T-Limit of the Deep Biosphere off Muroto

地球表層の約7割を占める海洋のその下には、海水中の生物量に匹敵する量の微生物が生息する「海底下生命圏」が拡がっていると考えられています。地球内部の拡大な生命圏は、炭素をはじめとする元素循環や地球と生命の進化にとって重要な役割を果たしています。2012年に、私たちは地球深部探査船「ちきゅう」を用いてIODP第337次研究航海「下北八戸沖石炭層生命圏掘削調査」を実施し、海底下約2.5kmにも微生物群集が存在することを突き止めました(Inagaki et al., Science, 2015)。しかし、海底下深部の生命圏にとって根本的に重要ないくつかの科学的命題は依然として謎に包まれています。例えば、地球内部にどのくらいの規模の生命生息可能空間が拡がっているのか?そして、生命活動や生命圏の限界は、どのような要因によって決まるのか?

これらの科学的命題を解明すべく、IODP第370次研究航海「室戸沖限界生命圏掘削調査:T-リミット」では、高知県室戸沖の南海トラフのプレート沈み込み帯先端部で、海底堆積物を基盤岩まで約1.2km掘削し、さまざまな科学的調査を行います。この海域は熱流量が高く、堆積物と玄武岩の境界付近の現場温度は、現在の生命温度限界(約120℃)を超える130℃以上にまでに達することが予想されます。そのため、室戸沖の調査海域は、海底下微生物と深部生命圏の限界要因を詳しく調査するのに最適な環境であると考えられるのです。

News
2022.1.26
T-リミットで掘削したコア試料から、極限環境微生物の高い代謝活性が明らかになりました T-リミットで⾼知県室戸岬沖南海トラフの沈み込み帯先端部から採取された地温120℃までの堆積物に生息する微生物の代謝活性について、放射性トレーサー法により測定したところ、海底下深部の堆積物に生息する微小な(超)好熱性微生物群集が、理論上の限界値に近い高い代謝活性を維持していることが明らかになりました。

2021.6.17
T-リミットで掘削したコア試料から、スロー地震発生のメカニズム解明へつながる成果が発表されました T-リミットで⾼知県室戸岬沖南海トラフのプレート境界断層近傍から採取されたコア試料を分析するとともに、掘削孔から噴出する流体の流量を解析したところ、初めてスロー地震の震源近傍における高圧の間隙水帯の存在を直接確認することに成功しました。

2020.12.4
「サイエンス」誌掲載のお知らせ T-リミットで採取した高知県室戸岬沖の南海トラフ沈み込み帯先端部の海底堆積物コア試料の分析結果により明らかになった成果が、科学誌「サイエンス」に掲載されました。

2018.6.2
ポストクルーズ会議開催 T-リミットの2ndポストクルーズ会議が、スコットランド・アバディーン大学で行われました。(ローカルホスト:Stephen Bowden博士(アバディーン大学))



会議後の巡検の様子
2018.3.19
温度計データの回収に成功! 掘削孔C0023に設置した温度センサーで16ヶ月に渡って観測を続けていたデータを回収するため、JAMSTECの研究船「かいれい」のKR18-04航海(主席研究者:稲垣史生)で現場に戻ってきました。ROVかいこうを使って、掘削孔に設置した接続部の確認と海底水温の測定後、データロガーに接続しデータの転送を試みました。しかし通信が確認できなかったため、データロガーを取り外して回収することにしました。その際に、掘削孔から50 m離れた位置で、微生物と地球化学分析用に海底表層30 cmのプッシュコア試料を3本採取しました。「かいれい」船上で、データロガーとの通信に苦労しながらも全てのデータを回収することに成功しました。船上で得られた予察的なデータから、IODP第370次研究航海中に「ちきゅう」船上で用いていた海底下の温度プロファイルが正しかったことを確認することができました。今後、より詳細な分析を行う予定です。
掘削孔の温度データ回収に向かうROV「かいこう」(photo: V. Heuer)


