世界で2番目に深い海淵へ

トンガ海溝・ケルマディック海溝

「よこすか」は2013年8月、「しんかい6500」の電池交換のために一度日本に帰ってきます。そして10月、南太平洋のトンガ海溝・ケルマディック海溝に向けて出航します。この海域での調査はニュージーランド国立水質大気研究所との国際共同研究で、北里 洋 領域長とBioGeosの土田 真二 技術研究副主幹が指揮を執ります。
JAMSTECでは過去、世界で最も深いマリアナ海溝チャレンジャー海淵を調査したことはありますが、世界で2番目に深いトンガ海溝(最深部の水深1万850m)はまだ調査したことがありません。そこで今回トンガ海溝を調査し、世界1位と2位を比較することで、超深海の生態系に迫ります。
トンガ海溝・ケルマディック海溝には、ルイビル海山列が次々と沈み込んでいます。いくつかの海山を調査し、深さの変化によって生物がどのように変わっていくかを明らかにします。

首席研究者より

北里 洋

海洋・極限環境生物圏領域
領域長
北里 洋(きたざと ひろし)

プロフィール
1948年東京都生まれ。
1976年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。静岡大学理学部助手、助教授、教授を経て、2002年海洋科学技術センター入所。2009年4月から海洋・極限環境生物圏領域長(上席研究員)に就任。
専門は、地球生命科学、深海生物学、海洋微古生物学。

トンガーケルマデック航海 Leg 1 は、トンガ弧の成因に迫る地質航海とトンガ海溝最深部の環境と生物を調査しようとする生物航海の相乗り航海です。ここでは、生物調査の期待を述べます。
JAMSTECの研究者たちは、1万メートルを超える海淵部には特有な環境があり、ユニークな生物群が生息することを、マリアナ海溝チャレンジャー海淵での一連の調査から明らかにしてきました。超深海海溝域は、新しい生息場所(habitat)なのです。そこは、低温、高圧の極限環境であるとともに、難分解性有機物が多量に蓄積する深海のごみためです。そういった所に生息する生物は、食べにくい有機物を分解することができる酵素を持っているとか、分解できる細菌を共生させているなど、habitatに適応する工夫をしているはずです。また、1万メートルを超える超深海は、分布の限界のはずです。そこにいる生物たちは、他には移動しにくいはずです。
世界には1万メートルを超える深海海淵部が4カ所知られています。チャレンジャー海淵(11,034m)、ミンダナオ海溝(10,030m)、トンガ海溝ホライゾン海淵(10,850m)、そしてケルマディック海溝(10,047m)です。今回行う、トンガ海溝ホライゾン海淵の調査は、世界で二番目に深い海淵部の環境とそこに住む生物を明らかにすることが主目的です。チャレンジャー海淵と同じような環境で、同じような生物群がいるのでしょうか?また、違った生物の進化がみられるのでしょうか?
私たちは、日・ニュージーランド・デンマークの国際チームでこの謎解きに挑みます。

土田 真二

海洋・極限環境生物圏領域
海洋生物多様性研究プログラム 深海生態系研究チーム
技術研究副主幹
土田 真二(つちだ しんじ)

プロフィール
1966年東京都生まれ。平成8年東京水産大学大学院水産学研究科博士課程修了。平成10年海洋科学技術センター入所。
専門は、深海生物学。

ルイビル海山列は長さ4300kmに渡り 70以上もの海山を含みます。その西端はケルマディック海溝へと沈み込み、海底火山としての終焉を迎えます。一方で、ケルマディック海溝を越えたすぐ先には80以上もの海山が縦列するトンガ〜ケルマディック島弧と近接し、活発な熱水活動をともなう隆盛を極めた海底活火山が立ち並びます。このように隆盛を極めた海山と終焉を迎えた海山が近接するという特異な海域は、世界でもあまり例がありません。この航海では、これら海山における生物の変遷と多様性を育むメカニズムの解明を目指します。