ちきゅうレポート
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ウィークリーレポート第8週
2007年11月15日

11月9日午前0時00分、「ちきゅう」はC0006サイト(NT1-03)から黒潮の上流側約5海里の地点に移動し、午前4時00分よりパイロット掘削に向けて掘削編成の降下を開始しました。11月10日午前0時15分、水深約3800mの海底に到達し、パイロット掘削を開始しました。掘削中、孔内の状況に応じて改善処置を行い、11月11日20時45分に海底下885.5mの予定深度に到達し安全性が確認されました。

その後、「ちきゅう」は再び2海里ほど黒潮の上流側に移動し、同じサイトで実施する掘削同時検層(LWD)に向け、11月12日午前11時15分に掘削編成の降下を開始しました。11月13日午前0時45分に掘削編成が海底に到達し、本航海で最後となる掘削同時検層を開始しました。



「ちきゅう」船員、掘削技術者、そして科学者など
南海掘削第314 次研究航海に参加した乗組員達。

これまでの掘削経験に基づき、初めの40mは水圧による掘削を行い、その後、回転式の掘削方法に切り替えました。14時00分頃からリアルタイムデータの転送に不具合が発生しましたが、計測データが機器内で記録されていることから、そのまま掘削を続け、16時45分に予定深度の海底下885.5mに到達しました。計測データは船上に揚収した機器から回収し、すぐに処理を行いました。

本航海での全作業は、11月15日24時00分をもって終了し、続けて次の第315次研究航海が開始されました。乗船研究者は、取得したデータの解析や最終レポートの作成などを下船直前まで続け、11月16日にヘリコプターで全員下船しました。今後行われる南海掘削の航海と並行して、陸上での研究が進められていきます。

第314次研究航海のレポートは、共同首席研究者の木下正高とHarold Tobin、CDEX船上代表の澤田郁郎と阿部剛、そしてCDEX研究支援統括のMoe Kyaw Thuが全8週に渡りお送りしました。

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ウィークリーレポート第7週
2007年11月9日

11月2日午前3時45分、サイトC0004(NT2-01I)での安全性評価のためのパイロット掘削を終了し、引き続き掘削同時検層(LWD)の準備を開始しました。黒潮上流側から掘削機器を降下しながら「ちきゅう」を移動させ、18時45分に水深2637mの地点で掘削同時検層を開始しました。海底下約60mまで水圧による圧入を行い、その後、回転式掘削に移行しました。海底下235mまで掘削したところで、孔内状況を改善するための処置を行い、11月3日12時30分に予定深度の海底下400mに到達しました。

21時45分に掘削機器の船上への回収を終了し、11月4日午前0時00分に本孔で取得した全てのLWDデータの回収を終了しました。次の掘削サイト(NT2-01E)に移動後、前サイトと同様に、掘削サイトより黒潮のやや上流側から掘削機器を降下し、11月5日午前1時00分にパイロット掘削を開始しました(水深2446.5 m;C0005A)。

最初の50mは水圧により圧入し、その後午前2時15分から回転式の掘削に変更しました。途中から掘削孔内状況が悪化し、改善作業を慎重に進めましたが、掘削パイプにかかる負荷が軽減できなくなったため、23時00分にドリルパイプを引き上げることとし、11月6日に掘削パイプを海底面まで引き上げ、水中に下げたまま約300m南東方向に離れた次の掘削地点(NT2-01G; 同じサイト内の別の孔)に移動しました。



ドリルフロアで接続され海底へ降下される掘削パイプの列。
11月10日午前0時15分、水深3875mのサイトC0006地点で掘削を開始しました。

作業中に発生した無人探査機(ROV)の動力制御の不具合などの修理、部品交換などの作業を行った後、11月7日午前0時00分より掘削パイプを降下し始めました。4.5ノットという黒潮による強い潮流のため、同様に上流側から3.8海里ほど移動しながら作業を進めました。18時00分に水深2524.5mの地点で掘削を開始しましたが、無人探査機(ROV)に再び不具合が発生したため、海底下37m掘削したところで、午後19時00分に掘削を中止、次のサイトであるNT1-03に移動することを決断しました。

