知ろう!記者に発表した最新研究

2011年2月4日発表
海底温泉がくっきり!
合成開口ソナーが大かつやく!

広いひろい海の底には、何があるのでしょう。山や谷、どろの多いなだらかなくぼ地やごつごつ岩だらけの斜面しゃめんなどいろいろありそうです。けれど深海は真っくらなので、光を必要とするカメラではよく見えません。そんな深海を遠くまで見わたして、どこに何があるのかを教えてくれるのが、ソナーという装置そうちです。

研究者はそのソナーを改良して、今までよりずっと広い範囲はんいをくまなく鮮明せんめいに見る「合成開口ごうせいかいこうソナー」を開発しました。その性能せいのうは、海中で1km先に置いた野球ボールの数を数えられるほど!!!

その合成開口ソナーを使って、研究者は鹿児島県かごしまけん鹿児島湾かごしまわんの底にある若尊わかみこ カルデラを調査しました。すると海底からシューっとふき出す熱水、つまり「海底温泉」を、はっきりととらえたのです!海底温泉には様々な成分がとけこんでいて、レアメタルと呼ばれる 貴重きちょうな金属がふくまれていることもあります。合成開口ソナーを使えば、海底にかくれている金や銀なども発見できるかもしれません!?

研究者は、「海の中をさらに広くきれいに見れるソナーを開発して、幅広はばひろい分野で使ってもらいたい」と話します。近い将来に「海底の地図」が本屋さんにならぶかもしれません。

合成開口ソナーってなに?音波を使って、海底地形などをくわしく調べる装置です

まず、ふつうのソナーからお話ししましょう。ソナーは音波を送って、その送った音波がはね返ってくるまでの時間や、はね返ってきた音波の大きさから海底地形を探ります(図1)。

ソナーの原理

図1:ソナーの原理

けれど、海中はゆれるし音波もみだれるので、これまでのソナーでは鮮明には見れませんでした。

そこで研究者は、ソナーを改良した合成開口ソナー(参考:2009年8月6日発表)を開発しました(図2)。合成開口ソナーは、同じところに何度もちがう位置から音波をあてるので、たくさん情報じょうほうを集めることができます。また、ソナーのゆれをとりのぞくプログラムも開発して、れた海でも調査できるようにしました。

合成開口ソナー

図2:合成開口ソナー


ふつうのソナーに比べると、合成開口ソナーが1時間に探査する範囲は約2倍、解像度かいぞうどは最大約40倍!!!1km先にある野球ボールの数だって数えられるすぐれものです!

今回は、その合成開口ソナーを使って、鹿児島県鹿児島湾の底にある若尊カルデラを調査しました。

若尊カルデラってどんなところ? 桜島と同じマグマだまりが海底下にあって、火山活動が心配されています

まず、「カルデラ」とは、火山の活動でできた大きなくぼ地のことです(図3)。

カルデラ

図3:カルデラ


鹿児島湾には姶良あいらカルデラがあり、その内側には、桜島火山と若尊カルデラが位置します(図4)。

若尊カルデラ

図4:若尊カルデラ


姶良カルデラの下には大きなマグマだまりがあるので、桜島火山や若尊カルデラの火山活動が心配されています(図5)。けれど、桜島火山は目で監視かんしできますが、海の底の若尊カルデラはできません。そこで、合成開口ソナーの出番です。

若尊カルデラと桜島は、マグマだまりが同じ!

図5:若尊カルデラと桜島は、マグマだまりが同じ!

調査はどうだったの? 海底からふき出す熱水を、はっきりとらえました!

研究者は、ケーブル配線や部品を1つひとつ確認しながら合成開口ソナーを船につなぎ、海におろした後、時速5kmほどの速さで曳きながら深さ90〜200mの海底に向けました。

合成開口ソナー

写真1:合成開口ソナー

調査開始

写真2:調査開始!


その結果、海底からシューっとふき出す熱水を、はっきりととらえたのです(図6)!

合成開口ソナーは、海底を鮮明にうつしだす!

図6:合成開口ソナーは、海底を鮮明にうつしだす!

これからはどうするの? 合成開口ソナーで、色々な調査をして社会に役立てていきます

今回の成果によって、若尊カルデラにおける火山活動の理解が進みます。また、熱水にはさまざまな金属がとけこんでいるので、金や銀など貴重なレアメタルがふくまれている可能性もあります。合成開口ソナーでもっと調査をすれば、海底にかくれた銀や銅などを発見できるかもしれません!? 合成開口ソナーは、目では見えないものを、音波でとらえます。開発した研究者は、「港湾整備工事こうわんせいびこうじを行う前の調査や海洋資源の調査など、幅広い分野で使ってもらいたい」と話します。

まめ知識

研究者は、今回開発した合成開口ソナーを「響竜きょうりゅう」と名付けました。かっこいいね!

響竜ロゴ
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