あえて言おう「ミスである」と!編

2013/02/23

川口 慎介(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

【勝ちに不思議の勝ちあり,負けに不思議の負けなし】
今日は最終潜航予定日でしたが,積乱雲による暴風の恐れがあり,13時に船長から潜航不可が言い渡されました。これで今航海中の調査は終了です。最後の潜航に向けて意気込んでいただけに,あっけない幕切れでした。

悔やんでも悔やみきれません。それが今の正直な気持ちです。

自分の潜航で残り時間を費やして地道にチムニーマッピングをしていれば,続くソリティアでの潜航の所要時間が短縮できたのではないか。ペイロードの準備を他人任せにせずクロスチェックをしていれば,現場での不具合は回避できたのではないか。経験不足の潜航者への事前レクチャを徹底していれば,狙った試料の採り損じは無かったのではないか。こうした一つ一つの判断・作業のミス,それも避けられたはずのミスが無ければ,少なくとも1潜航日分は余裕がうまれ,もっと大きな成果が得られていたはずです。今航海でやり残したことがあるのは,決して天候のせいだけではなく,一個の職業人として努力が足らなかったせいであると痛感しております。そして,今後の海洋調査をより良いものにしていくための唯一絶対の王道は,ワタクシも含め海洋調査船に乗り合わせたすべての人が,個々の職業人としての責任感を持って日々研鑽を積み,己の仕事の練度を高め,またそうした個々人の努力に加え,互いに尊重しながらも遠慮のない,良い意味での緊張感を維持し,高いレベルで切磋琢磨することだと思います。今後ともよろしくお願いします。


写真:西澤首席直筆「YES!!We can」