初期の生命進化を探ります

中央インド洋海嶺・ロドリゲス三重点周辺

2013年1月5日に神奈川県の横須賀港を出航した「よこすか」がまず目指すのは、インド洋の中央インド洋海嶺とロドリゲス三重点です。この海域での調査にはモーリシャスの研究者も参加し、神戸大学の島 伸和 教授、システム地球ラボの西澤 学 研究員、中村 謙太郎 研究員が指揮を執ります。
この海域は熱水活動が活発で、硫化鉄のうろこを持つ巻き貝スケーリーフットなど、特殊な生物が生息しています。
酸素のない誕生したばかりの地球で、生命のエネルギー源として有力なのが、水素です。この海域には、水素濃度の高い熱水が噴出している場所があり、そこに生息する生物を調べることで、初期の生命進化を探ります。

スケジュール

※気象、海象などの事由により、今後変更される可能性があります。

スケジュール

詳細スケジュール

首席研究者より

島 伸和

YK13-01首席研究者(研究者リスト
神戸大学
理学研究科地球惑星科学専攻
教授
島 伸和(しま のぶかず)

プロフィール
1961年大阪府生まれ。1985年大阪大学理学部物理学科卒業。三洋電機株式会社、第32次南極地域観測隊員、日本学術振興会特別研究員、千葉大学助手、助教授、神戸大学助教授、准教授を経て、2011年から現職。その間、1993年に東京大学海洋研究所/大学院理学系研究科地球物理学専攻博士課程修了。
専門は、海底物理学。

ロドリゲス海嶺3重点付近には、海底の拡大する速さが違う3つの海嶺が接しています。それぞれの海嶺では様相の異なる海洋底が形成されており、多様な海洋底が近接するという特異な構造をしています。また、その複雑なテクトニクスの影響を受けていると考えられる「かいれい熱水フィールド」が3重点の近傍に位置しています。「かいれい熱水フィールド」の熱水には他の熱水系では見られない程度の水素が含まれており、さらにその熱水を食べる特異な生態系が存在しているため、熱水系として注目を集めています。調査では、このような海域の海底下の状態(構造)を把握するために、地球物理学的な観測手法を利用します。具体的には、海底電位差磁力計(OBEM)と海底地震計(OBS)を海底に多数設置し、約2ヶ月間の観測を行います。得られた観測データを解析することで、1)海嶺ではどのようにして異なった海洋底を形成するのかという海洋底形成プロセスの理解と、2)「かいれい熱水フィールド」の熱水がどのような規模でどのように循環し、さらに豊富な水素の熱水が海洋底からどのような影響を受けて作られるのか(熱水系の循環様式と熱水化学の変化を作る要因)を探るという、海底拡大系の2つのテーマに挑みます。この結果、数100kmにおよぶ大スケールの海洋底形成ダイナミクスから、数100m程度と考えられている熱水循環(さらにはそこには多様な生態系が存在している)までが、1つの系として働いている地球の姿がよりよく理解できるはずです。

航海終了後
島 伸和 首席研究者インタビュー

西澤 学

YK13-02首席研究者(研究者リスト
システム地球ラボ
プレカンブリアンエコシステムラボユニット
研究員
西澤 学(にしざわ まなぶ)

プロフィール
1977年東京都生まれ。2005年東京大学大学院理学系研究科地球惑星科学専攻博士課程修了。2009年海洋研究開発機構入所。
専門は、生物地球化学、同位体地球化学。

日本人が発見し世界の研究をリードしてきたインド洋深海熱水フィールドを対象に、これまでに観察された熱水生命現象や化学現象の神秘を解くことがこの航海の目的です。熱水化学合成生物の不思議なミネラリゼーション、共生システム、発生メカニズムを船上実験から明らかにしたいと意気込んでいます。また、インド洋熱水フィールドは私が所属するプレカンブリアンエコシステムラボの発祥の地です。現在の私たちにつながる地球最古の生態系はどのような環境で誕生し、どのような姿をしていたのか?この問いに対して、論理的に矛盾のない美しい作業仮説がこの地での観察事実から提唱されました。提唱者はプレカンラボ創設者である高井さんであり、メンバーの日々の実験と激しい議論の中でその検証が急ピッチに進んでいます。本航海では、プレカンラボが中心となって2009年に発見した特異な熱水孔の本格的な調査も同時に行われます。その結果、全く想像だにしなかった現象に遭遇し、常識を覆すような新しい世界観が生まれるのではないかと思うと今からドキドキします。

