東京大学大学院理学系研究科の佐藤薫教授と、小新大特任研究員(研究当時 現:米国大気科学研究所に日本学術振興会海外特別研究員として滞在)、海洋研究開発機構の渡辺真吾上席研究員ほかによる研究グループは、地上から宇宙の下端にあたる高度110kmまでをカバーする全大気を対象とする長期再解析データの作成に成功しました。
この研究では、ハイトップ大気大循環モデルを基盤とした新たな高速データ同化システムを構築し、スパースな衛星観測データを同化することで、地上から110kmまでの全大気の再解析データを作成しました。高度50~110kmに位置する中間圏・下部熱圏は、観測や大気モデル適用が難しく、「研究困難領域」とされてきましたが、このデータにより、大気全層にわたる大気大循環やその階層構造の詳細な解析が可能となりました。
さらに、この再解析データは、中間圏・下部熱圏を含む高度領域での大気現象を地上気象や成層圏と統合的に解析することを可能とし、大気科学と宇宙科学をつなぐ学際研究の進展に寄与します。特に、中間圏・下部熱圏領域での現象が成層圏や対流圏、地上気象に及ぼす影響を定量的に評価することで、季節予報のリードタイム延長や気候変動への対応力向上など、社会課題の解決への貢献が期待されます。
地上から高度110kmまでの全大気をカバーする世界初の再解析データJAWARA。
北極域の気温と赤道東西風の19年間にわたる時間高度断面図。
詳細は 東京大学のサイトをご覧ください。