プレスリリース
国立研究開発法人海洋研究開発機構
国際深海科学掘削計画（IODP）第395次研究航海の開始について
～レイキャネス海嶺の掘削によるマントル対流と気候変動の解明～
国際深海科学掘削計画（IODP: International Ocean Discovery Program）（※1）の第395次研究航海として、米国が提供するジョイデス・レゾリューション号（※2）による「レイキャネス海嶺の掘削によるマントル対流と気候変動の解明」（別紙参照）が、2023年6月12日から開始されます。
当航海は、北大西洋のアイスランド南方のレイキャネス海嶺において、過去約3千万年から現代にわたって起きた海洋底拡大に伴うアイスランドプルーム活動、Ｖ字型地形の形成、マントル溶融の進化過程、堆積物に記録された千年スケールの古気候、海洋循環の時間変化などの解明を目指す分野横断型の掘削航海です。この海域では、これまでに第384次および第395C次研究航海にて掘削を行っており、今回は西側の1地点を加えた3地点での掘削を計画しています。
航海には、イタリア、インド、英国、オーストラリア、スウェーデン、中国、日本、フランス、米国から計34名の研究者が参加し、うち日本からは2名が参加予定です。
※1 国際深海科学掘削計画（IODP: International Ocean Discovery Program）
平成25年（2013年）10月から開始された多国間科学研究共同プログラム。日本（地球深部探査船「ちきゅう」）、米国（ジョイデス・レゾリューション号）、ヨーロッパ（特定任務掘削船）がそれぞれ提供する掘削船を用いて深海底を掘削することにより、地球環境変動、地球内部構造、地殻内生命圏等の解明を目的とした研究を推進する。
JOIDES Resolution ©IODP
※2 ジョイデス・レゾリューション号
IODPの科学掘削に米国が提供する掘削船。
別紙
レイキャネス海嶺の掘削によるマントル対流と気候変動の解明
Reykjanes Mantle Convection and Climate
1．日程（現地時間）
IODP第395次研究航海
- 2023年6月12日
- 研究航海開始（出港地：ポンタ・デルガダ（ポルトガル））
- 2023年8月12日
- 研究航海終了（入港地：レイキャビク（アイスランド））
※予定は、新型コロナウィルス感染症の状況、航海準備状況、気象条件や調査の進捗状況等によって変更となる場合があります。
2．日本から乗船参加する研究者
| 氏名 | 所属／役職 | 担当専門分野 |
|---|---|---|
| 鈴木 拓馬 | 高知大学海洋コア国際研究所／機関研究員 | 微化石古生物学 |
| Saran Lee | 東京大学大気海洋研究所／博士課程 | 堆積学 |
3．研究の背景・目的
IODP 第395次研究航海は、アイスランドの南西に位置するレイキャネス海嶺の東西を掘削する予定です。本航海の主な目的は3つあります。まず1つ目は、レイキャネス海嶺にみられるＶ字構造がどのような地下のマントル活動によって形成されたのかを明らかにすることです。2つ目は、マントルの影響で隆起したレイキャネス海嶺が海流や千年規模の気候変動に与えた影響を明らかにすることです。3つ目は熱水と岩石の反応を明らかにすることです。これら3つの目的に共通する点として、究極的にはマントルの活動に起因する現象を様々なアプローチで観測するということが挙げられます。
本航海には、日本から2名の乗船研究者が参加します。微化石古生物学の担当は、掘削試料の中に含まれる化石を分析して、地層のできた年代測定を行います。また堆積学の担当は、堆積物試料を分析し、鉱物や微化石の記載を行い、岩層決定に貢献します。
Parnell-Turner, R., Briais, A., and LeVay, L., 2020. Expedition 395 Scientific Prospectus: Reykjanes Mantle Convection and Climate. International Ocean Discovery Program.
https://doi.org/10.14379/iodp.sp.395.2020
https://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/reykjanes_mantle_convection_and_climate.html
図 本研究航海の掘削地点
赤丸は主要掘削予定点、黄色は既存の掘削点、黒丸はODP/DSDPボーリング孔、黒実線は地震探査の行われた測線、黒点線は深海流をそれぞれ示す。（IODP Exp. 395 Scientific Prospectusをもとに加筆、Credit: Parnell-Turner, Briais, and LeVay, 2020）
表 本研究航海の主要掘削予定点一覧（作業予定日数は切り上げ、優先順位の高い順に表示）
| サイト名 | 水深（m） | 目標掘削深度（m） | 作業予定日数 |
| U1564 (REYK-02A) |
2206 | 1170 | 21 |
| U1554 (REYK-06A) |
1871 | 905 | 4 |
| REYK-14B | 2829 | 1175 | 21 |
＊図表はIODPウェブサイトより引用したものを改変
- IODP JRSO・Expeditions・Reykjanes Mantle Convection and Climate
https://iodp.tamu.edu/scienceops/expeditions/reykjanes_mantle_convection_and_climate.html
http://publications.iodp.org/scientific_prospectus/395/
http://publications.iodp.org/scientific_prospectus/395/395SPADD/395SP_ADD.PDF
https://doi.org/10.14379/iodp.sp.395.2020
https://j-desc.org/exp-395-reykjanes-mantle-convection-and-climate/ - 【参考】IODP Copyright Statement
https://iodp.tamu.edu/about/copyright.html
- 国立研究開発法人海洋研究開発機構
（IODPおよび本航海の科学計画について） - 研究プラットフォーム運用部門 掘削計画支援室 室長 斎藤 実篤
- （報道担当）
- 海洋科学技術戦略部 報道室