掘削孔での温度データ回収作業を始める「かいこう」コントロールルーム
(photo: V. Heuer)
2017.4.11
T-リミットの動画(3.5分バージョン)が完成しました
2017.1.20
T-リミットの動画が完成しました
2016.11.24
室戸沖限界生命圏掘削調査:T-リミットの全作業が完了しました T-リミットでは、「ちきゅう」を用いたIODP研究航海における初めての試みとして、船上研究チームと陸上研究チームの2チームを編成し、「ちきゅう」の船上と高知コアセンターとで並行してコア試料の分析を行いました。船上で迅速に処理されたコア試料を計44回ヘリコプターで高知コアセンターに搬送し、連日、最先端の機器等を用いた高精度な分析が行われました。海域での作業は11月10日に終了しましたが(既報)、11月23日に高知コアセンターにおける作業も一段落し、9月10日に開始したT-リミットとして予定していた全日程を終えました。今後、得られた試料についてさらなる詳細分析が実施されます。それらの結果は順次IODPレポートおよび科学論文として公表する予定です。
2016.11.11
「ちきゅう」は11月11日9時に高知新港に着岸しました
2016.11.10
TV放送のお知らせ 現在実施中のIODP第370次研究航海「室戸沖限界生命圏掘削調査(T-リミット)」に番組が密着し、 「ちきゅう」船上と高知コア研究所で同時に進められた海底下生命圏の温度限界に迫る最新研究が紹介されます。 11月13日(日)23時30分~「NHK(Eテレ)サイエンスZERO」
2016.10.15
高知県で講演会が開催されました 高知コアセンター講演会で、「T-Limit」の紹介と「ちきゅう」の中継を行いました。
当日は、1,000人を超える方々が来場して下さいました。
2016.9.23
ロンドンで開催中の New Scientist Liveイベントで中継されました Live talk from the Chikyu         Questions from audience
2016.9.21
日本語ページを拡充しました 「黒潮・親潮ウォッチ」で「「ちきゅう」のための海流予測」を始めました
「研究者による船上レポート(日本語版)」公開しました(J-DESC)
研究のテーマ「共同首席研究者に聞きました」のコーナーを追加しました
2016.9.13
「ちきゅう」は9月13日9時に清水港を出港しました
2016.9.5
プレスリリース発表 T-Limitの実施がプレスリリースで発表されました。それに合わせて「乗船研究者」のページが公開されました。
2016.8.21
ちきゅう一般公開でT-Limitを紹介 石巻で実施されたちきゅう一般公開において、T-Limitのパネルが紹介されました。当日は3000人以上の訪船者が船内見学を行いました。
2016.6.21
Shipboard Outreach Staff募集 IODP第370次研究航海に乗船研究者と共に参加するShipboard Outreach Staffを募集します。このプログラムでは、教育関係者、アーティスト、ライター、写真家等に科学航海に乗船いただき、ブログやSNS、船と陸上をつないだイベントの実施や教材の制作等を通して、その経験を学生や一般市民に伝える機会を提供することを目的としています。IODPに関心を持ち、航海についての情報発信を質・量ともに向上できる能力のある教育関係者・制作者の応募をお待ちしております。Shipboard Outreach Staffは公募の後、書類審査と面接を経て選定されます。募集要項申請書をダウンロードください。
2016.5.31
プロスペクタス出版 「プロスペクタス完全版」が掲載されました
http://publications.iodp.org/scientific_prospectus/370/
2016.4.27
T-リミットちきゅう船上ワークショップ(6月25日) 2016年6月25日にちきゅう船上において
「IODP T-リミット計画ワークショップ?第370次研究航海:室戸沖限界生命圏掘削調査」を開催します。このワークショップはDeep Carbon Observatoryの提供で、この航海への参加を検討している全ての研究者を対象としています。参加希望者はDCOのウェブサイトをご参照ください。
2016.4.25
共同首席研究者がVerena Heuer、稲垣史生、諸野祐樹の三名に決定 IODP第370次研究航海の共同首席研究者として招聘された三名が正式に招聘を受諾しました。Verena Heuer博士(MARUM、ブレーメン大学)は海底下生命圏の生化学プロセスを専門とする有機化学者として、IODP第301次研究航海と311次研究航海ではJOIDES Resolution号に、第322次研究航海と第337次研究航海ではちきゅうに乗船するなど、炭素をはじめとする元素循環を解明すべく数多くの海洋調査に参加した経験を有します。稲垣史生博士(高知コアセンター/海洋掘削研究開発センター、JAMSTEC)は多くの科学掘削航海に微生物学者として(ODP Leg 201、IODP第301次研究航海、第316次研究航海)、さらに共同首席研究者として(IODP第329次研究航海、第337次研究航海)参加し、その海底下生命圏の最先端研究の実績から、昨年AGU Taira Prizeの最初の受賞者となりました。諸野祐樹博士(高知コアセンター、JAMSTEC)はIODP第329次研究航海、第337次研究航海、第357次研究航海に微生物学者として参加するだけでなく、低バイオマス試料での細胞検出と定量といった微生物研究技法の開発に長く携わってきました。諸野博士は本航海の陸上研究チームのリーダーとなります。Project Coordination Teamによって推挙されたこれら3名が、第370次研究航海の研究者をリードする共同首席研究者となります。
2016.4.20
サイトオープン
Topics
2018.6.2
ポストクルーズ会議が開催されました
2018.3.19
温度計データの回収に成功!
2017.4.11
T-リミットの動画(3.5分バージョン)が完成しました
2017.1.20
T-リミットの動画が完成しました
2016.11.11
「ちきゅう」が高知新港に帰港しました
2016.8.21
“ちきゅう一般公開”
2016.6.21
Shipboard Outreach Staff募集
2016.5.31
「プロスペクタス完全版」が出版されました
2016.4.27
T-リミットちきゅう船上ワークショップ
2016.4.25
Verena Heuer、稲垣史生、諸野祐樹の三氏が共同首席研究者に決定
2016.4.20
サイトオープン
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完全版
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