿って様々な物理量を連続的に測定し、孔壁の深度に対応した物理・化学的性質の変化を知る手法。

※4 基盤研究(A)「オマーンオフィオライト陸上掘削による地殻-マントル境界の物性とモホ面の実態解明」

2016年度から4年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 高澤栄一、新潟大学自然科学系・教授)。マントル−地殻境界相当層を掘削し、コア試料の岩石学・地球化学・構造地質学的解析から、地球科学の未解決問題であるモホ不連続面の実態と、地殻−マントル境界の構造と物理的特性を明らかにすることを目的とする。また、掘削試料を地球深部探査船「ちきゅう」で記載・解析することにより、学生・若手研究者の育成および日本の海洋掘削技術の向上・発展に貢献する。

※5 基盤研究(S)「最上部マントルの構造とモホ面の形成過程の研究~海と陸からのアプローチ~」

2016年度から5年間の予定で実施される研究プロジェクト(代表: 道林克禎、静岡大学理学部・教授)。小笠原・マリアナ海溝とオマーンオフィオライトのかんらん岩について、岩石構造組織の発達過程、弾性・電気伝導度・透水率等の物性測定、岩石−水反応実験等の多角的アプローチから、マントルとモホ面の形成過程を解明することを目的とする。この海と陸のかんらん岩の構造岩石学的特徴を比較検討して、最上部マントルの発達過程とそれを支配する要因を考察する。

※6 日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC: Japan Drilling Earth Science Consortium)

地球掘削科学の推進や各組織・研究者の連携強化を目的として、国内の大学や研究機関が中心となって2003年に設立されたコンソーシアム。IODPをサポートするIODP部会と、ICDPをはじめとする陸上掘削科学をサポートする陸上掘削部会から構成されている。主な活動は、地球掘削科学に関する科学計画・研究基盤の検討、関係機関への提言、地球掘削科学に関する科学研究等の有機的な連携、研究人材育成、国際プロジェクトへの支援および協力、情報発信・普及啓発の実施等。

図1

図:オマーンオフィオライトの分布図。丸印が掘削地点。地殻、マントル、その境界であるモホ面を掘削し、連続的な情報取得を狙う。

図2

写真:オマーンオフィオライト基底部の炭酸塩岩化した変かんらん岩(listwanite)

(国際陸上科学掘削計画・科学掘削について)
・ 国立研究開発法人海洋研究開発機構 海洋掘削科学研究開発センター
  研究開発センター長 山田 泰広
・ 日本地球掘削科学コンソーシアム 陸上掘削部会 部会長 小村 健太朗
  (国立研究開発法人防災科学技術研究所 地震津波防災研究部門 主任研究員)
・ 国立大学法人新潟大学自然科学系(理学部) 教授 高澤 栄一
・ 国立大学法人静岡大学理学部 教授 道林 克禎
・ 国立大学法人金沢大学理工研究域自然システム学系 教授 森下 知晃
(報道担当)
・ 国立研究開発法人海洋研究開発機構 広報部 報道課長 野口 剛
・ 国立大学法人新潟大学 広報室 広報室長 小奈 裕
・ 国立大学法人静岡大学 総務部 広報室係長 大泉 秀樹
・ 国立大学法人金沢大学 総務部 広報室広報係長 張田 剛
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