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プレスリリース

2022年 2月 10日
国立研究開発法人海洋研究開発機構

福徳岡ノ場の爆発的な噴火の原因を明らかに:
多様な漂着軽石からの解読

1. 発表のポイント

2021年8月13日に発生した福徳岡ノ場の爆発的な噴火は、火山地下の粗面岩マグマだまりを、マントルの深いところから上昇・貫入してきた玄武岩マグマが加熱・活性化させたことで引き起こされたことが、軽石の分析からわかった。
高温でガスなどの揮発性成分を多く含む玄武岩マグマの影響で、一部の粗面岩マグマの中に光学顕微鏡では見えない磁鉄鉱ナノライトが出来てマグマの粘性が桁違いに高くなり、更に玄武岩マグマから生じた多くの熱やガスがマグマだまりに溜め込まれた結果、爆発的な噴火に繋がった。
今回の噴火は、噴出物として殆ど出てきていない玄武岩マグマが、爆発的な噴火の引き金を引いているという、新しい噴火モデルであったことが示唆される。

2. 概要

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 松永是)海域地震火山部門 火山地球内部研究センター 海底火山研究グループの吉田健太研究員らは、気象庁船「啓風丸」が採取した太平洋上の漂流軽石および南西諸島(沖縄・鹿児島)に漂着した福徳岡ノ場由来の噴火噴出物(軽石)の採取・分析を行った結果、2021年の爆発的な噴火は、火山地下深くからマグマ溜まりに貫入した玄武岩マグマの影響により引き起こされていたことを明らかにしました。

小笠原諸島の福徳岡ノ場は東京の南方約1,300kmに位置する海底火山であり、明治以来複数回の噴火活動が確認されています。2021年8月13日には、国内では戦後最大級の規模とされる爆発的な噴火が起こり、各地で軽石による大きな二次被害を引き起こしたことは、記憶に新しい出来事です。

南西諸島に流れ着いた多様な見た目(色・組織)を示す軽石について、本研究グループが総合的な分析を実施したところ、一部は玄武岩マグマ由来の成分を含んでおり、今回の爆発的噴火では、噴出物としては殆ど観察されていない、地下深くから貫入した玄武岩マグマが引き金になっていることがわかりました。また、一部に磁鉄鉱のナノ粒子(ナノライト)が含まれていることもわかりました。マグマの中にナノライトが形成されるとマグマの粘性が大きくなることが知られています。

これらの結果から、マグマ溜まりが地下深くからの玄武岩マグマによって加熱されることでその一部にナノライトが形成され、マグマの粘性は桁違いに大きくなったと考えられます。更に玄武岩マグマから生じた多くの熱やガスが溜め込まれた結果、爆発的な噴火につながったことが明らかとなりました。この過程は軽石を噴出する噴火の一般的な原因ともなりうるもので、今後の同様な爆発的噴火の原因究明に対して示唆を与えるものです。

今後、他の国内海底火山でも同様の爆発は起こりうるのか等を検証することで、国民と火山との共生・共存に資する貢献が期待されます。

なお本研究は、JSPS科研費JP19K14825、JP19H01999、及びJP21H01195ならびに東京大学地震研究所共同利用ERI JURP 2021-B-01の支援を受けて行われました。また、気象庁船「啓風丸」が採取した軽石の提供を受け、研究に活用させていただきました。

本成果は、日本地質学会の国際誌「Island Arc」に2月10日付け(日本時間)で掲載されました。

タイトル:
Variety of the drift pumice clasts from the 2021 Fukutoku-Oka-no-Ba eruption, Japan.
DOI:
10.1111/iar.12441
著者:
吉田健太・田村芳彦・佐藤智紀・羽生毅・臼井洋一・常青・小野重明
所属:
海洋研究開発機構

3. 背景

国内に111の活火山を有する日本は世界でも有数の火山大国ですが、その約1/3は海にある「海域火山(海底火山と火山島の総称)」です。陸上の火山と異なり、海域火山、特に海底火山の場合は、稠密な物理観測や地質調査を行うことが困難なため、噴火活動の実態が明らかになっていないものも多くあります。一般に火山噴火といっても、マグマが溶岩流として流れ出したり、溶岩ドームを形成する比較的穏やかな噴火や、勢いよく爆発を起こして、広範囲に大量の火山灰を降り散らす爆発的噴火がありますが、後者の爆発的噴火は降下火砕物の量によって火山爆発指数(VEI)が定義されています。それぞれの火山の噴出物を詳細に調べることでこれまでどのような規模の噴火をどれくらいの間隔で起こしてきたのかといったことを把握して今後の予測に繋げてきました。

一方、今回の研究は、同様に火山の噴出物を調査することで、それぞれの噴火がどのようなメカニズムで発生したのか、について重要な示唆を与えるものです。

小笠原諸島の福徳岡ノ場は東京の南方約1,300kmに位置する海底火山で、伊豆大島~三宅島~八丈島〜西之島と続く伊豆小笠原弧の火山の一つです(図12)。明治以来複数回の噴火と新島形成が記録されており、活発な活動を見せています。

