2009年5月29日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤 康宏)(以下、「機構」という。)は、機構の研究成果を広く社会に普及・還元する活動の一環として「株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス」(参考1)を、本日付けでJAMSTECベンチャー(※)として認定しました。
この「株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス」は、平成18年6月1日付でJAMSTECベンチャー第1号として認定した「海流予測情報利用有限責任事業組合」(以下、「海流予測LLP;参考2」という。)の発展的改組に伴い、平成21年3月31日に新たに設立されたものです。
地球環境変動領域ダウンスケール沿海変動予測研究チームを中心とする研究者のグループは、「日本沿海予測可能性実験(JCOPE)」の一環として、ウェブ上でのデータ公開や民間事業者との共同研究等を行ってきました。この取組みのもと、世界初の海流予測情報提供に関する事業主体である海流予測LLPが設立されましたが、本事業が研究成果の社会への普及・還元に資することから、当機構は、JAMSTECベンチャー支援規程に基づき、平成18年6月1日付で海流予測LLPをJAMSTECベンチャー第1号として認定しました。
これまでに、海流予測LLPは国内海運会社と共同で海流予測情報の有効利用に関する実証実験を実施しました。その結果、黒潮流域を航行する大型タンカーの運航において最大9%の燃費節減、CO2排出量削減の効果を確認しました。また、漁業団体への情報提供や海底資源開発にかかわる支援を行う等、着実に実績を積み上げてきました。この度、事業の拡大に伴い、海流予測LLPは、より信用度が高く、より事業運営に適した株式会社法人へと改組されることとなりました。
機構は、この新法人が、海流予測LLPの事業を承継する事業体であること、機構の研究成果の社会への普及・還元に資することを考慮し、本日付けで「株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス」をJAMSTECベンチャーとして認定しました。
海運分野においては、かねてより航海支援情報の提供(通常、「ウェザールーティング」と呼ばれる。)が行われています。ここでは、荒天回避や目的地到着時刻の順守を主な目的として、気象、波浪、海上風に関する情報提供が重要な要素となっています。しかし、船舶運航における最適航路の選択にあたっては、燃費節減やCO2排出量削減を可能とする詳細な海流予測情報は、今後、重要な要素に加わるものと考えられます。
今回、認定されたベンチャーは、昨今の世界的な景気低迷下において、海運業のほかにも漁業、海底資源開発分野など主として海洋産業界に対する経費節減や地球環境問題への具体的対応策の提案を可能とする点からも意義深いと考えられ、これらの直接的な効果の創出に貢献することが期待されます。
今後、同社では安全、安心に向けた新たな予測情報の提供等も予定しており、船舶運航や漁業活動等における更なる貢献も期待されます。
機構の知的財産を活用して事業を行うベンチャー企業等(ただし、設立中又は設立後5年以内のものに限る)からの申請に基づき、以下の優遇措置を講ずることにより、事業活動の支援を行う制度(平成18年4月25日発足)。認定期間は原則5年間。このベンチャー支援制度により当機構の研究成果が社会・経済の発展、イノベーションの創生に活用されることが期待される。
(1) | 名称:株式会社フォーキャスト・オーシャン・プラス | |||||||||||||||||
(2) | 設立:平成21年 3月31日 | |||||||||||||||||
(3) | 所在地:東京都中央区日本橋兜町5-1 AIG兜町ビル3F | |||||||||||||||||
(4) | 事業内容: | |||||||||||||||||
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(5) | 役員等: | |||||||||||||||||
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(6) | 連絡先: TEL: 03-6861-7570 | |||||||||||||||||
(7) | URL: http://forecastocean.com/ |
平成13年12月より、研究成果の社会還元を念頭においた「日本沿海予測可能実験(JCOPE)」の一環として海洋変動予測実験を開始し、その成果(海流、水位、水温、塩分濃度の高解像度予測データ)をホームページ上で公開するとともに、平成15年11月より希望者へ有償による情報提供を開始した。
平成18年6月にJAMSTECベンチャー第1号として認定されたのち、以下のとおり実績を積み上げてきた。
黒潮流域48時間の航走で最大約9%の燃料消費量、二酸化炭素排出量節減を確認
LLPとは、株式会社や有限会社などと並ぶ、「有限責任事業組合」という事業体。具体的には、【1】構成員全員が有限責任で、【2】損益や権限の分配が自由に決められ、【3】構成員課税の適用を受けるという3つの特徴をもつ。海外の類似の事業体であるLimited Liability Partnershipと同様、通称でLLPと称す。