図1 日本周辺の海底資源の分布
これまでの調査研究により、南鳥島のEEZ内にはレアアース元素の含有量が高い「レアアース泥」が存在することが確認されている。SIP海洋では、我が国の経済安全保障の観点から、先端技術に不可欠な鉱物資源として注目されるレアアースの安定的な供給の一翼を担うサプライチェーンの構築を目指し、この南鳥島レアアース泥の探査、採鉱、分離、精製、製錬の実証に向けた研究開発に取り組んでいる。
これまで、産業技術総合研究所、京都大学、高知大学や民間企業などと共に、南鳥島EEZ海域のレアアースの資源量の把握に取り組むとともに、深海からレアアース泥を採鉱するための機器開発と、海底鉱物資源開発に不可欠な環境モニタリング技術の開発を進めてきた。
今回SIP海洋において開発した採鉱システムは、海洋石油や天然ガス掘削で用いられる「泥水循環方式」に独自の技術を加えた「閉鎖型循環方式」のレアアース泥採鉱システムである。海底下での解泥、採泥と海底から船上への揚泥を可能にするもので、閉鎖系で稼働するため、採鉱時に発生する懸濁物の漏洩・拡散を抑止できる。また、採鉱に伴う海洋環境への影響を調べるため、SIP海洋で発行した国際標準規格ISOを用いた海底と船上での同時モニタリングも行う。
令和4年8月には、国立研究開発法人海洋研究開発機構(理事長 大和裕幸)の地球深部探査船「ちきゅう」(以下、「ちきゅう」)を用いて水深2,470mの海底から堆積物の船上までの揚泥と併せ、海洋環境のモニタリングにも成功している。
【参考】
令和4年10月18日プレスリリース
「レアアース泥採鉱装置による水深2,470m海域からの海底堆積物揚泥試験の成功について」
https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20221018/
令和8年1月11日から2月14日に実施する試験は、「ちきゅう」を用いて南鳥島沖のEEZ海域における水深約6,000mの海底に向けて、レアアース泥を採鉱する揚泥管や機器等を接続しながら降下させ、採鉱機を海底に貫入させる一連の作動を検証することを目的に行う。採鉱作業中の海洋環境モニタリングでは、海底に「江戸っ子1号COEDO」、環境DNA自動採取装置、ハイドロフォンを設置して採鉱作業中の海洋環境を観測するとともに、洋上では生物光合成反応を利用した汚染監視システムなどの観測装置の性能試験も実施する。
今回の試験は、これまで蓄積してきた技術開発と運用ノウハウを基に、令和9年2月の本格的な採鉱試験に向けての最初の取り組みであり、本試験により得られた成果は世界が注目し、我が国のレアアースサプライチェーンの構築においても、確かな一歩を刻むものとなる。
令和8年1月11日(日) 出港(清水港@静岡県静岡市)
令和8年2月14日(土) 帰港(同上)
図2 採鉱システム概念図
図2-2 地球深部探査船「ちきゅう」
図2-3 採鉱機
(CK22-02C茨城沖での試験航海) 図2-4 「ちきゅう」での運用に特化した海底設置型観測装置「江戸っ子1号COEDO」
図2-5 「ちきゅう」船上のROV(遠隔操作型無人探査機)