深海とは、海面から見て 200mより深い海のこと。
「深い」「暗い」「冷たい」
あなたにとって深海とはどんなイメージですか?
冒険の前に、まずは
深海のことを知りましょう!
深い
まず初めに思いつくのは深いというイメージでしょうか。
では世界中で最も深い海は?
それは、マリアナ海溝(かいこう)・チャレンジャー海淵(かいえん)の水深10,911m!世界一高い山がエベレストの
8,848mですから、海はそれよりもずっと深いのです。エベレストがすっぽり入っちゃうなんてびっくりだね!
暗い
深海はとても暗い世界です。
光合成(こうごうせい)で必要な太陽の光は水深200mでほとんど届かなくなってしまい、真っ暗な世界へ突入します。真っ暗な世界では、光るクラゲや目が見えない魚など、独自(どくじ)の進化をしている生き物がたくさんいるんですよ。深海に近づくにつれてどんどんと暗くなっていくね!
冷たい
深海って、実は冷たいんです。
緯度(いど)や水深(すいしん)によって違いはあるものの、深海の大部分の水温は0~4℃!季節の影響もほとんどありません。4℃でちょうど冷蔵庫の冷たい飲み物ぐらいで、手を長時間つけるには耐えられない冷たさです。ポッチャマならへっちゃら?実際に深海に潜った映像がこちら。979mの温度はなんと
3.5℃!高圧
水に潜ったとき、耳がキ~ンとしたことありませんか?そう、水には圧力(あつりょく)があります。
水深が10m深くなるごとに1気圧(きあつ)、小指の先ほどの大きさ(1cm²)あたり約1kgずつ水圧がかかっていきます。
世界最深である水深10,911mの水圧は、小指の先に1トントラック約1台分(約110 MPa(メガパスカル))もの圧力を受けることになります。6500mまでの水圧がかかったバットはこんなにペシャンコに!水圧ってものすごい力だね!
深海の砂漠とオアシス
深海の海底の大部分は、生き物がほとんどいない砂漠のような世界が広がっています。
しかし、そんな深海にもたくさんの生き物たちが集まっている熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)と冷湧水(れいゆうすい)というオアシスが存在します。今回の冒険で見つけることができるかな?深海の海底だよ!まるで砂漠のようだね。
深くて、暗くて、冷たい深海。
どんな場所かイメージできたかな?
深海の冒険に行くのは、
なかなか大変そうだけど...
どんな景色が広がっているか、
ワクワクするね!
いよいよ、深海への冒険が始まります!
でも、すごい圧力に耐えながら、
深くて冷たい深海へどうやって行けばいいのでしょうか?
実は、深海へ行く方法は2つあるんです!
1つは、圧力などにも十分耐えられる部屋があり、そこに人が乗って深海に向かう潜水船(せんすいせん)。もう1つは大きなラジコンのように船から自由自在に操作できる無人の探査機(たんさき)。
キミはどっちで深海を冒険してみたい?!
自分で乗って深海に行ける
「しんかい6500」
有人潜水調査船有人潜水調査船「しんかい6500」は実際に人が乗り、その名の通り深海の6500mまで潜れるんだ!1000潜航(せんこう)以上大きな事故もなく安全に運行されているんだよ。
自分で実際に潜ってみたいキミはこっち!
最も深いところ
まで行ける
「かいこう」
無人探査機無人探査機「かいこう」は人は乗れないけれど、地球上で最も深いところまで潜ったことがある探査機なんだ!その深さはなんと水深10,911m!
世界一深いところを
見てみたいキミはこっち!
さぁ出航(しゅっこう)だ!
深海に行くには、いきなり潜水船に乗って向かう訳ではありません。
まず、母船(ぼせん)の「よこすか」に乗って、深海に潜りたいエリア(潜航地点)まで移動するんですよ!
深海にもぐるための有人潜水調査船「しんかい6500」を母船「よこすか」に乗せ、さぁ出航だ!
