人、動物、植物、生活環境などに好ましくない影響（えいきょう）をあたえる大気中の物質は、「大気汚染物質」と呼ばれます。その中の1つに、二酸化（にさんか）窒素（ちっそ）というものがあります。今回、この二酸化窒素の空気中の濃度（のうど）が、中国で2007〜2008年に過去最高に達したことがわかりました。中国で高濃度になった二酸化窒素は、太陽の光があたると人々の体に悪影響をあたえる光化学スモッグを作り出します。これが風に乗って運ばれると、日本の人々にも影響が広がるおそれがあります。人々の生活をはじめ環境を守るために、汚染対策（たいさく）を国際的に協力してできるだけ早く実行する必要があるでしょう。

図1：二酸化窒素が発生するもと

「光化学スモッグが発生しているので、校庭で遊んではいけません」という放送を、夏に学校で聞いたことはありませんか？光化学スモッグは人々の健康に害をあたえるため、発生した時はできるだけ外に出ないようにと言われています。この光化学スモッグの原因の1つが、今回の二酸化窒素です。赤茶色で、人がたくさん吸いこむとぜんそくが出たり気管支炎（きかんしえん）になったりしてしまいます。二酸化窒素のもとは、工場のけむりや自動車の排気（はいき）ガス、おうちの石油ストーブやガスコンロのけむりなどです（図1）。

二酸化窒素の量を監視（かんし）して汚染対策に役立てることは、人々の生活を守る上でとても大切です。

けれども、光化学スモッグを発生させる元となる中国の二酸化窒素についてくわしい情報はありませんでした。そこで研究者は、中国における二酸化窒素の濃度は近年どれくらい増えたり減ったりしているのかを明らかにするために、人工衛星が観測したデータを解析（かいせき）しました。

中国の東側を中心に、広い範囲（はんい）で二酸化窒素の濃度が増えていました。

図3：地域別に見た二酸化窒素の増えるペース

（図3）のオレンジ色や黄緑色のところが、特に増えている地域（ちいき）です。このあたりは上海や北京などの大都市からはなれています。つまり、大都市に限らず広い範囲（はんい）で汚染対策が必要であるとわかりました。さらに、日本の二酸化窒素の濃度は以前と同じくらいか減っていました。それにも関わらず日本国内で光化学スモッグの発生する回数が増えています。このことから、中国の光化学スモッグが風に乗って運ばれていることがうかがえます。汚染対策は国際的に協力して一刻（いっこく）も早く実行しなければならないと強く示されました。

環境を守りさらに明るい未来を築くために、研究者は今後も二酸化窒素の監視を続けるとともに、大気汚染が減るように社会にうったえかけていきます。