11月8日午前1時00分に全ての掘削機器の回収を終え、「ちきゅう」はNT1-03サイトに向けて移動しました。午前4時15分から音響測位装置の設置を開始、23時00分に設置作業を終了しました。その後、黒潮の上流側約5海里の地点から、パイプのネジ緩みを確認するため掘削パイプのジョイント部分をひとつひとつ確認しながら降下を開始。11月10日午前0時15分、水深3875mの地点で掘削同時検層に向けたパイロット掘削を開始しました。

乗船研究者は、掘削サイトのレポートや取得したデータの処理を行っています。11月3日よりC0003サイトのレポートのレビューを開始、また11月4日からは、C0004サイトのデータ処理、解析を始めました。データの解析結果について、乗船研究者と検層エンジニアが議論を重ねています。11月8日にはC0004のサイトレポートの会議を開催し、作成いたしました。今週の安全訓練は、火災が発生し総員退船するという想定で行いました。研究区画では、科学支援技術者が、次の研究航海でのコア処理に向けて、研究機器類の最終調整を行っています。またコアの運搬手順の再確認や安全会議等も行っています。

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ウィークリーレポート第6週
2007年11月2日

10月27日、サイトC0003で脱落したドリルパイプの回収作業を続けていましたが、黒潮による強潮流と台風20号の影響を避けるために午前0時0分に回収装置を船上に引き上げ、「ちきゅう」は北北西方向に約14海里の地点に移動しました。台風通過後の10月27日16時00分、再びサイトC0003に戻り、脱落したドリルパイプの回収作業を再開しました。10月28日午前3時15分、回収装置を掘削孔に再投入し、海底下292.5mまで降下しました。同日午前6時00分にはワイヤーにつないだ回収装置を準備し、15時30分に回収作業を開始しました。全8日間に渡って回収作業を続けましたが、脱落したドリルパイプと完全な接続をすることができず、10月29日に地質状況などを鑑みて回収は不可能と判断しました。同日19時00分、孔内全てにセメントを封入する作業を開始し、完全に海底までセメントで封入された事を無人探査機(ROV)で確認しました。



水深2000メートルを超える深さを降下するドリルビット。
掘削の状況を海中から無人探査機でモニターしている。

10月31日午前3時45分、「ちきゅう」は次の掘削サイトNT2-01-Iに移動。到着後、音響トランスポンダーを海底に設置し、掘削の安全性を評価するためのパイロット掘削の準備を開始。20時00分より掘削機器の海中降下を開始しました。11月1日午前4時45分、水深2632m地点のサイトC0004でのパイロット掘削を開始しました。海底から75.5mまでは水圧により圧入し、その後、回転式掘削に移行、孔内環境に注意しながら、18時45分に目標掘削深度の海底下400mまで問題なく掘削を終え、安全性の確認を行いました。11月2日午前3時45分現在、掘削同時検層による掘削再開の準備をしています。
乗船研究者は本研究航海の残り3週間に行うべき掘削計画について、作戦会議を行っています。またサイトC0002の最終まとめのための会議を開催し、レポートが10月28日に出来上がりました。29日には南海トラフの地殻構造に関するセミナーを開催しました。サイトC0003Aのリアルタイムデータに関しても解析を進めています。11月1日にサイトC0003のまとめの会議が開催され、そのレポートを3日までに作成する予定です。
科学支援技術者は、次のコア採取航海に向けて試料処理のため各種機器の整備、管理などを進めています。南海掘削は、複数の航海にまたがった計画のため、スペシャルティーコーディネーターという役割の科学者が、各航海の計測手法などデータ品質に統一性をもたせるため、科学支援技術者と準備を進めています。

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ウィークリーレポート第5週
2007年10月26日

今週は、まさに「悲喜こもごも」といった7日間でした。サイトC0002(NT3-01)では、目標掘削深度の海底下1400メートルまで掘削でき、品質の良いデータの解析・解釈を進めることができましたが、サイトC0003(NT2-01)では、海底下を500メートル越えたところで、掘削同時検層(LWD)ツールを含むドリルパイプ下部が掘削孔内で脱落するというトラブルが発生し、回収作業が続いています。



ドリルパイプ内に残されていた掘削クズ(岩石)をルーペで観察する乗船科学者。
左から斉藤実篤(JAMSTEC)、Harold Tobin(ウィスコンシン大学)、
Kylara Martin(テキサス大学)。