潜航服に着替えて「しんかい6500」に乗り込もう!
「よこすか」が潜航地点に到着しました!
「しんかい6500」に、深海の寒さをしのぐための潜航服に着替えたパイロットと研究者が乗り込みました。定員は3名だけどなんだかギューギューです。
え?水圧でつぶされないか心配だって?
出入口(ハッチ)を閉めてしまえば大丈夫!!
船から海へ、いざ着水!
準備万端!「しんかい6500」を母船から海に着水させます。
母船にある大きなクレーンのような機械で「しんかい6500」をつり上げ、洋上でスイマーが手作業で「しんかい6500」につながっているワイヤーの取り外しを行います。これらの作業を行ってくれる船員・スイマーの存在が欠かせないんです。
いよいよ深海へ!「ベント開!(べんとかい)」
いよいよ深海へ!ドキドキの瞬間がきました。
パイロットの「ベント開!」という合図と共に、海で浮かぶための空気を「しんかい6500」から抜きます。すると「しんかい6500」が潮吹き(しおふき)をし、一気に深海へ沈んでいきます。
その速さは毎分40m。水深6500mまで潜るにはなんと約2時間30分!
安全な冒険のためのチェック!
一方、母船「よこすか」では、「しんかい6500」の安全な潜航のため、音波(おんぱ)を使って「しんかい6500」の潜航中の位置を常に把握しています。声や映像のやり取りもしているんだよ!
「しんかい→よこすか。11時40分着底。」
おや?潜っている「しんかい6500」から連絡が来ましたね。
さぁ、一緒に ”了解” の合図を音波で送ろう!「ピピーピッ」
さぁ調査開始だ!
こちら「しんかい6500」。
さあ、いよいよ海底に到着しました!!
鉄の重りを少し外すと、「しんかい6500」は浮きも沈みもしない状態になります。そこからパイロットが操縦(そうじゅう)し、深海の中を進んでいきます。
けれど、あたりは何もいないぞ?実は深海の海底のほとんどは、目に見えるサイズの生物は非常に少なく、砂や泥などで出来た広い平原(へいげん)なんです。海なのに砂漠みたいだね!
「深海のオアシス」を見つけたよ
あれ?なにかモクモクと煙のようなものが見えてきました。
「熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)」だ!!
気を付けて!人間に有害(ゆうがい)な物質を含んだ300℃以上の熱い温泉が海底から噴き出ているよ!そう、ここはマグマによって温められた温泉なのです。
こんなに熱くて危ないのに、熱水噴出孔の周辺にはたくさんの生き物が集まっていて、まるで深海のオアシスですね。
サンプルを採取してみよう!
研究用のサンプル採取が始まりました。
ここでは今回の調査で使われる3種の神器(じんぎ)をご紹介!
①「マニピュレータ」
人の手の代わりとなって海底の石をつかんだり、細かい作業をしたりします。②「スラープガン」
掃除機のように吸い込む装置。生き物をどんどん吸い込んじゃうよ!③「プッシュコアラー」
深海底の泥を採取するための道具。泥の中には目に見えない小さい生き物がたくさんいるんだよ。おかえり「しんかい6500」
楽しい時間はあっという間。
海底を離れる時間がやってきました。残っている鉄の重りを外すと、「しんかい6500」は海面へと上昇しはじめます。
海面に到着すると、スイマーが母船「よこすか」とつなぎ合わせ、「しんかい6500」は母船に回収されます。
おかえり!無事帰ってこられましたね。深海の旅はどうでしたか?
研究をはじめよう!
船上では待っていた研究者たちが、すぐに回収した海底の泥などのサンプルを観察し始めました。新しい発見があったりと、研究者にとっては一番のお楽しみの時間でもあります。
このようにしてJAMSTECでは、深海からサンプルを持ち帰り様々な解析(かいせき)を行うことで、深海の謎を解き明かしていきます。
ポッチャマとの冒険はどうだったかな?
