2011年 3月 7日
独立行政法人海洋研究開発機構
この度、統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)(※)の一環として、「コスタリカ沖沈み込み浸食縁辺域における地震発生過程の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号の研究航海が3月15日から開始されます。
本研究航海では、中米コスタリカ沖東太平洋において、沈み込み浸食縁辺域における地震発生過程を解明するため、日本から共同首席研究者を含む8名が乗船するほか、米国、欧州、韓国、中国、オーストラリア、インドからも含め、計28名が乗船研究者として参加する予定です。
※1 統合国際深海掘削計画(IODP:Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州、中国、韓国、豪州、インド、NZの24ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
別紙1
コスタリカ沖沈み込み浸食縁辺域における地震発生過程の解明
1.日程(現地時間)
なお、気象条件や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。
2.日本から参加する研究者
氏名 | 所属/役職 | 乗船中の役割 |
---|---|---|
氏家 恒太郎 | 筑波大学/准教授 | 共同首席研究者 |
臼井 洋一 | 産業技術総合研究所/協力研究員 | 古地磁気学 |
宇野 正起 | 東京工業大学/大学院生(博士課程) | 岩石学 |
大串 健一 | 神戸大学/准教授 | 古生物学 |
亀田 純 | 東京大学/特任助教 | 堆積学 |
斎藤 実篤 | 海洋研究開発機構/技術研究主幹 | 物理検層/構造地質学 |
堤 昭人 | 京都大学/助教 | 孔内計測/物性測定 |
山本 由弦 | 海洋研究開発機構/研究員 | 構造地質学 |
3.研究の概要
沈み込みプレート境界で発生する地震やそれによって引き起こされる津波は、人類社会に甚大な被害をもたらしますが、その発生過程についてはよく分かっておりません。沈み込み帯は、沈み込むプレートから上盤プレートに堆積物や海洋地殻の一部が付け加わる「付加型」(例えば南海トラフ)と、上盤プレートが前縁部と下底部で削り込まれ沈み込み帯深部へと持ち去られる沈み込み「浸食型」(今回の掘削の対象)の2種類に大別することができます。
後者の沈み込み浸食縁辺域では、プレート境界物質は削られた上盤プレート物質で主に構成されていると考えられていますが、沈み込み帯深部へ持ち去られてしまうため、陸上の地質体にプレート境界で起こった出来事の痕跡を残しません。つまり証拠隠滅型の沈み込み帯であるといえます。したがって沈み込み浸食縁辺域で起こる地震発生過程を直接手にとって検討するには深海掘削が唯一の手段となります。中でもコスタリカ沖の中米海溝は、陸側のカリブプレートが活発に浸食されていると考えられ、沈み込み浸食縁辺域での地震発生過程を検討する上で最適の地域です。
本研究航海は、沈み込み浸食縁辺域での地震発生過程解明を目指した最初の航海で、沈み込み浸食域とプレート同士が強くくっついた固着域直上の海溝陸側斜面の2地点(CRIS-3BとCRIS-4A:図1、2)において、海底面下約1000mに及ぶ掘削コアの採取と掘削同時検層を行います。これにより沈み込み浸食に伴う上盤プレートの沈降速度とプレート境界域の厚さ及び沈み込み浸食域直上と固着域直上の応力場を明らかにすることを目的とします。また、沈み込み浸食縁辺の上盤プレートの組成・組織・物性を調べ、岩石と流体の相互作用、水理地質学的・地球化学的特徴も検討します。
現在「ちきゅう」により実施されている南海トラフ地震発生帯掘削では、付加型縁辺域での地震発生過程の解明を目指すのに対し、本航海は沈み込み浸食縁辺域での地震発生過程を目指しており、双方の研究が進むことにより沈み込み帯における地震発生過程の総合的理解が深まるものと期待されます。