QUELLE2013 最後の航海に出航

2013/10/24

YK13-11 首席研究者 土田真二(海洋研究開発機構 海洋・極限環境生物圏領域)

(“The limit of Life” 生命の限界に迫る旅も、いよいよ最後の航海、ケルマディックへ向けてトンガ/ヌクアロファの桟橋を出航です。今回の調査研究の首席を務める土田さんに、研究のねらいや期待について語ってもらいました。)

前人未踏の海底大山脈へ挑戦
ニュージーランドは、日本と同じように国土の面積は大きいとは言えませんが、世界第7位の広い水域(EEZ、排他的経済水域)を保有しています。日本とは反対側の南半球にありますが、その海洋構造は日本とよく似ていて、数千キロにおよぶ海底山脈がそびえ立つ場所があります。我々の調査では、このような海底山脈がぶつかり合うという、世界でも珍しい場所に生息する生物の調査をニュージーランドと共同で行います。

その山脈の一つは、ニュージーランド北東から南西にのびるルイビル海山列と言います。ルイビル海山列は、長さ4300kmに渡り70以上もの海山を含む大山脈です。これら海山は、南極の近くで作られて8000万年という長い時間をかけて、やがてケルマディック海溝へと沈み込みます。つまり終焉を迎えた海山と言えます。一方で、海溝を越えたすぐ先にはトンガ〜ケルマディック島弧があり、活発な火山活動をともなう隆盛を極めた海山が立ち並びます。ここには、高温の熱水が海底から噴出する場所があり、通常は生息する生物が少ない水深であるにも関わらず、サンゴ礁にも匹敵するほど高密度で生息しています。これら生物は熱水とともに噴出する硫化水素やメタンなどの有害物質からエネルギーを作るバクテリアに支えられています。このように隆盛を極めた海山と終焉を迎えた海山がぶつかり合うという特殊な環境に生息する生物にどのような違いがあり、その違いは何に由来するのか、これまで一度も人の目に触れたことがない海底を、有人潜水船「しんかい6500」を使い世界で初めて調査します。「しんかい6500」がもつ、ハイビジョンカメラや生物を採集する機械、環境を測定する様々な機械を使ってデータを得るとともに、貴重な深海生物の採集も試みます。それら生物の分布データや遺伝的な情報から、特殊な環境に生息する生物の多様性メカニズム解明を目指します。


右の赤丸で囲んだ海山が、「しんかい6500」の予定潜航ポイント

トンガに停泊した「よこすか」の真正面に見えるのは、美しいトンガの王宮。トンガから我が国への主要な輸出農産物はパンプキン(かぼちゃ)。また日本のラグビーチームでもトンガ出身の選手が活躍中。


出航を待つ支援母船「よこすか」(3枚の写真を合成)



「よこすか」と目の前に見えるトンガの王宮(パノラマ合成写真左に見える建物)