画像イメージングによる
動物プランクトン解析が拓く未来
～肉食性動物プランクトン（浮遊性端脚類）の世界を
画像イメージング解析で明らかに～

北海道大学大学院水産科学研究院の山口 篤准教授、海洋研究開発機構の喜多村 稔副主任研究員（地球環境部門 地球表層システム研究センター）、北里大学の山田 雄一郎講師らの共同グループは、西部北太平洋亜寒帯域の観測点K2（北緯47度、東経167度）において、周年をカバーする年4回, それぞれ昼と夜に水深0–1,000 mの間の複数層から採集した試料のうち、浮遊性端脚類について、画像イメージング機器ZooSCAN（HYDROPTIC社製）を用いた画像解析を行い、出現個体数、群集構造、優占種Themisto pacificaの個体群構造を明らかにしました。

本研究では浮遊性端脚類について合計6,737枚の画像を取得し解析しました。その結果、8科10属10種が確認され、最も出現個体数密度の多かった種はThemisto pacificaで、全浮遊性端脚類の出現個体数のうち、86%を占めて卓越していました。浮遊性端脚類10種の鉛直分布は、大きく次の3タイプに分けられました。①表層に分布し、日周鉛直移動を行う優占3種、②深海にのみ分布し、日周鉛直移動を行わない4種、③両者の中間の狭い水深範囲内に分布し、表層や深海には出現せず、日周鉛直移動を行うこともある３種。優占種のThemisto pacificaには、小型な若齢個体の個体群への加入が10月と4月の年2回見られ、各個体群の成長は9ヶ月(10月–7月)ないしは1年(4月–4月)にわたりトレースできました。

本研究の成果は、動物プランクトンの群集構造や主要種の個体群構造解析に、ZooSCAN等の画像イメージング技法の有用性を示しており、本研究で開発された手法は、今後の海洋動物プランクトンを対象とした研究においてスタンダードになることが期待されます。 なお本研究成果は、2023年5月26日（金）にJournal of Plankton Research誌でオンライン掲載されました。

詳細は北海道大学のサイトをご覧下さい。