かつて、海底にあった海洋プレートが地表に乗り上げている場所が、オマーンにあります。「オフィオライト」と呼ばれるそのかつての海洋プレートは、海底を掘らずとも海洋プレートを知る手がかりになるとして、世界中から注目されてきました。このたび、そこから掘り出したコア試料の分析が地球深部探査船「ちきゅう」で行われました。
ココがポイント
●地球内部からの熱と物質の循環を解明し、また将来マントルまで掘削するには、海洋プレートの調査が必須。
●オマーンには、かつての海洋プレートが陸上に乗り上げた断片「オフィオライト」がある。
●オマーンオフィオライトから採取した全長1,500mものコアの分析を、「ちきゅう」船上で24時間体制で集中的に行った。
かつての海洋プレートが、なぜ陸上に?「ちきゅう」ではどんな分析を?今回は、次のプレスリリースに関連したご紹介です。
「ちきゅう」船上におけるオマーン陸上掘削コア記載の開始
~将来の海底での「マントル掘削」へ向けた重要なマイルストーン~」
最前線で分析に取り組んできた阿部なつ江主任技術研究員にお話を聞きます。
海洋プレートが重要!
――こんにちは。オマーンでかつての海洋プレートを掘削したと聞きました。
オマーンでの陸上掘削について説明するために、地球の話から始めましょう。地球の中は、外側から地殻、マントル、外核、そして内核があります(図1)。
地球内部の対流によって上昇したマントルは一部がとけて玄武岩質マグマとなります(図2)。それが海嶺から海底に出ると海水で冷やされて固まり、海洋地殻となります。とけ残ったマントル部分とその上に乗っかった海洋地殻を合わせて、海洋プレートと呼びます。その海洋プレートは海水と反応して変質したりしながら移動します。やがて海溝からマントルへ、海水との反応でできた鉱物や海水ごと沈み込みます。その沈んだ海洋プレートは圧力で水を吐き出し、その水でマントルがとけてマグマができます。そのマグマが地表へ噴いて固まることで、今度は大陸地殻が形成されます。
こうした循環は地球が誕生しプレートが形成されてから脈々と続いてきました。海洋プレートは、地球内部の熱や物質を深部から表層へ、表層から深部へ運ぶ大切な役割を果たします。それにも関わらず、海洋プレートの内部の温度がどうなっているのか、海洋プレートと海水がどの深さまで反応しているかなどがわかっていません。これらを知ることは、地球の成り立ちを理解する上で非常に大切です。
――海洋プレートは熱と物質の循環に重要な役割を果たすけれど、わからないことも多いのですね。
そして、海洋プレートの下部からはマントルがあります。マントルは地球の体積の80%以上を占めますが、人類は未だ到達したことがありません。地球深部探査船「ちきゅう」(写真2)は、大陸地殻よりも薄い海洋地殻を掘り進みマントルへの到達を目指していますが、海洋プレートと同様に海洋地殻はわからないことが多くあります。特に、どんな構造でどんな硬さか。マントルへの掘削を実現するための技術開発などには必須情報です。
――熱と物質の循環のさらなる解明、そしてマントル掘削を見据えると、海洋プレートの調査が必要なのですね。
その通りです。しかし海洋プレートを直接調べるのは大変です。そこで注目したのが、中東のオマーンにあるオフィオライトです。