10月19日14時00分、C0003 (NT2-01)サイトでの掘削開始に向けて、「ちきゅう」は黒潮の上流側約12海里から2ノットの速さで移動しながら掘削機器の降下を始めました。途中でアジマススラスターの部品交換を行い、20日10時45分に掘削サイトに到着、12時45分にC0003サイトでの掘削を開始しました。はじめの50mを水圧により圧入し、その後、海底下約500mまでは非常にスムースに掘削が進みました。しかし、海底下530mを越えた地点で掘削孔壁の崩れによりドリルパイプの先端(ドリルビット)が動けなくなるトラブルが発生し、その状況からの脱出作業を行っていた10月21日14時15分にドリルパイプ下部が脱落してしまいました。その直後から、脱落機器を回収するため、孔内遺留部を引き上げるための装置を掘削孔内に降下し、幾度となく回収作業を行っていますが、まだ船上に回収できていません。

乗船研究者は、回収作業が進められている中、先に得られたC0002サイトでの掘削同時検層(LWD)データの解析作業を絶え間なく実施しています。また、C0001サイトの掘削レポートを書き終え、首席研究者による最終チェックを行っています。

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ウィークリーレポート第4週
2007年10月19日

10月13日、自動船位保持システムと音響測位装置の最終調整を終え、黒潮の影響の少ないサイトC0002(NT3-01)の約14海里北西側の地点から掘削機器を降下、14日午前00時45分に掘削同時検層(LWD)を開始しました。逐次転送されてくるリアルタイムデータは、非常に孔内状況が良好である事を示していました。途中、海底下709.5m付近で孔内環境を改善させ、また取得データを補填する作業を行いました。17日11時15分には、本孔での目標掘削深度である海底下1401.5mに到達しました。掘削機器を船上へ引き上げる際にも、掘削同時検層(LWD)データの取得を行い、すべての機器の船上回収を終え、データが乗船研究者に渡されました。
サイトC0002(NT3-01)での掘削作業を終えた「ちきゅう」は、次の掘削予定サイトであるNT2-01地点に移動しました。10月19日から海底に音響測位装置を展開し、掘削予定地点より約12海里ほど黒潮の上流側から掘削機器の投入を開始しています。



船上での掘削作業は24時間昼夜なく進められています。

今週、乗船研究者はサイトC0001で得られたデータの処理、解析を行い、レポートを作成しました。10月12日には、サイトC0001の掘削結果をまとめる全体会議を開催、それぞれの科学成果を議論し、首席研究者による最終チェックが行われています。同時にサイトC0002での掘削も開始され、そのリアルタイムデータのモニタリングも行いました。乗船科学者は、事前調査で得ていた地震波探査記録断面上に掘削ビット(最先端の切歯)の位置を印し、技術者とともに、随時更新される掘削同時検層(LWD)データを掘削とほぼ同時に確認していました。サイトC0002で得られた掘削同時検層(LWD)のデータは、熊野海盆の堆積層を掘抜き、その下の付加体層に入った事を非常に明瞭なデータで示しています。

研究の合間に、首席研究者らは、各国メディアからのインタビューを受け、世界中に「ちきゅう」の様子を発信しています。また、14日には、油流出を想定した退船訓練を安全教育の一環として行いました。また2週間ごとに実施している船上での安全会議も15日に実施しました。

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ウィークリーレポート第3週
2007年10月12日

10月1日(月)、掘削同時検層(LWD)による掘削をサイトC0001(NT2-03)のホールDで開始しました。10月6日(土)には、当初の目標より24m浅い地点でしたが、海底下976mまで掘り進み、このホールでの科学的な目標を達しました。続いて、次の掘削サイトへ向かう間、掘進の際に発生した自動船位保持システムの不具合対応を行いながら、準備を進めています。10月8日(月)には、次の掘削地点(NT3-01)に到着し、無人探査機にて海底の調査を開始しました。



