気象庁気象研究所及び海洋研究開発機構の研究チームは、2010年以降、日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)※1 の発生数が増加しており、発生位置は1960年代に比べて北偏していたことを明らかにしました。また、JPCZに伴う降雪は北陸の内陸部や山岳域で増加、沿岸部で減少しており、この降雪分布の変化は地球温暖化の影響を受けている可能性があることがわかりました。
冬季、日本海に発生するJPCZは、北陸地方や近畿地方北部、山陰地方の平野部に短時間の大雪をもたらします。気象研究所と海洋研究開発機構は、日本全国5km領域気候データセット(RCDSJRA-55)※2 から、過去約60年間 (1958年12月~2022年2月)のJPCZ計289事例を抽出し、JPCZの季節変化、JPCZの長期変化及びJPCZがもたらす降雪の長期変化を調べました。
その結果、JPCZの発生数は1960年から1980年半ばまでは多く、その後、2010年頃までは発生数が少ない状態が続きましたが、2010年以降、再び発生数が増加したことが分かりました。JPCZの発生数は1月に最も多く、JPCZに伴う降雪量も1月に最も多いことが分かりました。JPCZの発生数が多い1960年代頃と2010年代頃で比較すると、JPCZがもたらす降水量が増加し、JPCZの位置はやや北に移動(北偏)する傾向が見られました。一方、JPCZに伴う降雪量は、日本海上や沿岸部では減少、北陸地方の内陸部や山岳域では増加していました。また、降雨量は日本海から北陸の沿岸にかけて増加していました。
これらは、地球温暖化による気候変動等によって日本海の水温や日本周辺の気温が上昇したことで、日本海上の水蒸気量が増加し、JPCZ付近の雲がより発達した結果と考えらます。また、JPCZの北偏については、偏西風の蛇行の北偏と関連することが示唆されました。
今後は、同様の手法を5kmメッシュの将来予測計算(全国5kmメッシュアンサンブル気候予測データ)などにも適用し、JPCZ及びJPCZに伴う極端降雪の将来変化予測にも取り組んでまいります。また、本研究が、今後の日本の雪害対策や、地球温暖化の社会への影響を低減させる適応策への取り組みの推進に役立てられることが期待されます。
この研究成果は、令和8年4月23日に米国気象学会の科学誌「Journal of Climate」に掲載されました。
日本海寒帯気団収束帯(JPCZ)
冬季、大陸から吹きだす北西の冷たい風は、朝鮮半島の高い山(白頭山)を超えられずに迂回し、風下の日本海で再びぶつかります。風がぶつかる場所は収束帯と呼ばれ、朝鮮半島の付け根あたりから日本まで、1000キロにも及ぶ収束帯が形成されます。これを日本海寒帯気団収束帯(Japan Sea Polar Airmass Convergence Zone: JPCZ)と呼びます。JPCZ付近では積乱雲が発達して、強い降雪が発生します。JPCZは北陸地方から近畿北部、山陰地方にかけてかかることが多く、JPCZが同じような場所に停滞すると、日本海側の沿岸部でも大雪になることがあります。2018年2月にはJPCZが福井市にかかり、福井地方気象台では24時間に65cmの降雪を観測し、56豪雪以来の積雪147cmを記録しました。
参考:
https://www.jamstec.go.jp/apl/hotspot2/terms/jpcz.html
https://www.jamstec.go.jp/apl/hotspot2/articles/articles_Yamazaki-etal-2024.html
日本全国5km領域気候データセット「RCDSJRA-55」
気象庁55年長期再解析(JRA-55)から、地域気候モデル※3 を用いて5kmメッシュに力学的にダウンスケーリング※4 したデータです(Kawase et al. 2023)。実際の計算では約55kmメッシュのJRA-55と5kmメッシュの地域気候モデルの間に20kmメッシュの計算を挟んでいます。1958年9月から2022年8月までのデータが存在し、データ統合・解析システム(DIAS)からデータが公開されています。
地域気候モデル
地域気候モデルは領域気候モデルとも呼ばれ、物理法則に基づき、大気の流れや降水、降雪、積雪などを計算します。日本周辺など特定地域を高解像度で計算したいときに用いられます。本研究では、気象庁が以前現業で用いていたメソ数値予報モデル(NHM)を気候計算用に改良した地域気候モデル(NHRCM)を用いています。
力学的ダウンスケーリング
世界全体を計算する再解析データや将来予測データをもとに、地域気候モデルを用いて、対象とする領域(例えば日本付近)だけを水平解像度を上げて(例えば5kmメッシュ)計算する手法を力学的ダウンスケーリングと呼びます。地球温暖化対策に資するアンサンブル気候予測データベース(d4PDF)や気象庁の地球温暖化予測情報を作成するためにも使用されています。
図. JPCZ発生時の海面更正気圧、降水量、降雪量、降雨量
期間1(1958/59冬から1970/71年冬の13年冬季)と期間2(2009/10冬から2021/22冬の13冬季)における降水量(上段)、降雪量(中段)、降雨量(下段)、及びそれぞれの期間2と期間1の差(期間2から期間1を引いたもの)。単位はmm。降雪量は水換算した値を示す。斜線は統計的に信頼できる差を示す場所。
詳細は気象庁気象研究所のサイトをご覧ください。