

現在、国だけでなく自治体単位でも気候変動への適応策が求められており、その策定には既存の気候変動予測情報よりもさらに高解像度(市内の地域性が分かる程度)の情報が必要となっています。JAMSTECは、横浜市環境創造局環境科学研究所(現横浜市みどり環境局環境科学研究所)と都市の熱環境の改善に向けた共同研究を実施し、横浜市内の将来の気温に対して海風や緑地が引き続き重要な役割を果たすことを明らかにしました。
神奈川県の三浦半島周辺では2020年6月から多数の異臭通報が相次ぐ事案が繰り返し発生し、多数のメディアでも取り上げられました。異臭の原因については不明点も多かったことから、JAMSTECでは、神奈川県環境科学センターの協力依頼(2020年10月中旬)に基づいて、高解像度気象シミュレーションを実施し、異臭ガスが風に運ばれるプロセス(移流プロセス)の解析に取り組みました。
JAMSTECでは、名古屋工業大学との共同研究により、都市空間で実際に行動した場合の熱中症リスク評価技術の開発を行いました。JAMSTECが実施した東京駅周辺の暑熱環境に関する5mメッシュの微気象シミュレーションデータを入力情報として、名古屋工業大学が人体の組織構成を考慮して開発した詳細な人体モデルシミュレーションを実施することにより、同じ通りを歩く場合であっても日向側と日陰側の違いなど、都市空間の詳細な気象情報と個々人の活動を考慮した熱中症リスク評価技術の開発に成功しました。
埼玉県によるヒートアイランド対策の一環として、ラグビーワールドカップ2019の開催地のひとつである熊谷スポーツ文化公園(埼玉県)を対象に、埼玉県環境科学国際センターと協働し、公園内の暑熱環境に関する微気象シミュレーションを実施しました。このシミュレーションにより、樹木の植栽や遮熱舗装などの暑熱対策の具体的な効果を改修工事の計画段階で事前に予測し、対策の効果を最大化することに貢献しました。
JAMSTECと横浜国立大学の共同研究において、横浜市の「みなとみらい21」地区の一画にある都市公園「グランモール公園」の改修工事に伴う気温変化について、微気象シミュレーションを用いて解析し、公園の上空を吹いている横浜港からの比較的涼しい海風の重要性や、改修工事による公園内の改善効果を明らかにしました。
2020年東京オリンピック・パラリンピック競技大会において複数競技の開催が計画されていた東京湾臨海部のうち「東京ベイゾーン」周辺を対象として、樹木等の物理的作用を考慮した大規模微気象シミュレーションを実施することにより、真夏の暑い日の風の流れ、気温、湿度等に及ぼす緑地の効果を定量的に解析しました。
JAMSTECと株式会社三菱地所設計および株式会社竹中工務店の共同研究により、東京都心(大手町・丸の内・有楽町地区)にある「丸の内パークビル」の中庭を対象に、高層ビルに囲まれた緑地の低温化現象と、それをもたらす樹木の効果を、3次元連続観測と1mメッシュの高解像度微気象シミュレーションにより解明しました。