プレスリリース


2011年 9月 8日
独立行政法人海洋研究開発機構

統合国際深海掘削計画(IODP)第336次研究航海の開始について
〜北大西洋中央海嶺の掘削および長期孔内観測による地下生命圏の解明〜

この度、統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)()の一環として、「大西洋中央海嶺の掘削および長期孔内観測による地下生命圏の解明」(別紙参照)を実施するため、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号の研究航海が9月17日から開始されます。

本研究航海では、北大西洋中央海嶺において海底堆積物と玄武岩を掘削し、コア試料の回収、孔内実験、および長期孔内観測装置の設置により海底下帯水層の性質とそこに存在する微生物生命圏の分布およびその機能を解明することを目的としています。日本から4名が乗船するほか、米国、欧州、中国、韓国、インドからも含め、計20名が乗船研究者として参加する予定です。

※統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)

日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際協力プロジェクト。現在、欧州、中国、韓国、豪州、インド、ニュージーランドの24ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と、米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。

別紙

北大西洋中央海嶺の掘削および長期孔内観測による地下生命圏の解明

1.日程(現地時間)

平成23年9月17日
ブリッジタウン(バルバドス)より出港
北大西洋中央海嶺にて掘削を実施
平成23年11月17日
ポンタ・デルガダ(ポルトガル領アゾレス諸島)に入港
(掘削航海終了)

なお、準備状況や調査の進捗状況等によって変更の場合があります。

2.日本から参加する研究者

氏名 所属/役職 乗船中の役割
坂田 霞 大阪大学/大学院生(博士課程) 有機地球化学
中村 謙太郎 海洋研究開発機構/研究員 岩石学
針金 由美子 産業技術総合研究所/研究員 岩石学
平山 仙子 海洋研究開発機構/主任研究員 微生物学

3.研究の概要

本航海では、海底下に広がる帯水層()とそこに生息する海洋地殻内微生物との関連性を明らかにすることで、海洋地殻内生命圏の実態解明を目指します。そのため、北大西洋中央海嶺西翼部North Pond(図1)において、海底下の堆積物層および玄武岩層の掘削と、物理検層による孔内物性計測、そして長期孔内観測装置(CORK)による微生物学−地球化学−水理学統合観測・実験を行います。本航海による研究の主な目的は、(1)海洋地殻内における微生物の分布、(2) 海洋地殻内における海水の循環様式と化学的特徴、およびその微生物分布様式への影響、そして(3)海洋地殻を循環する海水と地殻との反応に対して海洋地殻内微生物が果たす役割の3つを検証することです。

※海洋地殻の表層部(海底から少なくとも約500mまでの範囲)には、海水が浸透し易い、帯水層とよばれる層があり、周囲の岩石から溶け出た様々な元素を栄養源とする、特異的且つ多様な微生物生命圏が存在することが最近の研究で明らかになっています。これは、炭素を含む地球表層の物質循環解明の鍵とも考えられていますが、その微生物生命圏の分布やその機能等は、ほとんど分かっていません。

4.掘削の概要

北大西洋中央海嶺西翼部North Pond(図1)の4地点(1074A、395A、NP-1、NP-2:図2、いずれも水深約4500m)において、最大565m掘削し、堆積物コア試料及び玄武岩コア試料の採取を行います。さらに掘削された孔内において物理計測と水理試験を行います。このうち、395A、NP-1、NP-2の3地点では恒久的な孔内観測装置を設置し、微生物学的、生物化学的、水理学的変化の長期的な観測を開始します。

図1 本航海での掘削海域

図1 本航海での掘削海域

図2 図1の白い囲み部分の拡大図(白丸が掘削地点)

図2 図1の白い囲み部分の拡大図(白丸が掘削地点)
NP-1、NP-2、395Aにおいて長期孔内計測装置を設置予定。図中の色は海の深さを示す(掘削地点の水深はいずれも約4500m)。

お問い合わせ先:

独立行政法人海洋研究開発機構
(IODPおよび本航海について)
地球深部探査センターIODP推進・科学支援室 科学計画グループ
グループリーダー 菊田 宏之 TEL:045-778-5644
(報道担当)
経営企画室
報道室 奥津 光 TEL:046-867-9198