がっつり深める

最新スーパーコンピュータ技術を駆使して暑さから人々を守る! ヒートアイランド対策に「地球シミュレータ」による予測結果を活用

記事

近年、夏の熱中症が特に問題になっています。熱中症による2017年5月~9月の救急搬送数は、52,984人(総務省HPより)。その原因の1つは、都市の気温が郊外より高くなる「ヒートアイランド現象」です。

このたび、スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」を使った暑熱環境シミュレーションで、そのヒートアイランド対策を検証したうえで実現する、というモデルケースが確立されました。埼玉県との共同研究を紹介します。

プレスリリース
最新スパコン技術を駆使して暑さから人々を守る! 熊谷スポーツ文化公園のヒートアイランド対策にスーパーコンピュータによる予測結果を活用

ココがポイント

●スーパーコンピュータ「地球シミュレータ」と大気海洋結合モデル「MSSG」を使って暑熱環境シミュレーションを行い、埼玉県熊谷市にある熊谷スポーツ文化公園のヒートアイランド対策を検討した。
●より効果的な対策を見出し、このデータに基づいた園内の整備が実行された。
●この技術は今後別の場所のヒートアイランド対策などにも使えると期待される。

MSSGの開発に携わる松田 景吾 研究員にお話を聞きます。

ヒートアイランド現象とは?

――こんにちは。毎日暑くてとけてしまいそうです。ヒートアイランド現象とは何かから教えてください。

写真1 松田 景吾 研究員。後ろは「地球シミュレータ」が設置されている建物。

ヒートアイランド現象とは、都市部の平均気温が郊外より高くなる現象です。次のような原因が考えられます(図1)。まず、都市部にはアスファルトやコンクリートで覆われた地面やビルがたくさんあること。アスファルトやコンクリートは、熱を多くため込みながら冷めにくい性質があるため、日中に太陽から熱を受けとり、夜間になっても熱を保ち続けます。これによって地面付近の気温が下がりにくくなるのです。そして、保水量が高い土の地面や樹木では水分の蒸発にともなって周囲の熱が奪われるので気温上昇が抑えられるのですが、そうした緑地が都市部では少ないことも関係します。それらに加えて、エアコンや自動車などから人工的な熱がたくさん排出されることも影響しています。

図1 ヒートアイランド現象のイメージ

ヒートアイランド現象などによる暑さの緩和策には、緑地化や太陽光の反射率を高める遮熱舗装などがあります。これらは一般にヒートアイランド対策とも呼ばれます。

ならば、そうした対策の効果はどれくらいあるのか。それを調べるのに有望なのが、JAMSTECが技術開発を進める「暑熱環境シミュレーション」です。

  • トップ
  • 最新スーパーコンピュータ技術を駆使して暑さから人々を守る! ヒートアイランド対策に「地球シミュレータ」による予測結果を活用