2007年12月14日
独立行政法人海洋研究開発機構
海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)は沖縄トラフ伊平屋北部(図1)で、深海巡航探査機「うらしま」※1(写真1)による熱水活動※2の精密探査のための技術試験を実施しました。
当試験海域は熱水活動が盛んなことで知られ、精密探査を行うことによって海底下の物質循環や海底資源に関する研究に大きく寄与するものと考えられています。しかし、当海域のような起伏の多い複雑な海底地形において一様に高い解像度のデータを取得するためには、海底からの高度を一定にして計測する必要があります。
今回、「うらしま」を起伏のある海底に追従できるように改良を行い、技術試験を行った結果、海底からほぼ一定の高度で航行できることが確認されました。また、搭載のマルチビーム音響測深機※3、並びに慣性航法システムの計測精度を向上させたことにより、高精度の海底地形図を作成することができました。
本試験により作成された高精度海底地形図(図2)からは、この海域に分布する熱水マウンド及びチムニー群のこれまでにない詳細な形状と分布が明らかになりました。また、サイドスキャンソーナー※4による計測では、熱水噴出孔から噴出する熱水の流れを連続音響反射画像として視覚化することにも成功しました。(図3)
(1)調査場所: | 沖縄トラフ伊平屋北部(沖縄本島北西約180km、水深約1,000m 図1) |
(2)調査期間: | 平成19年5月6日〜平成19年5月18日 |
(3)使用機器: | 深海巡航探査機「うらしま」 |
(4)調査方法: | 海底からの高度80mを航行し「うらしま」搭載のマルチビーム音響測深機、およびサイドスキャンソーナーにより計測(図4) |
(5)調査結果: |
今回の技術試験により「うらしま」の高い性能が確認され、「うらしま」を活用した深海調査研究における種々の科学調査、さらに熱水鉱床などの基礎調査、海底活断層の分布や活動度調査での精度向上が期待できます。また、今後の統合国際深海掘削計画(IODP)による深海掘削の事前調査などにも寄与するものと思われます。
図1.調査海域(伊平屋熱水活動域:図中□部)
沖縄トラフ伊平屋海凹北部海丘(北緯27°47',東経126°53' 水深約1000m)の熱水活動については、1995年に発見されて以来、地球科学および微生物学の分野が中心となり精力的に調査研究が継続されてきた。伊平屋北部海丘では、最高300°Cの高温熱水が噴出している。
写真1.支援母船に揚収される、深海巡航探査機「うらしま」 (この画像は過去の試験航海時のものです)
図2(a).北伊平屋熱水噴出海域の海底地形図(3次元表示)
「うらしま」のマルチビーム音響測深機の取得データから作成した高精度海底地形図の3次元表示
図2(b).北伊平屋熱水噴出海域の海底地形図(2次元表示)
「うらしま」のマルチビーム音響測深機の取得データから作成した高精度海底地形図の2次元表示
図2(c). 北伊平屋熱水噴出海域の海底地形図(船舶からの取得データ)
船舶のマルチビーム音響測深機の取得データから作成した同一海域の海底地形図
図3.北伊平屋熱水噴出海域の連続音響反射イメージ
色の濃い部分は、反射強度が弱い部分、色の薄い部分は反射強度が強い部分を示す。図中央部の暗色部分は海水の反射であるが、熱水プルームと考え得られる反射強度が強い画像が検出された。
図4.海底の熱水活動の精密探査のイメージ
(a)複雑な海底地形の熱水噴出海域において海底からの高度80mを維持し探査
(b)サイドスキャンソーナーによる探査では左舷・右舷両側の音響反射画像データが連続的に取得される
図5.「うらしま」搭載の物理化学センサーで得られた北伊平屋熱水噴出海域の水深と水温の関係
熱水活動域においては、水深が深い場所でも水温が高いことを示す。