ようやく調査開始っ!

2013/03/05

YK13-03首席研究者
中村 謙太郎(海洋研究開発機構 システム地球ラボ)
宮崎 淳一(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

「ボディしか打てないボクサーになっている」

これは明日のジョーこと矢吹ジョーが好敵手・力石との試合で顔面にパンチを浴びせることによって死なせたトラウマから、試合でもボディ攻撃しかできなくなってしまった事に対して、とっつぁんが浴びせた痛切な言葉です。

2/28からはじまったYK13-03航海ですが、出港時から目的地である「かいれいフィールド」周辺の海況が良くない、そしてなかなか到着できないという絶望感に満たされてしまい、「研究しか考えられない研究者」になり、アウトリーチにまで手が回っていなかった自分達に、レポートを見ている方から上記主旨の言葉を伝えられ大いに反省しました。

今後はレポートを見ている皆様に深海研究の現場における喜怒哀楽、歓喜、落胆が少しでも伝わるようがんばります。

今後ともよろしくお願いします。

さて、海況は悪いながらもようやく本日「かいれいフィールド」に到着し、調査を開始しました。
「千里の道も一歩から」
最初の一歩を踏み出すことの大事さを、改めて感じた日となりました。

最初の調査は、地震波探査です。 これは、「船から大きな音を出して海底やその下の地層から帰ってきた音を聞くことで、海底下の構造を知る」という調査です。
大きな音を出す装置は「エアガン」と言い、圧縮した空気を水中で一気にぶちまけることで音を出します。
こんなものが船で炸裂したら大変ですから、船の後ろから数十mくらい離して引っ張ります。
エアガンが炸裂した瞬間には、船にいても「ズン!」という衝撃を感じます。
こんなアブないエアガンですが、大昔は大きな音を出すためにダイナマイトを投げ込んでたという噂もあるので、それに比べたら「安全・安心」の調査機器と言えましょう。
技術の進歩は、ありがたいものです。

この調査によって、海底下数kmにわたって、どのへんにどんな種類の岩石(あるいはマグマ)があるかがわかってしまいます。 そして、「我らが“しんかい6500”によって調べた海底の岩石の分布と、地震波探査によってわかる海底下の構造を合わせて解析することで、調査地域の海底下の地質構造を3次元で理解してしまおう」、そんな狙いをもって、この調査のはじめの一歩を進み出したところなのです。


写真1:エアガン


写真2:初イベントでぞろぞろと皆あつまる。