試合結果RESULT

RESULT

大会1日目[1回戦]2021年8月5日(木)

再試合

第1試合

菱刈金鉱山含金石英脈
特別枠(九州ブロック)
VS

第2試合

WIN
九十九里浜の砂
千葉県

第3試合

WIN
小さな貝の砂
特別枠(JAMSTEC)

試合映像

レビュー[特別枠甲子園代表・元祖甲子園球場の砂:井尻暁]

すべらない砂甲子園がとうとう開幕した。


開幕を飾るのは高知コアセンターの有志「Suberanaisuna Dancers」による「よさこい鳴子踊り」。始めは固かった踊り手さん達の表情も、最後には全員満面の笑顔になっていたのが印象的であった。後ろで「すべらない砂甲子園」のプラカードを掲げている二人がマスクをして無表情だったのは、無理矢理持たされていたのだろうか?


では、第1試合から第3試合まで早速ふりかえってみよう。

ゲストは高知コア研究所の所長である石川さんと高知大学海洋コア総合研究センターの中山さんのお二人。「非常にワクワクしています!」と興奮を抑えられない様子の石川所長。まずはMC濱田の進行のもと、ゲストの二人による出場砂の解説が行われる。

記念すべき第1試合は中山さん推薦の『菱刈鉱山の含金石英脈』vs広島県代表の『広島スペシャル』。中山さんの解説によると、菱刈鉱山は金の生産量が日本一になったそうで、その情報だけでもいかにもすべらなそうな気配を感じさせる。白い石英が大部分でそれ以外は正長石からなっている。対して広島スペシャルは花崗岩が原岩だと考えられ、石英とアルカリ長石に富んでいる。滑りやすいと考えられる雲母はあまり検出されていないそう。

第2試合は『浜黒崎海岸の砂』(富山県)vs『九十九里浜の砂』(千葉県)という正統派海浜の砂同士の対決。浜黒崎海岸の砂は立山火山と関係して、火山のパワーを秘めたような砂。対して、九十九里浜は日本最大の砂浜ということで横綱級の砂だという石川所長のコメント(所長、ちょっと何言ってるかわか…)。

第3試合も海浜の砂対決で、『小さな貝の砂』(特別枠)vs『元祖甲子園球場の砂』(特別枠)。小さな貝の砂はJAMSTEC推薦のGODACの内部予選を勝ち抜いた強者。GODACは沖縄の事業所なので、砂の名前は、MONGOL800の名曲「小さな恋のうた」にかけているのだと思われる。一方、元祖甲子園の砂は満を持しての登場。実はこのレポートを書いている私が応募した砂だ。私は大の阪神ファンで、すべらない砂甲子園の話が出た時から、絶対に甲子園球場の砂で応募しようと考えていた。応募が始まってすぐに甲子園球場に電話をして「JAMSTECの50周年記念行事の一つとして、すべらない砂の対決があるので、是非甲子園球場の砂をゆずってもらえないか?」と問い合わせたところ、「そういうのは、やっていないんですよねえ」とつれない返事。そりゃそうだ。いきなり「すべらない砂甲子園」というわけのわからない大会に出るからと言われても神聖な甲子園球場の砂をそう簡単にわけてくれるわけはない(研究に必要だと言えば良かった…)。そこで苦肉の策として、昭和の時代に採っていたという甲子園球場近くの甲子園浜と香櫨園浜から砂を採ってくることにした。浜に行ってみると綺麗な白砂で、一目で花崗岩由来の砂だということがわかる。ある筋から、石英は滑らないだろうというのを聞いていたので、石英がたくさん入っている花崗岩はきっと強いはずとほくそ笑みながら家族連れで賑わう浜辺で一人怪しく砂をかき集めたのだった。抽選結果を見て相手が小さな貝の砂であることを知り、「貝殻なんてバキバキになってしまうんよ。GODACには悪いけど一回戦は楽勝よ、おーん」と余裕をぶっこいて試合に臨んだのだった。

ここで中山さんの出場する海浜の砂の粒度について解説が入る。海浜の砂は淘汰されて粒径が揃っているものが多いが、浜黒崎海岸の砂だけは粒径の分布がかなり広がっているために、これがどういう戦いをするか興味がある。とのこと。続いて、粉末X線回析データによって得られた鉱物構成比のデータも示される。どの砂も石英が多いが中には石灰分の多い鉱物が含まれている砂もあり、それがどう影響するか注目。と石川所長のコメント。浜黒崎海岸の砂には磁鉄鉱などの細かい金属が入っているため、インターロッキングをおこして滑りを止めるのではないかという中山さんの予想。砂の滑りやすさを考える上で、こういった砂の粒径、鉱物組成などのデータとその解説は非常に興味深い。試合が進むにつれて、こういった科学的なデータから、滑りやすさの要因も明らかになっていくのだろう。