航海終了後
西澤 学 首席研究者インタビュー

中村 謙太郎

YK13-03首席研究者(研究者リスト
システム地球ラボ
プレカンブリアンエコシステムラボユニット
研究員
中村 謙太郎(なかむら けんたろう)

プロフィール
1974年長野県生まれ。1997年山口大学理学部地質学鉱物科学科卒業。2004年東京大学大学院工学系研究科地球システム工学専攻博士課程修了。2005年日本学術振興会特別研究員PD。2008年東京大学大学院工学系研究科附属エネルギー・資源フロンティアセンター助教を経て、2009年より現職。
専門は、変質岩岩石学、地球化学。

本調査航海のターゲットである「かいれい熱水フィールド」は、2000年にインド洋で最初に発見された海底熱水フィールドとして、世界にその名を知られています。翌2002年の調査では、「かいれい熱水フィールド」の熱水に多量の水素が含まれており、それを食べる微生物を一次生産者とする特異な生態系が存在していることが明らかにされました。この生態系は「ハイパースライム」と呼ばれ、地球初期生命の謎に迫る重要な手掛りとして注目されています。さらに2005年には、「かいれい熱水フィールド」の水素に富んだ熱水を産み出す原因が、周囲に露出する超マフィック岩であることが明らかとなりました。
「かいれい熱水フィールド」の特異な熱水を産み出す超マフィック岩は、本来は海底下数キロメートルに存在する「マントル」を構成する岩石です。何故、「かいれい熱水フィールド」の周辺に、本来数キロメートル下に存在するはずの超マフィック岩が存在しているのかは、現在も明らかとなっていません。ここが明らかになると、(1)超マフィック岩をマントルから海底まで運び上げる地球の営みと、(2)それによって生み出される水素に富んだ特異な熱水、(3)そしてその熱水を食べる特異な生態系「ハイパースライム」を一本のストーリーで繋げることが出来ます。本航海によって、この"「かいれい熱水フィールド」が織りなす、壮大な「岩石−水−生命」のストーリー"を読み解くための最後の「鍵」を見つけ出せるはずです。

航海終了後
中村 謙太郎 首席研究者インタビュー

研究者リスト

YK13-01
名前 所属 役職
首席研究者
島 伸和
神戸大学大学院 理学研究科 教授
飯塚 絵梨
神戸大学 理学部 学部学生
河野 昭博
千葉大学大学院 理学研究科 大学院学生
新藤 悠
神戸大学大学院 理学研究科 大学院学生
野口 ゆい
千葉大学大学院 理学研究科 大学院学生
馬場 貴弘
神戸大学大学院 理学研究科 大学院学生
松野 哲男
国立極地研究所 研究教育系地圏研究グループ 特任研究員
山口 誠之
海洋研究開発機構 海洋工学センター 特任技術主任
山田 知朗
東京大学 地震研究所 助教
YK13-02
名前 所属 役職
首席研究者
西澤 学
海洋研究開発機構 システム地球ラボ 研究員
川口 慎介
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
近藤 竜二
福井県立大学 海洋生物資源学科 准教授
高井 研
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 プログラムディレクター
中村 謙太郎
海洋研究開発機構 システム地球ラボ 研究員
美野 さやか
北海道大学大学院 水産学研究科 大学院生
宮崎 淳一
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
渡部 裕美
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
和辻 智郎
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
Girish BEEDESSEE
Mauritius Oceanography Institute (MOI) Scientist
Vishwakalyan BHOYROO
Mauritius Oceanography Institute (MOI) Scientist
Prithivi Dass BISSESSUR
Mauritius Oceanography Institute (MOI) Scientist
Modoosoodun KHISHMA
Mauritius Oceanography Institute (MOI) Scientist
S. Leckraz
Ministry of Agro-Industry, Food Production & Security (Fisheries Division) Scientist
YK13-03
名前 所属 役職
首席研究者
中村 謙太郎
海洋研究開発機構 システム地球ラボ 研究員
飯塚 絵梨
神戸大学 理学部 学部学生
佐藤 太一
産業総合研究所 地質情報研究部門 研究員
佐藤 利典
千葉大学大学院 理学研究科 教授
渋谷 岳造
海洋研究開発機構 システム地球ラボ 研究員
島 伸和
神戸大学大学院 理学研究科 教授
高田 裕能
千葉大学 理学部 学部学生
宮崎 淳一
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
森下 知晃
金沢大学 理工研究域 教授
和辻 智郎
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員