2021年8月13日に福徳岡ノ場は噴煙高度が16kmに達する、爆発的な噴火を起こし、その様子は気象衛星ひまわり8号からも観察することができるほどでした。噴出した多量の軽石は、海流の影響で太平洋を西向きに筏のように集合(軽石筏、パミスラフト)して漂流し、10月初旬から中旬にかけて約1,300km離れた南西諸島へ大量に漂着、11月には関東へも漂着が見られ(図1)、沖縄など一部地域では港湾を埋め尽くすなど、社会生活に大きな影響を与えました(図3a)。多量の軽石の中には、様々な見た目をしたものがありました(図3b)。軽石の見た目は噴火によって放出されるまでに経験した過程の違いを反映していて、火山の噴火準備過程と噴火の詳細を記録していることが期待されます。

本研究では、太平洋上で採取されたもの、および南西諸島に流れ着いた福徳岡ノ場の軽石の多様性を多角的に調べ、化学組成分析、分光分析、微細組織観察、帯磁率測定を行うことで、軽石の見た目の違いの原因と、異なるタイプの軽石が噴火に果たした役割を明らかにするとともに、そこから、なぜ今回の噴火が、このように大規模なものになったのか、ということを考察しました。

4. 成果

福徳岡ノ場から漂着した軽石の多くは、発泡した明るい灰色の基質部に黒い粒が入った見た目をしていて、チョコチップクッキーにも例えられます。その他に、黒いガラスが発泡している軽石や、灰色の軽石が茶色やくすんだ灰色へと連続的に変化する見た目をしている軽石などが見られます(図3b)。

今回調査・分析した軽石の化学組成は、見た目の違いによらず、全て粗面岩と呼ばれるシリカ(SiO2質量%)が60~70%、アルカリ成分(Na2OとK2Oの合計質量%)を10%近く含むもので、これは過去複数回の福徳岡ノ場の噴火の噴出物と同じ化学組成になります。このことから、福徳岡ノ場の地下にあるマグマだまりは、粘性が中間的な「粗面岩マグマ」が主要な成分であると考えられます。

また、灰色の軽石に含まれる黒い粒の一部は、マグネシウムに富むかんらん石や玄武岩質メルト包有物などの玄武岩マグマ由来の成分を含んでいました(図4)。玄武岩マグマは粘性が小さいので、玄武岩マグマが主体となる火山噴火は通常穏やかな噴火になることが多いのですが、今回の調査で今回のような爆発的噴火にも、玄武岩マグマが関与していることがわかりました。このように、噴出物としては殆ど出てきておらず、マグマだまりの主要成分でもない玄武岩マグマが噴火に関与しているというのは、西之島などで見られる爆発的噴火のメカニズムと類似するものです。

更に、黒く発泡したタイプの軽石のガラス部分には、ラマン分光分析と帯磁率測定の結果、光学顕微鏡では見えない磁鉄鉱のナノ粒子(ナノライト)が含まれていることがわかりました。マグマの中でナノライトができると、マグマの粘性が桁違いに大きくなり、爆発的な噴火の要因になることが知られています。軽石の中には、高粘性で丸いままの泡を保持している黒い軽石と、低粘性のために爆発の勢いで泡が激しく引き延ばされた灰色の軽石が明瞭な境界で接しているものも見られました(図5)。これは噴火が実際に起きる前に黒い軽石の中にナノライトができて高粘性になり、爆発的な噴火の際に灰と黒の軽石が一緒に変形を受けながら放出された強い証拠と言えます。

このような軽石の化学組成と組織の観察から、今回の福徳岡ノ場の噴火は、地下深くから上昇してきた高温の玄武岩マグマが、低温の粗面岩マグマ溜まりに貫入して,ナノライトを形成しながら起きたことがわかりました。

玄武岩マグマとマグマ溜まりの温度は、鉱物の化学組成からそれぞれ約1200℃、900℃と見積もられましたので、その温度を踏まえて、黒い軽石の中に含まれるかんらん石という鉱物の粒子内の化学組成変化からモデル計算を行うと、玄武岩マグマの貫入からどれくらいの時間で噴火したのかということを見積もることが出来ます。その結果、玄武岩マグマの貫入から噴火までは十数時間~最大で五十日程度だったことが示されました。この約300℃の温度差と最大50日程度という期間は、実験で求められているナノライト形成条件とよく一致するものでした。

一方で、福徳岡ノ場の殆どの軽石は、ナノライトが出来ていないものでした。これは、玄武岩マグマの影響をあまり受けておらず、爆発的な噴火で火山の外に噴き出した際に急速な冷却を受けたため、ナノライトが出来るまもなく固まってしまったことが示唆されます。