さあ「すべらない!!!」のかけ声と共に試合開始。

第1試合、上側の青コーナー菱刈金鉱山の砂、下側の赤コーナー広島スペシャル。トルクが3 Nmあたりまで上がってきたところで、広島スペシャルがぽろぽろと崩れ始め、みるみると薄くなってくる。「これはいけません!あーっとあぶない!」とMC濱田が絶叫。砂が無くなって台座の金属同士がすれると危険ということで、レフリーストップがかかる。この試合結果をどう見るべきかと、話し合っているところへ、大会委員長からMC濱田に電話が入る。非常にわざとらしい電話の受け答えの演技の後、この勝負は無効試合にし、あらためて再戦をすることに決定。こうして、すべらない砂甲子園第1試合は波乱の幕開けとなった。

第2試合、上側青コーナーの浜黒崎海岸の砂、下側赤コーナーは九十九里浜の砂。第2試合からは砂漏れをふせぐために熱収縮チューブがかけられている。トルクが順調にあがり6 Nmの手前あたりでトルクが鈍る。MC濱田「ここでどちらかが動き出しそうだ」。このトルクの変化も、今後試合を見る上で重要なポイントになることがわかる。トルクが少しずつ下がるとともに浜黒崎海岸の砂が動き始める。砂漏れを防ぐ熱収縮チューブも膨らんできて、これは砂が崩れ始めていることを示すのか?九十九里はびくともしないまま、台座が90度回転し、ここで勝負あり。九十九里浜の砂の圧勝であった。

第3試合、上側青コーナー小さな貝の砂、下側赤コーナー我が元祖甲子園の砂。トルクが4 Nmを超えたあたりで、小さな貝の砂が少し動き始める。「そらそうよ。相手が貝やもん、こんなん花崗岩が負けるわけがないですよ、おーん」と見ているとトルクは上がり続け6 Nm手前で、なんと元祖甲子園の砂も動き始める。結果、上の砂も下の砂も両方とも滑っているなんとも奇妙な状態となる。トルクが下がり始めると元祖甲子園の砂の動きが大きくなり始める。そしてとうとう赤コーナー側が90度回転してしまい、小さな貝の砂の逆転勝ちとなった。勝って六甲おろしを颯爽と歌おうと思っていたのに、「ほーらーーーほーらあーーーほらああああーああーあー響けっ貝の砂♪」とモンパチの歌が響いたのだった(あらためて聴くと良い歌だな)。

こうして、第1試合から第3試合までは、無効試合あり、逆転勝利ありの白熱した3試合となった。個人的には元祖甲子園の砂が負けてしまい、泣きながら砂をかき集めたのは言うまでもない。

中山さん「私の予想とは全く逆になりました」。花崗岩を原岩とする元祖甲子園の砂と広島スペシャルが負けてしまった(※広島スペシャルは再試合)ことに対して石川所長は「白砂青松の瀬戸内の象徴が破れたというのは瀬戸内の人間としては非常に残念です。」と、情感にあふれたコメント。MC濱田とゲストの方々とのやりとりも見ていて面白い。花崗岩の風化によってできるマサと呼ばれる砂は土砂災害の原因となるためそういった意味でも花崗岩を源岩とする砂は弱いのではないかというMC濱田の予想。花崗岩は本当に弱いのか、今後の試合経過に注目したい。

勝者コメント

第1試合

再試合の為なし

第2試合
[千葉県代表・九十九里浜の砂:芝柏]

第1試合が再戦となり、大会初の勝利者となりました。天然の海岸砂同士の対戦組合せで、「浜黒崎海岸の砂」さんという好敵手に恵まれたことを嬉しく思います。
エントリーした「九十九里浜の砂」ですが、全長約66kmの九十九里浜のほぼ中央部に当たります。粒径ですが、場所によって異なり、中央部にかけて細粒になるとされています。分析していただいた構成鉱物は石英が44%、斜長石が56%、粒径が186㎛の細粒砂でした。九十九里浜沿岸には砂鉄(磁鉄鉱)が密集している場所もあり、分析結果をみて有色鉱物が含まれないし、石英より斜長石が多いことにも驚きました。鉱物組成や粒径に地域差があることを再認識させられました。この大会に参加したからこそ気づいたことです。ありがとうございます。各試合の観戦を楽しみにしています。

第3試合
[特別枠JAMSTEC代表・小さな貝の砂:GODAC]

強豪ひしめく中、1回戦突破できるか不安でしたが奇しくも甲子園の砂に勝つことができて、複雑な気持ちもありつつ。。。夏の甲子園、沖縄代表は2回戦で敗退しましたが、GODAC代表は2回戦突破できるよう祈っています。

敗者コメント

第1試合

再試合の為なし

第2試合
[富山県代表・浜黒崎海岸の砂:富山市科学博物館ボランティア 岩石グループ「ごろごろ」]

博物館に多くある砂の標本を活用したいと思い、今回の企画に参加しました。
砂鉄を多く含む浜黒崎海岸の砂は、平安時代には、たたら製鉄に用いられており、自然の恵みがいっぱいです。初戦であっという間に負けてしまいましたが、楽しく参加させてもらい、ありがとうございました!

第3試合
[特別枠甲子園代表・元祖甲子園球場の砂:井尻暁]

元祖甲子園の砂として、全国優勝を目指していましたので、一回戦で負けてしまったことは非常に残念です。しかし砂は頑張ったと思います。一時はリードしていましたから。小さい貝の砂のねばりが素晴らしかった。良いゲームを見せてくれました。