今後の海洋観測網を構築していく上での視点として、無人省力化と環境負荷低減をはかりながら、観測網の維持、増強、観測項目ならびに観測海域の多様化への対応、あわせて観測を支える品質管理技術の構築を目的として、海洋観測システムやセンサ等に関する広く基盤的、汎用的な技術の開発および研究開発を実施します。
小型センサの開発
海洋観測システムの開発
水中センサの開発
開発したセンサの汎用性の向上や、観測データの精度を担保するため、国家計量標準にトレーサブルな校正の連鎖を構築し、水温トレーサビリティの確保に注力しています。
日本の国家標準にトレーサブルな水温校正の連鎖
海中観測測器用の生物付着防止装置として、新たな紫外線光源であるプラズマ発光式の光源を用いた装置を開発しています。UV-Cに幅広いスペクトル分布の光源で殺菌効果が高く、発光効率も高いことが特徴です。
むつ研究所でpHセンサーへ装置を取り付け、海域試験を実施中で、30分あたり3分のみの点灯で十分な生物付着防止効果がみられました。
一番左の白い四角が紫外線発光面、真ん中の白い板が紫外線反射板、2本の筒がpHセンサー
紫外線を照射したpHセンサー
紫外線を照射していないpHセンサー
生物多様性調査や絶滅危惧種の調査手法などが変わりつつあります。これまでのように、魚類等の大型生物の個体を採取する代わりに、海水などの環境サンプルを採取し、そこに含まれる生物由来のDNA、すなわち「環境DNA」を分析することで生物多様性調査や絶滅危惧種の高感度検出などが可能になってきています。
こうした中、JAMSTECでは広大な海洋環境において効率的に高品質な環境DNAを自動採取・保存できる装置「eDNAサンプラー」の開発と評価を進めています。eDNAサンプラーは研究開発にとどまらず、スタートアップ起業展開による社会実装を目指しています。さらに、環境DNAサンプルの採取だけでなく将来的には現場分析までも可能とする新たな装置システムの実現に向けて研究を進めています。
リンク先:
関連プロジェクトなど;
BRAINスタートアップ総合支援プログラム「環境DNA技術に基づいた水産資源・水圏環境モニタリングの全自動装置による省力化」https://agrifoodsbir.jp/team/
東北大COI-NEXTネイチャーポジティブ発展社会実現拠点 http://www.naturepositive-hub.jp/
本体主要部は3Dプリント技術を応用して製作される
12サンプル採取型eDNAサンプラー
試験運用中のeDNAサンプラー
RAMAブイ航海
Wave Glider投入
JAMSTECでは、米国などの諸外国の研究機関/現業機関が協力して海洋の環境や変動を観測している全球熱帯ブイ網(Global Tropical Moored Buoy Array, GTMBA)のうちの、インド洋ブイ網(Research Moored Array for Asia-Australia-African Monsoon Analysis and Prediction, RAMA)と太平洋ブイ網(TAO/TRITON)の運用、整備、データ公開等の一端を担い、CLIVAR/GOOS(全球海洋観測システム)の活動に貢献しています。
また、2014年に開始された熱帯太平洋海洋観測システムプロジェクト(Tropical Pacific Ocean Observing System 2020 project, TPOS2020プロジェクト)に参画すると共に、新たな大気海洋観測装置として、Flux Glider(海面グライダー)、MOF(多目的観測フロート)などの小型観測機器を導入し、観測システムの維持・更新に貢献しています。