2012年6月26日
独立行政法人海洋研究開発機構
独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 平朝彦、以下「JAMSTEC」という。)は、統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)(※1)の一環として、4月1日から5月24日までの54日間、地球深部探査船「ちきゅう」を用いた「東北地方太平洋沖地震調査掘削」(※2 平成24年5月25日既報)を実施したところであります。
今般、上記航海後に実施してきた「ちきゅう」のアジマススラスター復旧工事及び年次検査が6月22日に終了し、先般の掘削航海で延期した長期孔内温度計の設置のための航海を実施しますので、お知らせします。
1.「東北地方太平洋沖地震調査掘削-U」実施内容
・期間:平成24年7月5日〜7月24日
・海域:図1
2.「ちきゅう」の運用計画(予定)
・6月22日 船舶年次検査終了
・6月23日 〜 6月25日 佐世保港出港及び回航
・6月26日 〜 7月4日 受託事業等(搭載機器の準備等を含む)
・7月5日 〜 7月24日 「東北地方太平洋沖地震調査掘削-U」
・7月末頃に開始予定(現在調整中) 下北八戸沖石炭層生命圏掘削
※気象条件や調査の進捗状況によって変更する場合があります。
※1 統合国際深海掘削計画(IODP: Integrated Ocean Drilling Program)
日・米が主導国となり、平成15年(2003年)10月から始動した多国間国際プロジェクト。現在、欧州、中国、韓国、豪州、インド、ニュージーランドの25ヶ国が参加。日本が建造・運航する地球深部探査船「ちきゅう」と米国が運航する掘削船ジョイデス・レゾリューション号を主力掘削船とし、欧州が提供する特定任務掘削船を加えた複数の掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を行う。
※2 東北地方太平洋沖地震調査掘削
平成24年4月1日から5月24日の期間、東北地方太平洋沖地震の巨大地震と津波を引き起こしたと考えられているプレート境界断層の摩擦特性の解明を目的とし、これまでの調査研究から海底面が非常に大きく変動したと推定されている宮城県牡鹿半島東方沖の海域(図1)において、海底からプレート境界に到達する海底下850.5mまでの掘削同時検層を行い、地層の物性データを取得するとともに、海底下648m〜844.5mの区間で、プレート境界断層を含む地質試料を採取した。プレート境界断層及びその付近の摩擦熱を計測するために掘削孔内に設置予定であった長期孔内温度計については、同作業に不可欠な水中テレビカメラシステムのケーブルに不具合が生じたため、同年7月に設置することとなった。
図1:調査海域図
宮城県牡鹿半島沖合約220キロメートルの日本海溝海溝軸付近の海域
(北緯37度56分 東経143度55分)
図2:長期孔内温度計設置予定地点の海底下構造概念図
海溝型巨大地震はプレート境界断層深部の固着領域にひずみを蓄積し(黄色部分)、それが破壊され滑ることで巨大地震が起こると考えられていた。東北地方太平洋沖地震では、プレート間の固着がないと考えられていたプレート境界の海溝軸付近まで(赤色部分)深部での破壊が伝播し、海溝軸付近の海底が水平及び垂直に大きく変動したことにより大量の海水を押し上げ、巨大津波が発生した可能性が指摘されている。
本航海では、プレート境界断層及びその付近に長期孔内温度計を設置し、摩擦熱の長期変化を直接観測することで巨大地震と津波を引き起こした断層の摩擦特性を解明することを目的とする。
※海底地形の変動量は平成23年12月2日既報の発表「東北地方太平洋沖地震震源域近傍の海底地形変動」に基づく。
図3:長期孔内温度計編成概念図