私たちとはまったくちがう
過酷(かこく)な環境に住む生物が、
同じ地球上にいるなんて不思議!
たくさんの人たちが力を合わせて
深海の謎を解き明かして行くんだ。
深海の謎はまだまだいっぱい。
JAMSTECでは調査を重ねて、未知なる深海を知るために研究を進めているよ。
今回は、その謎に迫る面白い研究を3つ紹介するよ!
ポッチャマとの冒険で、深海のことを身近に感じたキミは、ぜひ読んでみてね。
私たちの祖先:海底の泥にすむ微生物「アーキア」
私たち人間をはじめ、すべての動物や植物を含む「真核生物(しんかくせいぶつ)」は、単細胞(たんさいぼう)で顕微鏡(けんびきょう)を使わないと見ることができない微生物(びせいぶつ)から進化して誕生したと考えられています。しかし、祖先とされる微生物はどのような形をしていたのか、どのような生き方をしていたのかなど、その実体は大きな謎につつまれていました。そのため、微生物から真核生物への進化の道すじは分からないままでした。そのような中、深海の泥の中から真核生物の祖先に近いとされる微生物「アーキア」を培養(ばいよう)することに世界ではじめて成功しました。培養できたことで、生物学の大きな謎である真核生物誕生の詳細が明らかになっていくことが期待されています。
こんな小さな微生物が我々の祖先というのもちょっと不思議ですよね。
もっと詳しい内容についてはこの動画をチェック!
自然の発電所が深海にはあった!
深海にある熱水噴出孔(ねっすいふんしゅつこう)。そこはただの温泉ではなかったのです!
我々は、深さ約1,000mの海底にある深海熱水噴出域周辺で、微弱(びじゃく)な発電現象(はつでんげんしょう)を確認しました。
実は、熱水は硫化水素(りゅうかすいそ)など電子を渡しやすい物質が多く、海水は酸素など電子を受け取りやすい物質を多く含むのです。さらに、深海熱水噴出域でできる円柱状(えんちゅうじょう)のチムニーや周辺の海底は熱水成分が析出した硫化鉱物(りゅうかこうぶつ)などでできていて、電気をよく通す性質があります。
現場計測と採取試料を使った室内実験から、深海熱水噴出域では、海底下の熱水に含まれる硫化水素から電子が放出されて、海底を伝わり、海水中の酸素に渡される反応が起きて、電気が流れていることがわかりました。
これは、新たな生態系の発見や生命誕生の解明、海底での発電利用につながると期待されています。
もっと詳しい内容についてはこちらをチェック!
深海底に眠る4つの海底鉱物資源(かいていこうぶつしげん)
深海底には、人間社会に有用な金属を含む海底鉱物資源がいくつも存在します。海底鉱物資源は、「海底熱水鉱床(かいていねっすいこうしょう)」「マンガン団塊(だんかい)」「マンガンクラスト」「レアアース泥(でい)」4種類に大別されます。実は日本近海にも、これら4つの海底鉱物資源がたくさん存在することが分かっています。このような資源が存在する場所や量、その成因(せいいん。できかたのこと。)や生成環境(せいせいかんきょう)を調べることによって、新たに海底資源が存在する場所を発見することができたり、目的の金属をより効率的に集めることができるようになるかもしれません。
金属資源の乏しい日本にとって、金属資源の新たな供給源(きょうきゅうげん)として注目を集めています。
- もっと詳しい内容については以下をチェック!
プレスリリース:海底熱水鉱床の初期形成プロセスに微生物活動が寄与
プレスリリース:音波が映し出す南鳥島周辺のマンガンノジュールの分布
プレスリリース:南鳥島周辺における超高濃度レアアース泥の発見とその分布概要
プレスリリース:南鳥島沖の「超高濃度レアアース泥」は地球寒冷化で生まれた