上記結果を総合して図6のようなシナリオが推察されます。今回の福徳岡ノ場の2021年噴火は、噴出物(軽石)は粗面岩マグマ由来のものだったものの、その噴火の引き金は地下深くからやってきた熱い玄武岩質マグマでした。玄武岩マグマにはもともと大量の揮発性成分が溶け込んでいます。この玄武岩マグマが上昇すること(つまり減圧すること)、および結晶化することにより、溶け込んでいた揮発性成分が大量のガスとしてマグマだまりに供給されます。玄武岩マグマからの熱によって粗面岩のマグマだまりが活性化するとともに、玄武岩マグマの影響でできたナノライトによりマグマの粘性が桁違いに高くなることで、玄武岩マグマから生じたガスが溜め込まれた結果、爆発的な噴火に繋がったというシナリオが推察されます(図6)。

通常、噴出物が噴火の特性や原因を示すことが多いのですが、今回のような噴出物として殆ど出てこない玄武岩マグマが爆発的な噴火の引き金を引いているというモデルは、西之島の調査研究などから最近提案されている新しい噴火モデルです。

5. 今後の展望

福徳岡ノ場の2021年噴火は、玄武岩マグマが引き金となって、ナノライトを形成した黒い軽石と、同じ化学組成の灰色の軽石を、爆発的な噴火を起こして、一気にかつ大量に噴出したものでした。噴火の規模を噴出物の量で示す火山爆発指数(VEI)は4と推定されていて、噴出した軽石の漂流によって遠く離れた土地に多くの被害を引き起こしました。

今後は、今回のような噴火の準備過程が成立する海底火山の特徴はどのようなものなのか、他の海底火山でも同様の爆発的噴火は起こりうるのかを検証していきます。今年1月にはトンガでフンガトンガ・フンガハアパイ火山の噴火が発生し、現在注目を集めています。噴火に伴う衝撃波による気象津波や火山体崩壊による海底ケーブルの通信途絶など直接的・間接的に社会に様々な被害が生じています。噴火の規模は速報的にVEI5~6と見積もられていますが、噴出物の量や具体的な中身がわかっていないため、関連する現象についても含めて、今後の研究が待たれます。

福徳岡ノ場のある伊豆小笠原弧には伊豆大島や三宅島など人の住んでいる火山島もあり、これまでも火山と共生・共存しながら暮らしを営んできました。その営みを続けるためには、今後も引き続き海底火山の研究と監視を続けることが重要と考えています。

関連する情報

海洋研究開発機構では、本研究内容に関連して福徳岡ノ場の噴火に関するコラムをウェブサイトに掲載しています。そちらは読み物的な色合いの強い文章となっております。よろしければ、ご参照ください。

福徳岡ノ場の噴火と軽石の成分

SNS地質学で追う2021年福徳岡ノ場噴火と軽石漂流

図1

図1 伊豆小笠原弧の火山島と海底火山列は東京から南へ1,000km以上にわたって連なっている。中には2013年からの火山活動で注目されている西之島も含まれている。8月13日に爆発的な噴火な噴火を起こした福徳岡ノ場の噴出物(軽石)は約1,200km西向きに漂流して南西諸島へと漂着し、その後関東地方へも漂着している。

図2

図2 伊藤ほか(2011)による福徳岡ノ場周辺の地形図(海上保安庁提供)。福徳岡ノ場は南硫黄島を含む北福徳カルデラの中央火口丘。
(海上保安庁ホームページhttps://www1.kaiho.mlit.go.jp/GIJUTSUKOKUSAI/kaiikiDB/map/24.png

図3

図3 (a) 海面を埋め尽くす軽石。(b) 漂着軽石に見られた多様な見た目。

図4

図4 (a) 軽石中の黒い粒に含まれる単斜輝石と玄武岩質メルト包有物。(b) 軽石中のマグネシウムに富むかんらん石と玄武岩質メルト包有物。

図5

図5 灰色軽石を構成するガラスは顕微鏡観察で無色だが、黒色軽石を構成するガラスは磁鉄鉱のナノ粒子(顕微鏡で見えない)を含むため茶色く見える。両者は明瞭な境界で接しており、下段は電子顕微鏡写真で、黒色軽石側では泡が丸く、灰色軽石部分では画面縦方向に泡が引き延ばされているのが見える。

図6

図6 福徳岡ノ場の噴火と軽石放出の概略図。マントルの深い部分が融けて玄武岩質マグマを生成し、福徳岡ノ場のマグマだまりを加熱し、爆発的な噴火を引き起こした。噴火と同時に放出された軽石は海上を漂流して南西諸島などに漂着した。

国立研究開発法人海洋研究開発機構
(本研究について)
海域地震火山部門 火山地球内部研究センター 海底火山研究グループ
研究員 吉田健太
(報道担当)
海洋科学技術戦略部 報道室
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