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海底広域研究船「かいめい」による鳥島周辺海域の緊急調査航海の実施について(速報)

2023.11.21
国立研究開発法人海洋研究開発機構

国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和裕幸、以下「JAMSTEC」)は、令和5年11月8日付プレスリリース(参考)でお知らせした通り、令和5年11月10日から11月12日にかけて海底広域研究船「かいめい」を用いて、鳥島周辺海域(図1)において緊急調査を行いましたので、現時点までの状況を速報でお知らせいたします。

(参考)海底広域研究船「かいめい」による鳥島周辺海域の緊急調査航海の実施について
  https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20231108/

1. 調査の速報

令和5年10月に発生した鳥島リフト付近で発生した一連の地震のうち、令和5年10月9日の活動に関連して観測されたT波※1 の発生源は、JAMSTEC海域地震火山部門による暫定解析の結果から、孀婦岩の西方にある孀婦海山周辺にあることが推定されました。そこで、本緊急調査では、孀婦海山周辺に海底地震計6台(広帯域海底地震計:BBOBS 3台、短周期海底地震計:SPOBS 3台)を設置するとともに、マルチビーム音響測深機による詳細海底地形調査を行いました。

海底地形調査の速報的結果として、T波の発生源として推定された位置付近で、東西に延びる孀婦海山の中央付近にカルデラ※2 状の海底地形があることが確認されました(図2参照)。そのカルデラ状地形の外輪の直径は約6km、カルデラ状地形の北側に見られる中央火口丘の直径は約2km、中央火口丘の最浅部の水深は約900mです。

孀婦海山は伊豆弧火山フロントの西方に連なる背弧リフト(鳥島凹地等)内にある海底火山として知られていましたが(例えばTaylor, 1992)、10月に発生した一連の地震活動後のカルデラ状地形周辺の詳細は今回の海底地形調査により明らかになりました。

なお、現時点では、このカルデラ状地形と一連の地震活動との関連は不明です。

2. 今後の予定

「かいめい」は鳥島周辺海域における緊急調査を終了し、予定通り西之島、福徳岡ノ場、三宅島周辺を対象として令和5年11月28日まで調査航海を継続いたします。また、年内に別途追加調査航海を予定しており、今回設置した地震計の一部を回収するとともに、地震計の追加設置を予定しています。一連の調査航海で得られた海底地形データ及び各種海底地震計データ等を火山の噴火活動によってできた巨大な円形の凹地地形。詳細に解析することで、カルデラ状地形周辺の地震活動等の把握を目指します。

用語解説
※1

T波
地震波が海底面で音波に変換され海中を伝わったもの。海底火山噴火に伴う振動によって生成されることが多い。

※2

カルデラ
火山の噴火活動によってできた巨大な円形の凹地地形。

図1

図1(左)調査海域図。地形データはETOPO 2022 (NOAA, 2022, doi:10.25921/fd45-gt74)を使用。(右)鳥島周辺海域の拡大図と、「かいめい」で設置した広帯域海底地震計(▼)及び短周期海底地震計(◆)の位置。赤枠の範囲を図2に示す。

NOAA National Centers for Environmental Information. 2022: ETOPO 2022 15 Arc-Second Global Relief Model. NOAA National Centers for Environmental Information.
https://doi.org/10.25921/fd45-gt74. Accessed 2023-11-15.

図2

図2(左)「かいめい」による緊急調査によって得られた海底地形。(中)今回の調査で確認された、カルデラ状の地形(黒破線)と中央火口丘(紫矢印)。(右)推定されたT波源の位置(●)並びに「かいめい」によって設置した広帯域海底地震計(▼)及び短周期海底地震計(◆)の位置。

本研究のお問い合わせ先

国立研究開発法人海洋研究開発機構
海洋科学技術戦略部 報道室