初めて南大西洋に「しんかい6500」が潜ります

リオグランデ海膨・サンパウロ海嶺・サンパウロ海台

「よこすか」は、モーリシャスのポートルイス、南アフリカのケープタウンに寄港した後、南大西洋を横断してブラジル沖を目指します。この海域の調査は、ブラジル地質調査所とサンパウロ大学海洋研究所との国際共同研究で、北里 洋 領域長とBioGeos の藤倉 克則 チームリーダーが指揮を執ります。南大西洋で「しんかい6500」が調査をするのは、初めてとなります。
リオグランデ海膨は、海底からの高さが5,000mを超える巨大な海山で、垂直に切り立った崖になっています。今回、基底部から頂部まで調査し、水深や地質によって生物がどのように変化するかを明らかにします。
サンパウロ海嶺では、マントルに由来する物質が海底に出ています。最近、マリアナ海溝でも同じような環境が発見され、周辺に化学合成生物群集が発見されました。サンパウロ海嶺でも同じ生物群集が見つかるのかどうかが、注目されています。 サンパウロ海台では広大な天然ガス・油田が見られることから、世界最大規模の化学合成生物群集が存在する可能性があります。化学合成生物群集が発見されれば、南大西洋初となります。

スケジュール

※気象、海象などの事由により、今後変更される可能性があります。

スケジュール

詳細スケジュール

首席研究者より

北里 洋

YK13-04 Leg1首席研究者(研究者リスト
海洋・極限環境生物圏領域
領域長
北里 洋(きたざと ひろし)

プロフィール
1948年東京都生まれ。
1976年東北大学大学院理学研究科博士課程修了。静岡大学理学部助手、助教授、教授を経て、2002年海洋科学技術センター入所。2009年4月から海洋・極限環境生物圏領域長(上席研究員)に就任。
専門は、地球生命科学、深海生物学、海洋微古生物学。

ブラジル沖航海 Leg 1 は、よこすか/しんかい6500が南大西洋で行う初めての潜航行動です。世界でも、有人潜水船が6000mまで潜航するのは初めてのことです。南西大西洋には、リオグランデライズという「巨大海台」およびサンパウロ海嶺があります。リオグランデ「海台」は大西洋中央海嶺と南アメリカ大陸の間に広がっており、その成因がわかっていません。また、大洋の真ん中にあって深海底から5000mの比高でそびえる「海台」は北大西洋深層水(NADW)の南下と南極底層水(AABW)の北上をせき止めるようにあり、「海台」の周りに成立する生態系も双方の影響を受けてユニークであることが期待できます。
また、ブラジル大陸棚の延長上にあるサンパウロ海嶺も、特異な地質と地形を持っています。4000mの深海から2000m以上立ち上がる崖であるこの海嶺は、塩基性岩〜超塩基性岩から形成されていることが、ブラジルの調査でわかってきています。なぜ大陸の縁にこのような地質を持つ海嶺があるのか、その成因がわかりません。崖の基盤の部分は、大西洋深層水の通り道であると言われており、超塩基性岩に特有に成立する化学合成生物群集発見の可能性も含め、そこに見られる生態系を調査するのが楽しみです。この航海は、日本とブラジルの共同調査チームで行います。ブラジル側の調査名は「Iatá-piuna」と呼びます。

航海終了後
北里 洋 首席研究者インタビュー

藤倉 克則

YK13-04 Leg2首席研究者(研究者リスト
海洋・極限環境生物圏領域
海洋生物多様性研究プログラム 深海生態系研究チーム
チームリーダー・上席研究員
藤倉 克則(ふじくら かつのり)

プロフィール
1964年栃木県足利市生まれ。1995年東京水産大学大学院水産学研究科博士課程修了。1988年海洋科学技術センター入所。2009年4月から現職。専門は、深海生物生態学。

ブラジル沖の天然ガス・油田域を世界で初めて探検し、深海生物パラダイスを見つけます。ブラジル沖の広大な天然ガス・油田域には、さまざまな化学物質がわき出しているでしょう。そこには、極限環境に適応した生物が人知れずパラダイスを作っているはずです。私たちは、その姿を「しんかい6500」を使って世界で初めて目の当たりにするでしょう。そして、深海生物パラダイスがどのように作られてきたのか、どんな生態や機能を持っているのか、環境を保全しながら資源開発を進めるにはどうすればよいかといったことを明らかにします。

航海終了後
藤倉 克則 首席研究者インタビュー

研究者リスト

YK13-04 Leg1
名前 所属 役職
共同総首席研究者
首席研究者

北里 洋
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 領域長
荒 功一
日本大学生物資源科学部 准教授
豊福 高志
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 チームリーダー
藤原 義弘
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 チームリーダー
共同首席研究者
Peter Christian Hatspaker
CPRM/IGCE/UNESP Univ. Estadual Paulista Professor
共同首席研究者
José Angel Alvarez Perez
University of Vale do Itajaí Professor
Paulo Y.G. Sumida
Institute of Oceanography, University of São Paulo Associate Professor
Abílio Soares Gomes
Fluminense Federal University Professor
André Oliveira de Souza Lima
University of Vale do Itajaí Professor
Eugenio Pires Frazão
Head of the Marine Geology Division of CPRM Scientist
João Marcelo Medina Ketzer
Pontifical Catholic University of Rio Grande do Sul - PUCRS Professor
YK13-04 Leg2
名前 所属 役職
首席研究者
藤倉 克則
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 チームリーダー
滋野 修一
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
張 勁
富山大学理学部 教授
長野 由梨子
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 研究員
山中 寿朗
岡山大学理学部 准教授
吉田 尊雄
海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域 チームリーダー
共同総首席研究者
Vivian Helena Pellizari
Institute of Oceanography, University of São Paulo Associate Professor
共同首席研究者
Paulo Y.G. Sumida
Institute of Oceanography, University of São Paulo Associate Professor
Angelo Bernardino
Federal University of Espírito Santo Associate Professor
Antonio Fernando Menezes Freire
PETROBRAS Scientist
Cristina Rossi Nakayama
Federal University of São Paulo Professor
José Adilsn Dias Cavalcate
Head of the Marine Geology Division of CPRM Scientist