掘削同時検層(LWD)で得られた掘削孔内のデータを検討する乗船科学者達

ドリルフロアでは、掘削同時検層(LWD)の機器を、船上まで引き上げ、データの確認作業を実施しました。地層の物性を調べるために計測された密度、間隙率と弾性波データが船上で一時的に機器から取り出せないことが判明したため、すぐにそれらの機器を陸上に送り返し、データの取り出しに成功しました。また、黒潮の強潮流で損傷した掘削同時検層(LWD)機器の整備も船上で行っています。10月9日(月)には、孔内の様子を電気抵抗や自然ガンマ線を用いて可視化するデータや、密度や間隙率のデータなどが乗船研究者に渡され、データ処理、解析が開始されました。乗船研究者は、C0001サイトで掘削した全てのデータを現在解析しています。

研究室では、科学支援技術者によって機器類の調整が続けられています。土質試験用に採取したコアの、船上での計測データは全てデータベース(J-CORES)に登録されました。その他、コア処理手順の確認などを行っています。また毎週、安全教育訓練が開催されており、今週は、ヘリが墜落して船を退船するという想定で、訓練を実施しました。

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ウィークリーレポート第2週
2007年10月5日

9月29日、サイトC0001(NT2-03)ホールBにおいて土質試験用の地質試料を採取する準備を開始しました。9月30日に採取を開始し、水深2189mから30m分の土質試験用試料を採取しました。10月1日19時15分、ホールC0001Cにおいて、いよいよ掘削同時検層(LWD)を開始しました。黒潮による強潮流の影響で、掘削パイプが傾斜するため、掘削方式の変更を検討しました。翌10月2日、ホールC0001Dにおいて掘削パイプを水圧で圧入する方法で、掘削同時検層(LWD)を開始しました。掘削途中、孔内状況の変化に遭遇しましたが、パイロットホールで取得した掘削データに基づいて孔内状況を安定化させ、10月4日時点で海底下627mまで掘進しました。



掘削同時検層(LWD)データのリアルタイムデータをモニターしながら議論する
乗船研究者のMaria-Jose Jurado Rodriguez博士(スペイン)。

乗船科学者らは掘削作業の間、20件の関連する科学トピックについてセミナーを開催し、掘削中に伝送されてくるリアルタイムデータの監視やデータ処理について議論を行っています。研究ラボでは、ホールC0001Bで採取した土質試験用試料をCTスキャナーやマルチセンサーコアロガーなどによる計測などを行いました。科学支援技術者は引き続き研究ラボの準備を行い、CDEX孔井地質技術者と共に土質試験用試料の処理を行っています。

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ウィークリーレポート第1週
2007年9月28日

乗船研究者は2007年9月18日にJAMSTEC横須賀本部でのヘリコプター脱出訓練と海上生存訓練を終了し、翌19日に「ちきゅう」に乗船しました。2007年9月21日16時、「ちきゅう」は予定通り和歌山県の新宮港を出港し、最初の掘削地点まで約44海里(約80km)を平均5ノット(時速約9km)で航行し、9月22日の午前1時に最初の掘削地点に到着しました。その後、「ちきゅう」は自動船位保持モードに移行、掘削準備に入りました。いくつかの掘削機器の調整を行い、またROV(無人探査機)を使って掘削する海底の状況を確認しました。



技術者から掘削同時検層(LWD)ツールのオペレーションについて説明を受ける
乗船科学者の斉藤実篤(JAMSTEC)と宮川歩夢(京都大学)。

9月25日12時15分、最初の掘削を開始。この周辺をサイトC0001と名付け、ホール番号Aの掘削を開始しました。海底下70mまで地層内に圧入し、掘削速度を調整しながら、海底下498mまで順調に掘削しました。この深度付近から掘削孔内の状況の悪化があり、循環水や掘削速度を調整しながら掘進した結果、9月27日12:45に予定掘削深度の海底下1000mに達しました。現在はドリルパイプの船上回収も終わり、同地点での土質試験用試料の採取に向けた作業の準備をしています。

乗船科学者は、船上で安全教育を受け、本格的な科学ミーティングや掘削同時検層(LWD)の技術的な打ち合わせを行っています。同時に、各種データ処理ソフトウェアのセッティングなどの準備をしています。リアルタイムで上がってくるデータを注意深くモニターし、船上代表者や掘削エンジニアなどと議論をしています。研究ラボでは、科学支援技術者が機器類の調整、管理などコア試料処理の準備をしています。手順の確認やコア処理トレーニングなども行っています。

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